[PA20] 現職教員と教員志望学生の児童・生徒観および指導行動に関する研究(6)
教員養成大学と一般大学の学生間の比較検討
Keywords:児童・生徒観, 学習指導行動, 大学間の差異
問題と目的
研究(1)(﨑濱・藤田・林,2015)では,現職教員と教員志望学生の児童・生徒観および指導行動の様相を検討するための尺度を作成した。そして,作成尺度を基に,研究(2)(藤田・林・﨑濱,2015)では,現職教員と教員志望学生間,研究(3)(林・﨑濱・藤田,2015)では,小学校教員―中学校教員間,研究(4)(藤田・林・﨑濱,2016)では,教員養成大学の学生における希望校種間での児童・生徒観および学習指導行動について検討を加えた。また,研究(5)(林・﨑濱・藤田,2016)では,教員養成大学学生を対象に,学年進行に伴う児童・生徒観および指導行動に関する違いについて検討した。このように,一連の研究において,現職教員および教員志望学生の児童・生徒観および学習指導行動について検討を加えたが,教員志望学生の中には,教員養成大学学生,一般大学の教職課程履修学生(以下,非教員養成大学学生)の双方が存在する。研究(4)および(5)では教員養成系大学学生のみを対象とした分析を行っていたが,今後の教員養成の在り方を考える上でも,一般大学在籍学生との違いを検討することが必要であろう。そこで,本研究では,教員養成大学の学生と一般大学における教職課程志望者の間での児童・生徒観,学習指導行動における重視度合いの違いを検討する。なお,本研究では,教職課程履修の比較的初期にあたる大学2年生を分析対象とする。
方 法
調査参加者 近畿地方の教員養成大学および一般大学に在籍する大学2年生204名(教員養成大学学生61名,非教員養成大学学生143名。内訳は,教員養成大学学生男性25名,女性36名,非教員養成大学学生男性76名,女性67名。平均年齢は,全体が19.28歳,教員養成大学学生が19.31歳,非教員養成大学学生が19.27歳)。
材 料 研究(1)で作成された,児童・生徒観尺度および学習指導行動尺度を用いた。
手続き 研究(1)の手続きに同じであった。
結果と考察
参加者から得られたデータについて,SPSS Ver.2.0を用いて,以下の事項に関するt検定を行った。ただし,等分散性を検討するためのLeveneの検定を行った結果,F値が有意であった項目については,ウェルチの検定を行った。
1)児童・生徒観の比較検討
研究(1)において確認された下位尺度の構造に基づき,児童・生徒観についての群間の比較検討を行った。その結果,項目19「児童・生徒の活動や頑張りは,できるだけほめることが大切だ―児童・生徒がどんなに頑張ったとしても,結果が伴わない場合はむやみにほめるべきではない」において評定値の違いが有意であり(t146=-2.07 p<.05),教員養成大学学生の方がより児童生徒中心の考え方をしていることが明らかになった(評定値は,教員養成大学学生が1.39,非教員養成大学学生が1.59)。
2)学習指導行動の比較検討
自分が教師としてどのような指導行動を重視するかについて回答を求めた。その結果,項目1「生徒一人一人の進度に合わせて指導する―生徒全体の進度がそろうように指導する」の評定値の違いが有意であり(t202=2.35 p<.05),教員養成大学学生がやや児童生徒中心の考え方をしていた(評定値は,教員養成大学学生が2.11,非教員養成大学学生が2.41)。
本研究においては,児童・生徒観として19項目を,指導行動として15項目をたずねた。結果として,上記2項目において,教員養成大学の学生の方がより児童生徒中心の考え方をしていることが明らかになったものの,全体としては両群に有意差は認められなかった。しかしながら,下位尺度や項目ごとの評定平均値に着目すると,たとえば第2因子(「自立性」因子)においては,教員養成大学学生の値が2.69,非教員養成大学学生の値が2.60となった。また第3因子(「自己統制性」因子)においても,教員養成大学学生の値が2.69,非教員養成大学学生の値が2.61と,両群とも評定値が2.50以上を示しており,ともに,どちらかといえば教師中心的な考え方を示していた。本調査で分析対象となったのは大学2年生だけであった。そのため,この傾向が学年に関わらず成り立つのか,学年移行に伴って変化していくのかどうか,などについても,今後検討の必要があろう。
