The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA(01-64)

ポスター発表 PA(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PA34] 防災教育の目標を構成する語句の語彙分析と概念分類

田中敏 (信州大学)

Keywords:防災教育, 教育目標分類, 語彙分析

目   的
 防災教育の目標は文部科学省(2013)の参考資料では,1)知識,思考・判断,2)危険予測・主体的な行動,3)社会貢献,支援者の基盤,の3つにまとめられている。そのような目標を達成するために児童生徒側ではどんな能力・資質が必要なのかを明らかにし,目標分類体系をつくることを本研究は試みる。このため授業事例等から教育目標を表す文を収集し,その語彙形式と概念内容について分析と分類を試みた。
方   法
 対象 小中学校の防災教育に関する1027件の報告や授業案・手引き等の公開されている資料や情報から,事例間・学区内で共通のものと文部科学省(2013)の記述を引用したものを除いた588文を分析対象とした。
 手順 目標文を形態素に分析し,動詞等の活用形や類義語をグループ化した101個の異なり語句を得た。たとえば異なり語句の『地域』は,一つの語句グループの見出し語であり,それと置き換え可能な同義語・類義語『地方』『社会』などを代表する(他の例は図1参照)。
 これらの異なり語句のそれぞれが,各目標文のなかに含まれていれば1,含まれていなければ0をその語句に与え,このデータから異なり語句同士の連関係数を算出し,共起関係を調べた。
結果と考察
 連関係数0.30以上に注目し,異なり語句同士の関連性を概念内容から解釈した結果,主に『自己』に関連する内容a(『命』『守る』),『地域』に関連する内容b(『協力』『参加』),災害・自然の『もたらす』『大地』『変化』などを『様々』『調べる』内容cが見いだされた(図1参照)。
 また,他の連関する語句は,児童生徒の能力・資質の発達段階として基礎/応用/実践に分けて並べられるようにみえる。下は段階分けの一例である(数値はφ係数,N=588)。

 基礎段階
『心』―.44―『育てる』 『興味』―.77―『もつ』
『態度』―.45―『養う』 『実験』―.53―『通して』

 応用段階
『意識』―.51―『高める』 『的確』―.58―『判断』

 実践段階
『話』―.51―『合う』  『生活』―.34―『備える』

 以上より,防災教育における教育目標構造は,実践上の観点から自己/地域/災害・自然と,知識/技術/態度と,基礎/応用/実践とを組み合わせた,授業内容abc(3)×能力・資質の領域(3)×能力・資質の発達段階(3)の分類体系に基づくことが現実的であると考えられる。
引用文献
文部科学省 (2013). 学校防災のための参考資料・「生きる力」を育む防災教育の展開http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/1289310.htm

※本研究は科研費25285244(研究代表者,田中敏)の助成によるものである。