The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA(01-64)

ポスター発表 PA(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PA45] 高校初年次の理解不振を改善する「倫理」教科書のメタテキスト

前提要因による理解終盤での効果の調整

山本博樹1, 織田涼2 (1.立命館大学, 2.立命館大学)

Keywords:理解不振, 高校初年次, 説明

目   的
 高校初年次生の理解不振を改善するために「倫理」教科書の説明文にメタテキスト(標識化)を付加すると,彼らの構造方略の使用傾向が理解過程の終盤において効果を調整することが示された(日心大会, 2015)。構造方略の使用傾向は前提要因(認知発達と語彙発達)が規定するから(山本・織田, 2015),この前提要因の調整効果を検討した。
方   法
材料と参加者:「倫理」教科書より「絶対他力思想」の思想形成過程を記載した説明文を材料とした。高1と大学生の各120人が参加した。犬塚(2002)の作成した構造方略の使用傾向に関する尺度を用いて(7項目),低使用群と高使用群を構成した。詳細は,山本・織田(2014)を参照。
手続き:山本・織田(2014)の通り,文配列課題の体制化過程で生じた段落内修正数と構造同定率を分析した。また,山本・織田(2015)に基づいて,構造方略の前提要因と考えられる認知発達レベルと語彙発達レベルを7段階で評定させた。
結果と考察
1)前提要因と構造方略の使用傾向の関係
 認知発達レベルと語彙発達レベルから潜在変数を推定し,「前提要因」の得点とした。この得点の0未満を下位群,0以上を上位群とした。方略使用傾向の合計値を従属変数とし,前提要因(2:下位・上位)の分散分析を行った結果,前提要因の主効果が有意となった(F(1, 118)=10.69, p < .01)。ここから前提要因が構造方略の使用傾向を規定することが示された。
2)構造同定への効果における調整
 終盤の構造同定率を従属変数として,前提要因×方略使用傾向(2:低群・高群)×標識化(2:無・有)の3要因分散分析を行った結果,2次交互作用に有意傾向が認められた(F(1, 112)=2.82, p < .10)。分けて分析を進めたところ,下位群に有意差はなかった。一方で,Figure 1のように,上位群では標識化によって低使用群の構造同定率が高まらないが,高使用群の構造同定率が高まることが示され,山本・織田(2015)を追認した。
3)段落構成への効果における調整
 構造同定率で効果が認められた前提要因の上位群において,体制化過程の終盤で生じた段落内修正数を従属変数として,方略使用傾向(2)×標識化(2)の2要因分散分析を行った。その結果,Figure 2のように,交互作用に有意傾向が認められた(F(1, 44)=3.65, p < .10)。ここから,標識により低使用群で段落内修正数の増加傾向が認められ,高使用群で減少傾向が認められた。
4)総括
 高校初年次生で前提要因が上位の場合に,構造方略の使用傾向が高ければ終盤になると段落構成を抑制し,説明文に対応するように構造同定を促進させることが示された。しかし,前提要因が上位で構造方略の使用傾向が低い者は終盤でも段落構成を抑制させないために,バラバラのリストとして構造が同定されたと考えられる。理解過程の終盤での構造同定が説明文理解を規定する点を併せると(山本・織田, 2015),メタテキスト(標識化)を付加した説明文を提供すると,高校初年次生の構造方略の使用傾向ばかりでなく前提要因(認知発達や語彙発達)が調整要因となって,最終的な説明文理解を規定すると考えることができる。