[PA13] 大学生の学業的延引行動に及ぼす愛着の内的作業モデルと学業的動機づけの影響
Keywords:学業的延引行動, 愛着の内的作業モデル, 学業的動機づけ
問題・目的
学業的延引行動とは,重要な課題の着手や完了を不必要に遅らせる行動である(Lay, 1986)。学業的延引行動と愛着の内的作業モデルとの関係について,Flett, Blankstein, & Martin(1995)は,愛着の内的作業モデルが学業的延引行動の根源的な先行要因であると主張した。さらに,不安定型は安定型と比較して,学業的延引行動に陥りやすいことを示唆している。しかし,先行研究は愛着の内的作業モデルが学業的延引行動に影響する過程について詳細に調べられていないと思われる。そこで,本研究では,学業的動機づけ要因(自己効力感と自律的動機づけ)を媒介要因として仮定し,愛着の内的作業モデルと学業的延引行動との関係を明らかにすることを目的とした。
方 法
調査対象 大学生414名(男88名,女274名 不明52名)。平均年齢20.4歳 標準偏差 2.62歳)
手続き 集団形式に,あるいは個別に回答を求めた。
調査時期 2013年9月~2015年4月
調査に用いた測定尺度
(1)愛着の内的作業モデル:RQの日本語版(加藤,1999a)を用いた。安定型,拒絶型,とらわれ型,恐れ型の4モデルに関して自己に該当する程度を評定(7段階)させ,さらに自分の最も当てはまるモデルを選ばせた。
(2)自己効力感:伊藤(1996)の動機づけ尺度の中で,学業に関わる自己効力感に関する9項目を用いた。
(3)自律的動機づけ:伊藤(2010)を用いた。4つの下位尺度(外的調整,取入れ的調整,同一化的調整,内発的動機づけ),各3項目から構成される。本研究では,先行研究(伊藤,2010など)に則り,自律性という観点から下位尺度ごとに得点の重みづけを行い,自律的動機づけ(SDI)得点を算出した。
(4)学業的延引行動尺度:Schouwenburg(1995)のAPSIの中で学業的延引行動に関する項目を邦訳した項目(龍・小川内・橋元,2006)を用いた。全13項目から構成され,5段階で評定する。
結 果
(1)パス解析:Figure 1に示すように,安定型傾向が高まるほど,拒絶型傾向が低くなるほど学業的動機づけが促されることを通じて,学業的延引行動を抑止する。とらわれ型傾向が高まるほど直接的に学業的延引行動を促す。
(2)個人差分析:自律的動機づけ,自己効力感,学業的延引行動の得点を安定型と不安定型(拒絶型,とらわれ型,恐れ型を込み)間で比較したところ,自律的動機づけと自己効力感については,いずれも安定型が不安定型よりも有意に得点が高かった。しかし,学業的延引行動について群間に有意差はなかった。
考 察
安定型の場合,自己肯定的で良好な対人関係に確信を抱くことが,学業的課題の解決に強い期待を抱き,自律的に動機づけられて学業的課題に従事するため学業的延引行動が抑止するものと思われる。説明率の値から,否定的な経験量等他の変数の介在が示唆される。
学業的延引行動とは,重要な課題の着手や完了を不必要に遅らせる行動である(Lay, 1986)。学業的延引行動と愛着の内的作業モデルとの関係について,Flett, Blankstein, & Martin(1995)は,愛着の内的作業モデルが学業的延引行動の根源的な先行要因であると主張した。さらに,不安定型は安定型と比較して,学業的延引行動に陥りやすいことを示唆している。しかし,先行研究は愛着の内的作業モデルが学業的延引行動に影響する過程について詳細に調べられていないと思われる。そこで,本研究では,学業的動機づけ要因(自己効力感と自律的動機づけ)を媒介要因として仮定し,愛着の内的作業モデルと学業的延引行動との関係を明らかにすることを目的とした。
方 法
調査対象 大学生414名(男88名,女274名 不明52名)。平均年齢20.4歳 標準偏差 2.62歳)
手続き 集団形式に,あるいは個別に回答を求めた。
調査時期 2013年9月~2015年4月
調査に用いた測定尺度
(1)愛着の内的作業モデル:RQの日本語版(加藤,1999a)を用いた。安定型,拒絶型,とらわれ型,恐れ型の4モデルに関して自己に該当する程度を評定(7段階)させ,さらに自分の最も当てはまるモデルを選ばせた。
(2)自己効力感:伊藤(1996)の動機づけ尺度の中で,学業に関わる自己効力感に関する9項目を用いた。
(3)自律的動機づけ:伊藤(2010)を用いた。4つの下位尺度(外的調整,取入れ的調整,同一化的調整,内発的動機づけ),各3項目から構成される。本研究では,先行研究(伊藤,2010など)に則り,自律性という観点から下位尺度ごとに得点の重みづけを行い,自律的動機づけ(SDI)得点を算出した。
(4)学業的延引行動尺度:Schouwenburg(1995)のAPSIの中で学業的延引行動に関する項目を邦訳した項目(龍・小川内・橋元,2006)を用いた。全13項目から構成され,5段階で評定する。
結 果
(1)パス解析:Figure 1に示すように,安定型傾向が高まるほど,拒絶型傾向が低くなるほど学業的動機づけが促されることを通じて,学業的延引行動を抑止する。とらわれ型傾向が高まるほど直接的に学業的延引行動を促す。
(2)個人差分析:自律的動機づけ,自己効力感,学業的延引行動の得点を安定型と不安定型(拒絶型,とらわれ型,恐れ型を込み)間で比較したところ,自律的動機づけと自己効力感については,いずれも安定型が不安定型よりも有意に得点が高かった。しかし,学業的延引行動について群間に有意差はなかった。
考 察
安定型の場合,自己肯定的で良好な対人関係に確信を抱くことが,学業的課題の解決に強い期待を抱き,自律的に動機づけられて学業的課題に従事するため学業的延引行動が抑止するものと思われる。説明率の値から,否定的な経験量等他の変数の介在が示唆される。