The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA(01-64)

ポスター発表 PA(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PA19] 現職教員と教員志望学生の児童・生徒観および指導行動に関する研究(5)

教員養成大学在籍学生の学年間の比較検討

林龍平1, 崎濱秀行2, 藤田正3 (1.関西福祉科学大学, 2.阪南大学, 3.奈良教育大学名誉教授)

Keywords:児童・生徒観, 指導行動, 学年間比較

問題と目的
 研究(1)では,現職教員および教員志望学生の児童・生徒観および指導行動の様相を検討するための尺度を作成した。そして,作成尺度を基に,研究(2)では,現職教員と教員志望学生間,研究(3)では,小学校教員―中学校教員間,研究(4)では教員養成大学の学生における希望校種間での児童・生徒観および学習指導行動について検討を加えた。さらに,研究(5)では,教員養成大学の学生と一般大学における教職課程志望者の間での児童・生徒観,学習指導行動における重視度合いの違いを検討した。しかしながら,学年間比較についてはまだ行われておらず,研究(5)においてもこの点が今後の課題とされていたことから,本研究では,学年進行に伴う児童・生徒観および指導行動に関する違いについて検討を加える。なお,学年による調査対象者のばらつきをできるだけ少なくするため,本研究では,教員養成課程の学部学生を対象とした検討を行う。
方   法
調査参加者 近畿地方の教員養成大学に在籍する大学2年生~4年生91名(2年生61名,3年生9名,4年生21名,男性43名,女性48名,平均年齢は男性が21.30歳,女性が19.67歳)であった。
材 料 研究(1)で作成された,児童・生徒観尺度および学習指導行動尺度を用いた。
手続き 研究(1)の手続きに同じであった。
結果と考察
 参加者から得られたデータについて,SPSS Ver.23.0を用いて,以下の事項に関する一要因分散分析を行った。
1)児童・生徒観の比較検討
 研究(1)において確認された下位尺度の構造に基づき,教員養成学部学生の学年間での児童・生徒観について比較検討を行った。最初に,群間での分散の等質性を検討するためにLeveneの検定を行ったところ,「自己統制性」および「学習指導行動」因子において値が有意であり,等質性が確認できなかったため,クラスカル―ウォリスの検定を行ったが,結果は有意ではなかった。次に,「学習指導性」「自立性」について1要因分散分析を行ったが,F値は有意ではなかった。
 その次に,項目ごとに学年間の違いに関して検討を加えたところ,項目5「自然に任せていても,児童・生徒自身が,自分の生活を良くするために努力するものだ―自然に任せておくと,児童・生徒はどうしてもだらしない生活を過ごすものだ」においてF値が有意であった(F(2,88)=4.32 p<.05。各学年の評定平均値は,2年生が2.84,3年生が2.22,4年生が2.90)。Tukey法による多重比較の結果,2年生―3年生間,3年生―4年生間で評定値の差が有意であった。3年生がどちらかといえば児童・生徒中心型の児童・生徒観を有している一方,3年生よりも2年生の方が,また,3年生よりも4年生の方がどちらかといえば教師中心型の児童・生徒観を有していることが伺える。
2)学習指導行動の比較検討
 自分が教師としてどのような指導行動を重視するかについて回答を求めた。そして,1)と同様,教員養成学部学生における学年間での比較検討をするため,1要因分散分析を行った。その結果,項目2「授業では生徒の発言の機会を多くとる―授業では教師の説明の機会を多くとる」においてF値が有意傾向を示した(F(2,87)=2.85 p<.10。各学年の評定平均値は,2年生が1.70,3年生が1.56,4年生が1.33)。そこで,Tukey法による多重比較を行ったところ,2年生―4年生間で評定値の違いが有意傾向を示しており,4年生の方がより児童・生徒中心の学習指導行動を重視する傾向が見られた。
 本研究においては,児童・生徒観および学習指導行動に関して学年による違いが見られるかどうかを検討することが目的であった。その結果,児童・生徒観尺度の1項目で評定値の違いが有意であった。その理由として,学年が上がるにつれて児童・生徒中心の児童・生徒観を有するが,教育実習を経て児童・生徒の実際の様子に触れる,等のことが考えられる。また,実際の学習指導行動に関しては,教育実習で実際に児童・生徒に学習指導を行ったことにより,より児童・生徒中心の学習指導が望ましいと考えるに至ったことが推測される。しかしながら,本研究における取得データからはこの点が裏付けられないことから,今後検討の必要があろう。