[PA23] 幼稚園教諭養成課程における教育実践研究Ⅲ
友人との葛藤解決効力感と援助要請スタイルが学習効果に及ぼす影響
Keywords:マイクロティーチング, 援助要請, 学習効果
問題と目的
個人が悩みを抱え,その問題に対して自分自身では解決できない時,必要に応じて他者に援助を求めることを援助要請という (永井, 2013)。元来,援助要請は個人にとって望ましいものであるとされてきた (Lee, 1999)。ただし,援助要請は自立的であることが重要であると示されている (永井, 2013)。
従来の援助要請に関する研究では,小・中・高等学校の児童生徒を対象とするものが中心であった (Butler, 2007)。しかし,野崎 (2008) は,保育者養成校の短期大学生を対象に実習中の援助要請要因 (援助の必要性,要請の遂行,援助受容) と保育者効力感及びストレス反応との関連を検討し,大学生をも対象とすることの重要性を示唆している。
筆者らは,幼稚園教諭を志望する大学生を対象にグループ活動を重視しながら模擬保育を行うマイクロティーチング (MT) を実施している。グループ活動を活性化させた学習場面においては,友人との葛藤が生じやすく,その葛藤への効力感が高い者ほど自立的な援助を要請しやすく学習成果をも高めると考える。
そこで本研究では,友人への葛藤解決効力感と援助要請が,学習効果にどのような影響を及ぼすのかについて検討する。
方 法
1. 対象者・訓練期間・訓練手続き:研究Ⅰ参照。
2. 調査内容
① 「MTの過程において,困ったり悩んだりしたことはありますか」と質問したところ,70名 (63%) が“はい”と回答した。次に,「はい」と回答した学生に「そのことに対するあなた自身の相談の仕方について伺います」として以下の尺度項目への回答を求めた。
② 援助要請スタイル尺度 (永井, 2013) を用いた。この尺度は,援助要請自立型,援助要請過剰型,援助要請回避型の下位尺度 (各4項目) から構成されている (計12項目)。
③ 友人との葛藤解決効力感尺度 (金子・中谷, 2014) (以下: 効力感) の6項目を用いた。
④ MTによる学習効果 研究Ⅰの「有効性」の5下位尺度 (保育者自覚と指導技術, 学習意欲, 難しさ, 幼児理解, 指導案の書き方) を測定する項目を用いた。評定は,「4. あてはまる~1. あてはまらない」の4段階であった。
結果と考察
① 援助要請スタイルの各下位尺度と効力感尺度,及びMTによる学習効果における各下位尺度との相関分析を行ったところ,「援助要請自立型」は「効力感 (r=.27 (p<.05))」と「学習意欲 (r=.36 (p<.01))」との間に有意な正の相関があった。友人との葛藤を解決する効力感は,自立的な援助要請を促し,学習意欲を高めることが示唆された。また,「効力感」と「指導案の書き方」との間にも有意な正の相関 (r=.25 (p<.05)) がみられた。グループ活動での指導案の作成時に,友人との葛藤を解決する効力感をもつことは,学生自身の学びをも促す可能性が示された。
② 援助要請スタイルの各下位尺度と「効力感」を独立変数,MTによる学習効果の各下位尺度を従属変数とする重回帰分析を行った結果,決定係数が学習効果の「学習意欲 (R2=.18 (p<.05))」と「難しさ (R2=.17 (p<.05))」で有意となった。また,学習効果の「学習意欲」は【援助要請自立型】に正 (β=.42 (p<.01)),「難しさ」は【援助要請回避型】に負 (β=-.38 (p<.01)) の影響を与えていた。援助要請が自立的な場合は学習意欲を高め,回避的な援助要請を行う場合は,MTを難しいと感じさせると考える。授業でグループ活動を取り入れていく場合には,友人との葛藤をどのように対処するかが自立的な援助行動を高め,学習意欲を向上させることが示された。
個人が悩みを抱え,その問題に対して自分自身では解決できない時,必要に応じて他者に援助を求めることを援助要請という (永井, 2013)。元来,援助要請は個人にとって望ましいものであるとされてきた (Lee, 1999)。ただし,援助要請は自立的であることが重要であると示されている (永井, 2013)。
従来の援助要請に関する研究では,小・中・高等学校の児童生徒を対象とするものが中心であった (Butler, 2007)。しかし,野崎 (2008) は,保育者養成校の短期大学生を対象に実習中の援助要請要因 (援助の必要性,要請の遂行,援助受容) と保育者効力感及びストレス反応との関連を検討し,大学生をも対象とすることの重要性を示唆している。
筆者らは,幼稚園教諭を志望する大学生を対象にグループ活動を重視しながら模擬保育を行うマイクロティーチング (MT) を実施している。グループ活動を活性化させた学習場面においては,友人との葛藤が生じやすく,その葛藤への効力感が高い者ほど自立的な援助を要請しやすく学習成果をも高めると考える。
そこで本研究では,友人への葛藤解決効力感と援助要請が,学習効果にどのような影響を及ぼすのかについて検討する。
方 法
1. 対象者・訓練期間・訓練手続き:研究Ⅰ参照。
2. 調査内容
① 「MTの過程において,困ったり悩んだりしたことはありますか」と質問したところ,70名 (63%) が“はい”と回答した。次に,「はい」と回答した学生に「そのことに対するあなた自身の相談の仕方について伺います」として以下の尺度項目への回答を求めた。
② 援助要請スタイル尺度 (永井, 2013) を用いた。この尺度は,援助要請自立型,援助要請過剰型,援助要請回避型の下位尺度 (各4項目) から構成されている (計12項目)。
③ 友人との葛藤解決効力感尺度 (金子・中谷, 2014) (以下: 効力感) の6項目を用いた。
④ MTによる学習効果 研究Ⅰの「有効性」の5下位尺度 (保育者自覚と指導技術, 学習意欲, 難しさ, 幼児理解, 指導案の書き方) を測定する項目を用いた。評定は,「4. あてはまる~1. あてはまらない」の4段階であった。
結果と考察
① 援助要請スタイルの各下位尺度と効力感尺度,及びMTによる学習効果における各下位尺度との相関分析を行ったところ,「援助要請自立型」は「効力感 (r=.27 (p<.05))」と「学習意欲 (r=.36 (p<.01))」との間に有意な正の相関があった。友人との葛藤を解決する効力感は,自立的な援助要請を促し,学習意欲を高めることが示唆された。また,「効力感」と「指導案の書き方」との間にも有意な正の相関 (r=.25 (p<.05)) がみられた。グループ活動での指導案の作成時に,友人との葛藤を解決する効力感をもつことは,学生自身の学びをも促す可能性が示された。
② 援助要請スタイルの各下位尺度と「効力感」を独立変数,MTによる学習効果の各下位尺度を従属変数とする重回帰分析を行った結果,決定係数が学習効果の「学習意欲 (R2=.18 (p<.05))」と「難しさ (R2=.17 (p<.05))」で有意となった。また,学習効果の「学習意欲」は【援助要請自立型】に正 (β=.42 (p<.01)),「難しさ」は【援助要請回避型】に負 (β=-.38 (p<.01)) の影響を与えていた。援助要請が自立的な場合は学習意欲を高め,回避的な援助要請を行う場合は,MTを難しいと感じさせると考える。授業でグループ活動を取り入れていく場合には,友人との葛藤をどのように対処するかが自立的な援助行動を高め,学習意欲を向上させることが示された。