The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA(01-64)

ポスター発表 PA(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PA17] 数の初期発達における対人的働きかけ

1~3歳の分析

山形恭子1, 古池若葉2 (1.京都ノートルダム女子大学, 2.京都女子大学)

Keywords:数の初期発達, 養育者, 対人交渉

目   的
 筆者はこれまで1~4歳の数の発達過程や数関連活動の特徴を検討し,数唱・計数・数読字・数書字・数助詞などの多様な数活動が見られることを明らかにしてきた。特に,数習得において養育者と子どもの間に対人的やりとりが見られ,それらを介して数発達が進展する様相が示唆されてきた。本稿では養育者と子どものやりとりが如何なる場面で生じ,その際に養育者が如何なる働きかけをしているのかを縦断的なエピソード分析から検討し,発達初期における数発達の規定要因を探ることを目的にしている。
方   法
調査対象児:7名(男児3名,女児4名)。対象児の母親に毎月初めに回答用紙を配布して前月の対象児の数関連活動・行動に関するエピソードを記述するように依頼した。調査は対象児が1~2歳に開始し,3歳代までの約2年間実施した。
資料:Table 1に対象児毎の回答月数とエピソード(Ep)総数を示す。なお,C児は約1年間のみの参加である。G児は現在も継続中であり,途中段階の報告である。本稿ではエピソード全総数265をその内容に基づいて分析した。エピソードは転記して番号を割当て整理した。内容分析では対人的やりとりが見られた場面を取り上げてその特徴を分類した。
結   果
1.場面の分析 エピソードの内容から1数詞・数唱をいう,2環境の事物と関連づけて数を使用する,3絵本を媒介に数をいう,4事物を数える,5玩具使用,6数シール使用,7DVDビデオ教材の使用の7つの主要場面が見出された。対象児毎にこれらの場面の出現数を求め,さらに全対象者のこれらの場面の総計に占める各出現%を算出した。結果をFig. 1に示す。Fig.から数詞・数唱が最も多く,次いで環境の事物(エレベータボタン等)との関係で数をいう,絵本・玩具・シール使用時に数に言及するが認められた。その他にDVDビデオ教育教材の使用による数習得の場面も見られた。
2.やりとりの内容分析 養育者と子どものやりとりにおける養育者の行動を分析したところ,1養育者が数詞を提示,2事物と関連した数の使用,3絵本・玩具・シールを介した共有活動による教示,4DVDビデオ教育教材活用に大別できた。年齢にともない数詞の提示から数詞・表記された数の使用・教示・教育教材活用への進展が見出された。
考   察
 1~3歳児は日常生活の多様な場面で養育者から数に関わる働きかけを受け,それらを模倣して共有・学習する様子が窺われた。本結果から数の初期発達に及ぼす対人的働きかけの影響が示唆された。今後はこれらの働きかけの数習得に及ぼす影響に関して実証的検証が必要である。また,上記の養育者の働きかけは状況規定的な数活動といえるが,これらがその後の体系的数理解へ進展する過程とその機制の解明が求められる。

(本研究はJSPS科研費基盤研究Cの助成を受けた)