[PA49] 女子大学生の進路決定と対人環境の関係(2)
女子大学生の進路決定に影響を及ぼす情緒的/道具的サポート源に関する検討
Keywords:進路決定, ソーシャル・サポート
問 題
就職活動においては,友人(同性/異性)や親しい先輩からの就職関連情報を利用し,大学の先生や就職課からの就職関連情報を重視する(下村・木村,1994)など,身近な人々から提供される道具的サポート(以後,SP)の利用を予測させる結果が得られている。また,就職活動においては限られた時間の中で自分にふさわしい職業を選び,試験や面談による厳しい選抜に臨む必要があり,このようなストレス状況では周囲の人の理解や励ましといった情緒的SPは欠かせないだろう。ただし,家族や友人,先輩などの関係性によってSPの内容に違いがある可能性が指摘されている(下村・木村,1997)。そこで,本研究の目的は,誰から受けるSPが就職活動開始前の学生の進路決定において効果を持つのか検討することである。その際,進路決定の確信度だけでなく,就職活動で起こる予定外の事態に臨機応変に対応する柔軟性についても考慮する。
方 法
<調査対象者>
女子大学生90名を対象。平均年齢20.88歳(SD=0.72)。大学3年次で,調査時期は2016年1月中旬。
<質問項目>1)進路決定に対する意識:風間・山下(2016,日本教育心理学会第58回総会)と同様の尺度を用いた。
2)情緒的/道具的SP源:情緒的SPは,「就職活動中にあなたの選択や取り組みを信頼し,あなたの抱える悩みに共感を示し,あなたを支え励ましてくれる人は何人ですか?」と尋ね,友人,親しい異性,先輩,家族,先生,就職課,社会人という関係性ごとに人数を回答するよう求めた。道具的SPについては,「就職活動で生じた問題や困ったことに対処するための,必要な情報や役に立つ知識を与えてくれる人は何人ですか?」と尋ね,同様に回答を求めた。
結果と考察
表1に各SP源として挙げられた人数に関する記述統計を示す。情緒的/道具的SP源共に友人が最も多く挙げられ,次いで家族,社会人や先生の順となった。
次に,大学生の進路決定(確信度/柔軟性/浮動性)を基準変数とし,SP源として挙げられた総数,7種類の関係ごとのSP割合を説明変数としたステップワイズ法による重回帰分析を実施した。なお,分析は情緒的SP及び道具的SPごとに実施した。
情緒的SP源について,投入された変数と標準偏回帰係数を表2に示す。
解析の結果,確信度の分析における説明率は12.0%で,説明率の検定は1%水準で有意であった(F=5.88,df=2,86)。また,柔軟性の分析における説明率は15.6%で,説明率の検定は1%水準で有意であった(F=8.01,df=2,87)。さらに,浮動性の分析における説明率は20.1%で,説明率の検定は1%水準で有意であった(F=7.21,df=3,86)。結果より,情緒的SPを提供する教員割合が高いほど,進路決定の確信度は高くなり,柔軟性や浮動性は低くなった。また,情緒的SPを提供する社会人割合が高くなるほど,進路決定の確信度は高くなり,就職課の割合が高くなるほど,柔軟性は高くなるが,浮動性は低くなるという傾向が認められた。
道具的SP源について,投入された変数と標準偏回帰係数を表3に示す。
解析の結果,確信度については投入される変数がなかった。柔軟性の分析における説明率は3.8%で,説明率の検定は10%水準で有意傾向にあった(F=3.42,df=1,87)。また,浮動性の分析における説明率は10.1%で,説明率の検定は1%水準で有意であった(F=9.75,df=1,87)。道具的SPを提供する親密な異性割合が高いほど,進路決定の柔軟性や浮動性が低くなることが示唆された。
以上より,大学組織内での学生支援を考える場合,進路決定の確信度を支える教員と,予期せぬ事態への柔軟性を支える就職課を両輪とした情緒的サポート体制が,就職活動前には有効に機能する可能性がある。