研究(1)(﨑濱・藤田・林,2015)では,現職教員と教員志望学生の児童・生徒観および指導行動の様相を検討するための尺度を作成した。そして,作成尺度を基に,研究(2)(藤田・林・﨑濱,2015)では,現職教員と教員志望学生間,研究(3)(林・﨑濱・藤田,2015)では,小学校教員―中学校教員間,研究(4)(藤田・林・﨑濱,2016)では,教員養成大学の学生における希望校種間での児童・生徒観および学習指導行動について検討を加えた。また,研究(5)(林・﨑濱・藤田,2016)では,教員養成大学学生を対象に,学年進行に伴う児童・生徒観および指導行動に関する違いについて検討した。このように,一連の研究において,現職教員および教員志望学生の児童・生徒観および学習指導行動について検討を加えたが,教員志望学生の中には,教員養成大学学生,一般大学の教職課程履修学生(以下,非教員養成大学学生)の双方が存在する。研究(4)および(5)では教員養成系大学学生のみを対象とした分析を行っていたが,今後の教員養成の在り方を考える上でも,一般大学在籍学生との違いを検討することが必要であろう。そこで,本研究では,教員養成大学の学生と一般大学における教職課程志望者の間での児童・生徒観,学習指導行動における重視度合いの違いを検討する。なお,本研究では,教職課程履修の比較的初期にあたる大学2年生を分析対象とする。
方 法
調査参加者 近畿地方の教員養成大学および一般大学に在籍する大学2年生204名(教員養成大学学生61名,非教員養成大学学生143名。内訳は,教員養成大学学生男性25名,女性36名,非教員養成大学学生男性76名,女性67名。平均年齢は,全体が19.28歳,教員養成大学学生が19.31歳,非教員養成大学学生が19.27歳)。
材 料 研究(1)で作成された,児童・生徒観尺度および学習指導行動尺度を用いた。
手続き 研究(1)の手続きに同じであった。
結果と考察
参加者から得られたデータについて,SPSS Ver.2.0を用いて,以下の事項に関するt検定を行った。ただし,等分散性を検討するためのLeveneの検定を行った結果,F値が有意であった項目については,ウェルチの検定を行った。
1)児童・生徒観の比較検討
研究(1)において確認された下位尺度の構造に基づき,児童・生徒観についての群間の比較検討を行った。その結果,項目19「児童・生徒の活動や頑張りは,できるだけほめることが大切だ―児童・生徒がどんなに頑張ったとしても,結果が伴わない場合はむやみにほめるべきではない」において評定値の違いが有意であり(t146=-2.07 p<.05),教員養成大学学生の方がより児童生徒中心の考え方をしていることが明らかになった(評定値は,教員養成大学学生が1.39,非教員養成大学学生が1.59)。
2)学習指導行動の比較検討
自分が教師としてどのような指導行動を重視するかについて回答を求めた。その結果,項目1「生徒一人一人の進度に合わせて指導する―生徒全体の進度がそろうように指導する」の評定値の違いが有意であり(t202=2.35 p<.05),教員養成大学学生がやや児童生徒中心の考え方をしていた(評定値は,教員養成大学学生が2.11,非教員養成大学学生が2.41)。
本研究においては,児童・生徒観として19項目を,指導行動として15項目をたずねた。結果として,上記2項目において,教員養成大学の学生の方がより児童生徒中心の考え方をしていることが明らかになったものの,全体としては両群に有意差は認められなかった。しかしながら,下位尺度や項目ごとの評定平均値に着目すると,たとえば第2因子(「自立性」因子)においては,教員養成大学学生の値が2.69,非教員養成大学学生の値が2.60となった。また第3因子(「自己統制性」因子)においても,教員養成大学学生の値が2.69,非教員養成大学学生の値が2.61と,両群とも評定値が2.50以上を示しており,ともに,どちらかといえば教師中心的な考え方を示していた。本調査で分析対象となったのは大学2年生だけであった。そのため,この傾向が学年に関わらず成り立つのか,学年移行に伴って変化していくのかどうか,などについても,今後検討の必要があろう。