The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA(01-64)

ポスター発表 PA(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PA26] 教職教育科目におけるPBLの試み

紙芝居作成と読み聞かせ活動を主軸として

皆川直凡1, 富岡直美2 (1.鳴門教育大学大学院, 2.四国大学短期大学部)

Keywords:PBL, 教員養成, 読み聞かせ

目   的
 修士課程における教職教育科目「教育実践フィールド研究」において,PBL(Project Based Learning)を導入し,教員に求められる5つの資質・能力(教育者としての人間性,協働力,生徒指導力,授業実践力,省察力)の育成と向上を目指した。本授業におけるPBLでは,教職志望の大学院生が,紙芝居を用いた読み聞かせ活動ならびに児童の朗読活動によって構成される小学校国語科授業を考案・実施した。
方   法
0.PBL構築の過程
 本授業は通年授業であり,受講生は教育大学の修士課程学生6名であった。うち5名は大学院での教員免許取得を志す長期履修学生(3年制)の2年生であり,1名は通常の修士課程の1年生であった。前期には,文献講読,外部講師(研究室出身の中学校教諭,協力校の教頭,PBLを専門とする大学講師)による講演,レポート作成などをとおして,PBL実施への動機づけ,知識や研究技法の修得に努めた。また,俳句の創作と相互鑑賞の会を3回実施し,協調性の向上を図った。上記5名は,9月に公立学校で教育実習を行った。10月上旬にPBLのオリエンテーションが行われ,以後,全12回のミーティングを重ね,全員の合議制により進行された。各回の概要を下記に示す。
(1)オリエンテーション,役割分担(脚本,絵,小学校授業指導案),作業工程の策定
(2)紙芝居の場面分け,授業参観実施日の確定
(3)下絵および脚本の検討,脚本と絵のすり合わせ
(4)紙芝居の試演,脚本と絵の検討
(5)研究協力校での授業参観と総括
(6)・(7)・(8)・(9)指導案の検討,下絵と脚本の検討,今後の行程管理の確認等を並行実施
(10)指導案に関する指導(研究協力校の教頭先生)
(11)模擬授業実施(大学にて)
(12)指導案の再検討
 本授業におけるPBLの流れは,下記のとおりである。①教材の選定 ②紙芝居(脚本・絵を含む)の作成 ③児童理解を図るための授業参観とその総括 ④小学校国語科授業の立案と実施 ⑤まとめ
1.教材の選定
 下記の理由により,新美南吉著「手ぶくろを買いに」を選定した。
 ○場面構成がはっきりしていて,紙芝居を作成しやすい。
 ○登場人物の心情が複雑で,様々な取り方ができるため,子どもの思考を促進する。
 ○登場人物が3名以上いることから,児童による朗読活動において協同学習が可能である。
2.紙芝居の作成
 教育目標に沿った構成にすることを必要条件として脚本と絵を創作し,紙芝居を自主作成した。
小学校での授業の教育目標は,「作者の気持ちに共感する,優しいこころを育てる」とした。
 5年生の発達段階を精査し,共感するのは登場人物ではなく,作者とするのが妥当と判断した。
3.児童理解を図るための授業参観
実施日:2015年11月13日(金)・16日(月)
協力校:T県A市立N小学校第5学年28名
協力者:Y教頭先生,5年1組担任M先生
授業参観の総括(KJ法による)
4.小学校国語科授業の立案と実施
【主題】作者と対話しながら読む国語科授業-児童の発達の最近接領域を考慮して-」
【目的】文章を読み取る活動から作者の気持ちをくみ取り,作者が表したかった心情について考え,紙芝居の実演を通して表現し,積極的な意見の交流をおこなうことで人の気持ちに共感する優しさを育てることを目指す。
【概要】小学校第5学年国語科授業。3時間計画とし,1時間目と3時間目を大学院生が実施した。2時間目はY先生に実施を依頼した。実施期間は,2016年1月27日・28日・29日であった。各時間の学習活動は,下記の通りであった。
1時間目 授業者による読み聞かせを聞く。作者の気持ちが強く表れている場面,その気持ちや伝えたかった内容を考え,ワークシートに記述する。
2時間目 似通った気持ちや考えをワークシートに記述していることを基準に,班構成を行う。班に分かれて紙芝居朗読の練習を行う。
3時間目 それぞれの場面ごとに紙芝居朗読の発表を行う。他班の紙芝居朗読の発表を聞いて思ったことや感じたことなどを発表する。
5.まとめ-PBL用ルーブリック及び自由記述による振り返り-(実施前・後の自己評価比較)
結   果
 PBLルーブリックを参考にした成長点・改善点の自由記述,メンバー相互による講評(付箋に互いの良い点を記述・交換)から,向上を確認した。