The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA(01-64)

ポスター発表 PA(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PA22] 幼稚園教諭養成課程における教育実践研究Ⅱ

達成目標志向性と学習効果との関連

金子智昭1, 金子智栄子2, 金子功一3 (1.慶應義塾大学, 2.文京学院大学, 3.植草学園大学)

Keywords:達成目標志向性, 学習効果, 幼稚園教諭志望学生

問題と目的
 Butler(2007)は,教師行動に対する比較的安定した特性としての達成目標志向性(achievement goal orientations)の概念を提唱した。達成目標の分類は,総じて,(a)マスタリー目標(教師としての専門性や力量を発展させることが目標),(b)パフォーマンス接近目標(優れた教授能力を他者に示すことが目標),(c)パフォーマンス回避目標(劣った教授能力を他者に披露することを避けることが目標),(d)仕事回避目標(少ない労力で職務を遂行することが目標),(e)関係性目標(子どもとの親密な関係性を構築したり関係性に配慮したりすることが目標)の5つの目標が提起されている。ただし,既存の達成目標に関する研究は,小・中・高等学校の現職教諭(e.g., Butler, 2007)や教育実習生を対象としており(Nische et al., 2011),幼稚園教諭を対象とした研究は見当たらない。したがって,教育形態の事なる幼児教育分野においても,既述のような達成目標が検出されるかどうか確認する必要があると考える。また,先行研究を概観すると,とりわけ,マスタリー目標の重要性が一貫して示されている。マスタリー目標の高い教師は,学習者中心の効果的な指導を行い,子どもの学習内容への興味や援助要請を高めることが示されている(e.g., Butler & Shibaz, 2012)。教職志望学生においても,個人の持つ達成目標志向性により,学生自身の学習効果に差が生じると考えられる。マスタリーが高い教職志望学生は,講義内容を専門性や力量を伸ばすための有益な情報源と認識しやすいと考えられ,講義後の学習効果がより高まることが予想される。
 以上より,本研究では,幼稚園教諭志望学生に適した達成目標志向性尺度を作成し,幼稚園教諭志望学生の達成目標志向性が,マイクロテイーチング(MT)による学習効果にどのような影響を及ぼすのか検証することを目的とする。
方   法
 対象者・訓練期間・訓練手続き:研究Ⅰ参照。
 調査内容(a)尺度項目の作成 対象者が学生であることを考慮して,仕事回避目標を除く4つの観点を採用した。項目作成に当たり,筆者らが数回の議論を重ね項目を選定した。1つの観点につき4項目ずつの計16項目を作成した。教示は,「将来あなたが保育者(教育者)となってクラスを担任した時,どのような場合に充実感や達成感を感じると思いますか」であり,4段階評定。(b)MTによる学習効果の質問紙 研究Ⅰの「有効性」と「力量形成」を測定する尺度を用いた。
結果と考察
 因子分析(最尤法・promax回転)を行った結果,想定通りの4因子が検出された。負荷量が.40以上の基準で繰り返し因子分析を行った結果,12項目からなる「幼稚園教諭志望学生版達成目標志向性尺度」が作成され,一定の信頼性(α=.67~.84)が確認された(Table)。次に,MTの「有効性」(5下位尺度)と「力量形成」(4下位尺度)のそれぞれを従属変数,達成目標の4つを独立変数とする重回帰分析を行った。マスタリー目標は,決定係数が有意であった6下位尺度(保育者としての自覚と指導技術,学習状態の認識と学習意欲,幼児理解,指導案の書き方,態度,視野の拡大・深化) の全てに対して有意に正の影響を及ぼしていることが示され (β=.259~.444),仮説が支持された。