(本研究は,H27年度十文字学園女子大学のプロジェクト研究費の助成を受けて実施された)
就職活動においては,友人(同性/異性)や親しい先輩からの就職関連情報を利用し,大学の先生や就職課からの就職関連情報を重視する(下村・木村,1994)など,身近な人々から提供される道具的サポート(以後,SP)の利用を予測させる結果が得られている。また,就職活動においては限られた時間の中で自分にふさわしい職業を選び,試験や面談による厳しい選抜に臨む必要があり,このようなストレス状況では周囲の人の理解や励ましといった情緒的SPは欠かせないだろう。ただし,家族や友人,先輩などの関係性によってSPの内容に違いがある可能性が指摘されている(下村・木村,1997)。そこで,本研究の目的は,誰から受けるSPが就職活動開始前の学生の進路決定において効果を持つのか検討することである。その際,進路決定の確信度だけでなく,就職活動で起こる予定外の事態に臨機応変に対応する柔軟性についても考慮する。
方 法
<調査対象者>
女子大学生90名を対象。平均年齢20.88歳(SD=0.72)。大学3年次で,調査時期は2016年1月中旬。
<質問項目>1)進路決定に対する意識:風間・山下(2016,日本教育心理学会第58回総会)と同様の尺度を用いた。
2)情緒的/道具的SP源:情緒的SPは,「就職活動中にあなたの選択や取り組みを信頼し,あなたの抱える悩みに共感を示し,あなたを支え励ましてくれる人は何人ですか?」と尋ね,友人,親しい異性,先輩,家族,先生,就職課,社会人という関係性ごとに人数を回答するよう求めた。道具的SPについては,「就職活動で生じた問題や困ったことに対処するための,必要な情報や役に立つ知識を与えてくれる人は何人ですか?」と尋ね,同様に回答を求めた。
結果と考察
表1に各SP源として挙げられた人数に関する記述統計を示す。情緒的/道具的SP源共に友人が最も多く挙げられ,次いで家族,社会人や先生の順となった。
次に,大学生の進路決定(確信度/柔軟性/浮動性)を基準変数とし,SP源として挙げられた総数,7種類の関係ごとのSP割合を説明変数としたステップワイズ法による重回帰分析を実施した。なお,分析は情緒的SP及び道具的SPごとに実施した。
情緒的SP源について,投入された変数と標準偏回帰係数を表2に示す。
解析の結果,確信度の分析における説明率は12.0%で,説明率の検定は1%水準で有意であった(F=5.88,df=2,86)。また,柔軟性の分析における説明率は15.6%で,説明率の検定は1%水準で有意であった(F=8.01,df=2,87)。さらに,浮動性の分析における説明率は20.1%で,説明率の検定は1%水準で有意であった(F=7.21,df=3,86)。結果より,情緒的SPを提供する教員割合が高いほど,進路決定の確信度は高くなり,柔軟性や浮動性は低くなった。また,情緒的SPを提供する社会人割合が高くなるほど,進路決定の確信度は高くなり,就職課の割合が高くなるほど,柔軟性は高くなるが,浮動性は低くなるという傾向が認められた。
道具的SP源について,投入された変数と標準偏回帰係数を表3に示す。
解析の結果,確信度については投入される変数がなかった。柔軟性の分析における説明率は3.8%で,説明率の検定は10%水準で有意傾向にあった(F=3.42,df=1,87)。また,浮動性の分析における説明率は10.1%で,説明率の検定は1%水準で有意であった(F=9.75,df=1,87)。道具的SPを提供する親密な異性割合が高いほど,進路決定の柔軟性や浮動性が低くなることが示唆された。
以上より,大学組織内での学生支援を考える場合,進路決定の確信度を支える教員と,予期せぬ事態への柔軟性を支える就職課を両輪とした情緒的サポート体制が,就職活動前には有効に機能する可能性がある。
(本研究は,H27年度十文字学園女子大学のプロジェクト研究費の助成を受けて実施された)