The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA(01-64)

ポスター発表 PA(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PA36] ベビーサイン教室の活動がもたらす母親の意識の変化

赤津純子 (埼玉学園大学)

Keywords:ベビーサイン, ベビーサイン教室, 育児ストレス

問   題
 Acredolo, L. & Goodwyn, S.(1985)のベビーサインの研究が発表されて以来,ベビーサインを用いた育児法は多くの養育者たちに活用されるようになってきた。
 ベビーサインを育児に利用するためには,養育者がベビーサインを習得し,それを子どもに教示する必要がある。ベビーサインの習得の仕方としては,ベビーサインを教える教室や講演会に参加する,ベビーサイン関する書籍を読み独学で取得する方法がある。
 今回は,ベビーサイン教室に通う母親に焦点を当て,ベビーサイン教室に通うことによって,母親の意識がどのように変化するのかを調査する。
 現在,育児に対する不安を緩和するための子育て支援対策はいろいろととられているが,そのような中で,ベビーサイン教室は,教室に通っている母親のどのような育児に対する不安やストレスを緩和することに役立つのかを吟味する。
 ベビーサイン教室での活動を通して,母親の意識がどのように変化するかを以下の3側面から検討する。
1 子どもへの関わり方は変化するか
2 子どもの気持ちや欲求が明確に理解できるようになるか
3 子どもを養育することに関する不安感が和らぐか
方   法
 調査対象者はベビーサイン教室に通う母子で0歳児クラス10名,3歳児クラス(継続クラス)8名の計18名である。教室は毎月1回ずつで6回を1クールとする。3歳児クラスは1クール終了後も継続して毎月1回開いている教室である。
 手続きとしては,母親に対して,ベビーサイン教室に通ってからの母親の具合的な育児行動や感想に関するアンケート,日本語マッカーサー乳幼児言語発達質問紙,PSI(育児ストレスインデックスを配布した。
結果・考察
 ベビーサインを習い始めた時期は,6ヶ月から12ヶ月の間で,平均8.9ヶ月であり,多くが模倣の始まる前後の時期に入所していることになる。
 入室理由としては,言葉を話しようになる以前の子どもとのコミュニケーションを円滑にする手段としてベビーサインを取り入れたいと考えた,母親自身の生活の充実を図る手段として考えた(育児休暇中の時間の有効利用等),消極的な理由(友人に誘われた等)が挙げられている。
 ベビーサインを習ったことの効果については0歳児クラスと3歳児クラスとでは意識の違いがみられる。
 ベビーサインを習い始めたばかりの0歳児クラスでは子どもとの意思疎通の手段としてベビーサインを有効利用し始めていること,また意思疎通ができることに母親自身が喜びを見出すようになっていることが,ベビーサインを経て既に言葉を話すようになっている3歳児クラスでは,ベビーサインの使用により,意思が通じやすくなり子どもが不機嫌になることが少なく,したがって母親自身も穏やかに子どもに接することが出来るようになったこと,ベビーサインを用いることで培われた子どもに対する態度が,その後,子どもに対して注意深く関わろうとする姿勢に反映されるようになったこと,が効果として挙げられている。
ま と め
1 子どもへの関わり方の変化
 子どもに積極的に向き合って,子どもとの時間を確保するように努力するようになる。
2 子どもの気持ちや欲求の理解
 子どもの欲求を判断しにくい場面でも理解できるようになる。子どもなりに考えていることを,子どもが使用したベビーサインを通して理解できるようになる。
3 子どもを養育することに関する不安感の緩和
 ベビーサインを習うことを通して,子どもの欲求が理解できる面が増え,安心感を得ることができる,子どもと向き合う時間が楽しく喜びを見出すことができる等,子どもを養育する上での不安感の緩和が図られる。また,ベビーサイン教室に通うことによって,同じような境遇の母親と知り合え親しい友人となれる,教室の講師に気軽に育児相談ができるので精神的に安心するといった,ベビーサインそのものではなく,教室という集いの場がもたらす効果もみられる。この他に,ベビーサインを使用することは発達的に遅れのある我が子への刺激になっており,それが自身の育児への不安の緩和につながると捉える母親もいる。