The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA(01-64)

ポスター発表 PA(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PA47] パフォーマンス課題を利用した授業改善(Ⅰ)

中学校理科 電流と磁界の単元において試行

荒尾真一1, 小池かおり2 (1.岡山大学, 2.岡山大学教育学部附属中学校)

Keywords:授業改善, パフォーマンス課題, 科学的思考表現

研究の目的
 中学校理科の授業において,科学的思考・表現の能力育成が重視されており,その観点で授業改善に実践者と取り組む中で,単元を通して授業を設計することの有効性が明らかになってきた。しかし,現場は時間的制約等があり,課題がある部分の授業改善を中心に行われる傾向がみられる。
 その取り組みの中で,既習事項を統合的に使わないと解けないパフォーマンス課題(教材を含めて)を位置づける授業改善の方法を提案したところ,育てるべき箇所が顕在化し,実践者が取り組みの価値を感じることができ,単元を通して授業改善をすることが受け入れられ易いことが分かった。そこで,パフォーマンス課題を使って前述した能力を育成する効果的な授業改善の方法を研究することとした。
 明らかにするポイントは次の点である
①授業改善の要因を特定できる条件
②パフォーマンス課題自体の教育的効果
③事前に獲得させておく知識概念の定着度
④新たに課題を設定するための時間の確保
 なお,思考・表現の場が確保でき自律的学習が進むよう,班で取り組ませ,後述2-(5)の形式を原則とする。
研究の方法
(1)実施する調査
 学習終了後2ヶ月の時点で必要な知識・思考を事前調査→パフォーマンス課題を実施→2ヶ月後,事前調査と同じ問題で知識・思考を事後調査。
(2)分析する事項
 事前調査での実態把握および,パフォーマンス課題そのものが生徒に与える教育効果を整理し,その結果から授業改善のポイントを抽出し特定できるか分析する。
(3)実施に当たっての留意点
 ①授業実践者が,学習後に課すパフォーマンス課題の内容を意識して授業を行わないよう,単元の学習が終わってから課題を選定し実施方法も決めた。②難易度は1/2~2/3程度が解けるものとした。③パフォーマンス課題そのものの学習効果を見るため,事前調査問題の解答や解説,課題に取り組ませている間のアドバイスや実験結果のまとめ等について指導者はいっさい行わない。
(4)調査対象
 2ヶ月前に「電流と磁界」を終えた国立中学校3年生5クラスに実施。事後調査等については,7月に行う予定
(5)パフォーマンス課題
 図のように筒の中のソレノイドが見えないようにして,短い釘にアルニコ磁石(極性あり)をつけたものを上から差し込んだ装置,単3乾電池,リード線,方位磁針,実験手順書を渡し,時間をどのクラスも同じにして取り組ませた。
(6)学習形態
 班で実験し結果は個人で記録→個人で中を予想→個人の予想を出し合って班で1つの予想に→中身と予想を照合→各自評価
結果と考察
 事前調査問題(知的側面)の結果,用語や基本的な知識は身に付いているが,電流と磁界の向きや磁石の極については,予想したより応用力が不十分であることが分かった。
 パフォーマンス課題自体の教育効果について2クラス抽出して分析した結果,事前調査で,問題解決に必要な知識や思考方法を持っている生徒が2名以上いる場合88%の班でほぼ全員が最終的に中の構造を正しく予想することができていた。よって,学習の途中では基本の定着は必要だが応用力は不十分な生徒もパフォーマンス課題を取り組ませることで獲得可能が示唆され,時間確保につながると考えられる。授業改善のポイントは調査問題,課題取組中(観察に集中できるから)に特定しやすいとの意見を得た。