[PA52] 保育者効力感に関する研究
組織を視野に入れた効力感に着目して
Keywords:保育者効力感, 保育経験, 協働性
問題と目的
近年,保育者の専門性や保育の質の向上が重要な課題となっている。本研究では,保育実践の原動力となり,行動の変容につながるものとされている保育者効力感を取り上げた。
ところで,従来扱われてきた保育者効力感は,望ましい保育行為をとることができる信念とされており,保育者個人の自己効力感に焦点を当てたものであった。しかしながら,組織全体の保育の質や専門性を高めていくためには,保育者同士が各々の違いを尊重しながら,相互の信頼関係をつくり出し,組織として高いモチベーションを共有した職員集団となる協働性に着目する必要がある。
そこで本研究では,組織を視野に入れた保育者効力感として,あらたに2つの保育者効力感を取り上げた。自分自身が他の保育者と協働してよりよい保育を行っていくことができるという信念である「協働的保育者効力感」と,集団のメンバー全員で協働してよりよい保育を行っていくことができるという「保育者集団効力感」である。
本研究の目的は,保育者効力感を,個人的保育者効力感,協働的保育者効力感,保育者集団効力感の3つの側面から捉えた上で,保育経験との関係を検討することである。
方 法
調査対象:兵庫県内の幼稚園・保育所・幼保一体化園・認定こども園に勤務する保育者(施設長を除く)297名。回答に大きな不備のない253名を分析対象とした。
調査時期:2014年10月~11月。
手続き:事前に調査協力の承諾を得られた施設及び個人に,質問紙(無記名自記式)の郵送及び直接配布を行った。施設については,同封した個別封筒への投入を依頼し,施設ごとに所定の封筒にまとめてもらうよう求め,回収を行った。
調査内容:個人的保育者効力感尺度(「子どもの発達を見通した援助をすることができると思う」など6項目),協働的保育者効力感尺度(「他の保育者と協力して,クラスや学年などの枠を超えた保育ができると思う」など5項目),保育者集団効力感尺度(「保育者みんなで保育について創意工夫ができると思う」など8項目),いずれも「とてもあてはまる」から「まったくあてはまらない」までの6段階評定。その他に,保育経験年数等の質問を行った。
結果と考察
各尺度に対して因子分析を行ったところ,それぞれ1因子構造と判断でき,いずれの項目も第1因子に高い負荷量を示していたため,該当する項目の平均値を求め,各尺度の得点とした(α係数は,それぞれ.89,.85,.92)。
保育経験年数によって3つのキャリア群(初任者群:0年~5年,中堅群:6年~15年,熟練群:16年以上)に分け比較したところ,「個人的保育者効力感」は,初任者群に比べて中堅群,熟練群で有意に高かった(表1)。初任から中堅にかけての保育経験が保育者個人の効力感を高めていると言える。「協働的保育者効力感」も,初任者群に比べて中堅群,熟練群で有意に高く,保育経験を重ねることで,他の保育者と協働して保育を行っていけるという信念が高まっていくと言える。「保育者集団効力感」はキャリア群による違いは見られなかった。それぞれの保育者が属している集団と関係している可能性もある。
近年,保育者の専門性や保育の質の向上が重要な課題となっている。本研究では,保育実践の原動力となり,行動の変容につながるものとされている保育者効力感を取り上げた。
ところで,従来扱われてきた保育者効力感は,望ましい保育行為をとることができる信念とされており,保育者個人の自己効力感に焦点を当てたものであった。しかしながら,組織全体の保育の質や専門性を高めていくためには,保育者同士が各々の違いを尊重しながら,相互の信頼関係をつくり出し,組織として高いモチベーションを共有した職員集団となる協働性に着目する必要がある。
そこで本研究では,組織を視野に入れた保育者効力感として,あらたに2つの保育者効力感を取り上げた。自分自身が他の保育者と協働してよりよい保育を行っていくことができるという信念である「協働的保育者効力感」と,集団のメンバー全員で協働してよりよい保育を行っていくことができるという「保育者集団効力感」である。
本研究の目的は,保育者効力感を,個人的保育者効力感,協働的保育者効力感,保育者集団効力感の3つの側面から捉えた上で,保育経験との関係を検討することである。
方 法
調査対象:兵庫県内の幼稚園・保育所・幼保一体化園・認定こども園に勤務する保育者(施設長を除く)297名。回答に大きな不備のない253名を分析対象とした。
調査時期:2014年10月~11月。
手続き:事前に調査協力の承諾を得られた施設及び個人に,質問紙(無記名自記式)の郵送及び直接配布を行った。施設については,同封した個別封筒への投入を依頼し,施設ごとに所定の封筒にまとめてもらうよう求め,回収を行った。
調査内容:個人的保育者効力感尺度(「子どもの発達を見通した援助をすることができると思う」など6項目),協働的保育者効力感尺度(「他の保育者と協力して,クラスや学年などの枠を超えた保育ができると思う」など5項目),保育者集団効力感尺度(「保育者みんなで保育について創意工夫ができると思う」など8項目),いずれも「とてもあてはまる」から「まったくあてはまらない」までの6段階評定。その他に,保育経験年数等の質問を行った。
結果と考察
各尺度に対して因子分析を行ったところ,それぞれ1因子構造と判断でき,いずれの項目も第1因子に高い負荷量を示していたため,該当する項目の平均値を求め,各尺度の得点とした(α係数は,それぞれ.89,.85,.92)。
保育経験年数によって3つのキャリア群(初任者群:0年~5年,中堅群:6年~15年,熟練群:16年以上)に分け比較したところ,「個人的保育者効力感」は,初任者群に比べて中堅群,熟練群で有意に高かった(表1)。初任から中堅にかけての保育経験が保育者個人の効力感を高めていると言える。「協働的保育者効力感」も,初任者群に比べて中堅群,熟練群で有意に高く,保育経験を重ねることで,他の保育者と協働して保育を行っていけるという信念が高まっていくと言える。「保育者集団効力感」はキャリア群による違いは見られなかった。それぞれの保育者が属している集団と関係している可能性もある。