The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA(01-64)

ポスター発表 PA(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PA39] ドリルタイプの漢字学習から意味理解への学習

白川文字学による教育の効果

吉田甫1, 川那部隆司2, 後藤文男#3, 久保裕之#4, 萩原正樹#5 (1.立命館大学, 2.立命館大学, 3.立命館大学, 4.立命館大学, 5.立命館大学)

Keywords:漢字学習, ドリルタイプ, 意味理解

 わが国における漢字教育は,基本的には,ドリル学習による暗記タイプの学習と言えるだろう。多くの子どもは,漢字帳に漢字をひたすら繰り返し書くというドリルを行い,暗記するというタイプの学習をおこなっている。そこには,漢字の持つ意味などを考える余地はほとんどない。しかし現在の漢字教育は,ほとんどこうしたドリルタイプに依存しているのが現状である。これに対し,福井県ではまったく独自な漢字教育をおこなっている。それは,白川文字学に基づく漢字教育である。白川文字学とは,現在の当用漢字を古代文字との関係で見直し,それらの関連性をつけることにより,漢字が持つ意味を浮かび上がらせる教育と言える。実際には,子どもに古代文字を提示し,それが現代ではどんな漢字になるかを自由に発想させ,漢字の成立過程などを知ることにより,漢字の構成を理解するという教育方法である。福井県では,この6~7年にわたり,小学校で白川文字学に基づいた漢字教育を継続している。
 そこで,本研究では,白川文字学を実践している福井県から2つの小学校を選び,子どもが何を学習しているかを明らかにすることを目的とする。対照群として,隣の県である滋賀県からやはり2つの小学校を選び,どのような違いがあるかを検討した
方   法
参加者
 福井県内の公立のA小学校4年生とB小学校の4年生(N=130),同じ2つの小学校の6年生(N=136),および滋賀県内の公立のC小学校とD小学校の4年生(N=211)と6年生(N=185)が,それぞれ対象となった。
課題
 漢字の理解を調査するための問題として,以下のタイプの問題を構成した。(1)漢字がもつ要素を考慮して,その要素と漢字との関係を考える問題3問,(2)未習の漢字の読みを問う問題8問,(3)1つの漢字を基にして熟語を構成する問題10問,(4)2文字から構成されている熟語の漢字の関係を問う問題8問,(5)自由な書きを求める問題
手続き
 国語の1単位時間45分で一斉の調査
結   果
 4年生と6年生それぞれで,それぞれの県内での2つの小学校の正答率には差がなかったので,2学校を統合した形で分析をおこなった。
(1)全体の分析
 4年生の結果は,図1に示されている。問1のタイプでは,白川文字学による教育を受けている福井の子どもが,滋賀県の子どもよりも正答率は,有意に高かった。問2では差がなかったが,問3の熟語の構成では福井の子どもが明らかに高い正答率を示した。問4では教育方法による差は見られなかった。
(2)レベル毎の分析
 結果は4年と6年をそれぞれ能力レベル毎で分析した。上位層では,2つの県で差がないが,能力が下がるほど,達成度に差が見られた。