The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

Presentation information

ポスター発表 PA(01-64)

ポスター発表 PA(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PA27] 絵本の内容理解における下位技能の寄与(1)

内容の理解し難さが誤信念理解と類推の活用に与える効果

光田基郎 (大阪教育福祉専門学校)

Keywords:絵本, 5歳児, 誤信念理解

目   的
 5歳児が画面で読み聞かせられた絵本の内容を理解する際に,知識不足ゆえに理解の下位技能(文法,類推と誤信念理解等)の統合と活用が困難な時,上記の下位技能の相互関係を教示条件別にパス図で表示する。
方   法
 (イ)(a)5歳児の知識利用が困難な例として,「ふるやのもり」(瀬田貞二著 福音館)より老夫婦が「古い家の雨漏りは泥棒やオオカミより怖い」と話すのをオオカミも泥棒も屋外で聞いて,「未知のふるやのもりとは自分より怖い怪獣」と誤解,侵入先の雨漏りを恐れて逃げる筋立てを5歳児28名に個別に計12画面と挿入質問4画面を男性の声で録音・録画して参加者ペースで読み聞かせた。ここで幼稚園児は個別に自らのペースで視聴,途中で内容に関する挿入質問に選択反応を入力した。次に逐語再認と,内容を推理する推理再認の質問を計8問,逐次画面に提示して選択反応を求めた。(b)閲読した絵本とは無関係の風景画(大人ー子供,窓の開閉など2次元の組み合わせの対応付け)を用いた類推課題,(c)「リンゴの絵を指さす前にバナナを指さして・・」など反応制御の理解と,「どちらかのウサギと両方のネズミとを指さして・・」と指示する反応の抑制/選択と,「トラックがタクシーに牽かれる絵を選べ」と文法の理解を求めた選択課題(大伴ほか,’05)及び,(d)「サリーが不在の間に彼女のボールをアンが勝手に自分の箱に移した後,戻ったサリーはボールの所在を何処と思う?」との誤信念課題,(e)留守番中の女の子が読書, 郵便局員来訪,ママの電話のエピソード3件を読み聞かせて画面で順序を再構成させる長文理解課題の計5画面に選択反応を求めた。(ロ)参加者は秋田市内私立幼稚園の年長児28名(平均年齢6歳1か月)が個別の画面で参加。平均所要時間は16分である。
結   果
(イ)図1は教示条件別に見た主成分分析結果のパス図である。第1主成分として,教示・無教示条件共に(a)途中質問への正反応比と逐語・推理再認成績は共に負の係数値(b)誤信念理解成績が第1-22主成分として正の係数値を示す。(c)類推能力は第1主成分でなく第2,第3主成分となる。以上より読み聞かせ内容の想起とその表象からの類推よりもオオカミと泥棒の誤信念内容を理解して絵本全体の筋立てを知る過程の柔軟性が必要で,文の統語構造や記銘は基本的な主成分ではない。他方で(ロ)推理再認の規定因を判別分析して,教示群で類推,反応抑制と統語理解,無教示で誤信念理解,統語と途中質問(正準判別係数<0)を指摘した。
考   察
 幼児の散文理解では低次の統語,作業記憶と中間の誤信念理解とメタ認知変数へのパス(Kim’15)以外に,表象間の類推・写像過程にも注目し得る。 高次の推論/写像と表象制御過程を下位の作業記憶,統語と結ぶパス図の精緻化が今後の検討課題となる。

*筆者の助言下で,飯塚美咲・伊藤桃子と加藤梨沙による聖霊女子短大(秋田市)卒業研究である。