[PA44] 「相加平均」操作に焦点を当てた内包量の理解度調査とその学習支援の模索
大学生を被験者として
キーワード:相加平均, 内包量, 大学生
問題と目的
算数(数学)教育において,「量」を『内包量』と『外延量』とに分けることは重要と考える。両者とも実際的な量として,多く存在している。前者においては「長さ」「重さ」「体積」などが代表的であり,後者においては「速さ」「濃さ」「密度」などが代表される。このように実際的な量であるが,両者はその性質を異にする。その一例が「加法性」である。前者のみ,それを満たしている。中でも「平均」が問題である。内包量は非加法性のため,「相加」平均できないはずである。しかし,大学生において内包量が「非加法量」とわかっていても相加平均はするという結果が見られた(斎藤 2015)。そこで今回,平均を求めるために内包量を「相加」してしまわないための方策として,1比較する量を大きくする,2内包量の意味(求め方と性質)を「速さ」を例に説明する,を採り,内包量で求める「平均」は「相加」ではないやり方だということを学生に意識させる実験を行う。
方 法
(1)実験の概要:被験者は,大学1年生1年生(A;16名・B;14名)。被験者全員に,調査問題〔2種類;A・B〕(事前テスト-テキスト-事後テスト)が配布され,回答が求められる(30分程度)。(2) 事前テスト:ターゲットとなる問題は「速さ」「濃さ」「密度」の平均問題である。比較する量の差の大小で2種類(2群)用意される。また,両群の等質性・計算能力を測るために「割合文章問題」が3種用意される(共通)。(3)事後テスト(共通):上記3種の平均問題(比較差は「小」設定)。(4)教授-学習活動:両群とも「速さ」問題の答えが示された後,その驚き度(4段階)が問われ,その説明(何故相加平均ではダメなのか;「速さ」の求め方と「速さ」を含む内包量の性質〔非加法性及びそれに付随する非相加平均性〕)を受ける。その後,説明に対する納得度(4段階)が問われ,事後テストを受けることとなる。
結果と考察
(1)2群の等質性と計算操作力:割合文章題第3用法において群差なく高い正答率を示している。被験者の大学生は「割合」に関して高い理解力・計算力を有していると言える。(2)比較量差異設定の効果:「密度」問題を除き,比較量大群の方がやや正答率は高い。しかし,有意な程ではなく,「大」群では密度問題で過半数が相加平均誤答をしている。「驚き度」を見ても,「小」群に違和感を感じている者が多くいる傾向が見られるが有意ではない。比較差を大きくすることによって「足して」平均することへ“アラート”としようとしたが,若干の喚起となる可能性に止まっている。(3)教授-学習の効果:両群とも納得度は高く,事前から事後へ正答率も上昇している。「速さ」問題は10割の正答率である。相加平均誤答も減少しているが,完全に払拭されたと言う程ではない。密度問題で「大」群に2割程度の相加平均誤答が見られている。その意味では,「比較量の差」の問題と併せて改良の余地があると言えよう。
算数(数学)教育において,「量」を『内包量』と『外延量』とに分けることは重要と考える。両者とも実際的な量として,多く存在している。前者においては「長さ」「重さ」「体積」などが代表的であり,後者においては「速さ」「濃さ」「密度」などが代表される。このように実際的な量であるが,両者はその性質を異にする。その一例が「加法性」である。前者のみ,それを満たしている。中でも「平均」が問題である。内包量は非加法性のため,「相加」平均できないはずである。しかし,大学生において内包量が「非加法量」とわかっていても相加平均はするという結果が見られた(斎藤 2015)。そこで今回,平均を求めるために内包量を「相加」してしまわないための方策として,1比較する量を大きくする,2内包量の意味(求め方と性質)を「速さ」を例に説明する,を採り,内包量で求める「平均」は「相加」ではないやり方だということを学生に意識させる実験を行う。
方 法
(1)実験の概要:被験者は,大学1年生1年生(A;16名・B;14名)。被験者全員に,調査問題〔2種類;A・B〕(事前テスト-テキスト-事後テスト)が配布され,回答が求められる(30分程度)。(2) 事前テスト:ターゲットとなる問題は「速さ」「濃さ」「密度」の平均問題である。比較する量の差の大小で2種類(2群)用意される。また,両群の等質性・計算能力を測るために「割合文章問題」が3種用意される(共通)。(3)事後テスト(共通):上記3種の平均問題(比較差は「小」設定)。(4)教授-学習活動:両群とも「速さ」問題の答えが示された後,その驚き度(4段階)が問われ,その説明(何故相加平均ではダメなのか;「速さ」の求め方と「速さ」を含む内包量の性質〔非加法性及びそれに付随する非相加平均性〕)を受ける。その後,説明に対する納得度(4段階)が問われ,事後テストを受けることとなる。
結果と考察
(1)2群の等質性と計算操作力:割合文章題第3用法において群差なく高い正答率を示している。被験者の大学生は「割合」に関して高い理解力・計算力を有していると言える。(2)比較量差異設定の効果:「密度」問題を除き,比較量大群の方がやや正答率は高い。しかし,有意な程ではなく,「大」群では密度問題で過半数が相加平均誤答をしている。「驚き度」を見ても,「小」群に違和感を感じている者が多くいる傾向が見られるが有意ではない。比較差を大きくすることによって「足して」平均することへ“アラート”としようとしたが,若干の喚起となる可能性に止まっている。(3)教授-学習の効果:両群とも納得度は高く,事前から事後へ正答率も上昇している。「速さ」問題は10割の正答率である。相加平均誤答も減少しているが,完全に払拭されたと言う程ではない。密度問題で「大」群に2割程度の相加平均誤答が見られている。その意味では,「比較量の差」の問題と併せて改良の余地があると言えよう。