The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA(01-64)

ポスター発表 PA(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PA55] デートDV加害信念の歪み尺度の作成

松野真 (昭和学院短期大学)

Keywords:デートDV, 加害者, 予防教育

目   的
 デートDV加害者の教育には,加害者が自分自身の偏った信念を自覚・確認し,修正を加えていくことが重要である。デートDVでは,暴力の双方向性の観点から男性女性ともに加害者となり得る可能性があることから,より包括的な視点から加害者の信念体系を整理する必要がある。デートDV加害者の信念体系の歪みを捉える尺度を作成し,尺度の信頼性及び妥当性について検討する。
方   法
調査対象者:関東・関西・北陸の大学生433名(男性182名,女性251名,平均年齢19.48歳,SD=1.29)を対象に実施した。この内,「付き合い経験がある」と回答した316名(男性129名,女性187名)を分析対象とした。
調査手続き及び実施時期:「若年層におけるパートナーとの付き合いに関する実態と意識の調査」として質問紙を作成し無記名で実施した。調査は,2014年8月から12月に実施した。
質問項目の収集・選定
 DV加害者が持つと考える媒介信念及び中核信念を抽出し,これまでDV加害者プログラムを実施する中で取り上げた信念と併せて75項目をリストアップした。この75項目ついて,DV加害者に関わった専門家5名に依頼し,各項目がどの程度デートDV加害者が持っている信念と思われるかについて5段階評定を求めるとともに,新しい項目についても提案を依頼した。取捨選択の結果,最終的に75項目を選出し,若年層の生活様式やデートDVを想定した内容になるように修正を加えた。
デートDV加害信念の歪み尺度の実施
 各対象者には,75項目(男女共通69項目,男女別の項目6項目)ついて,「どのように思うか」について「すごくそう思う(5点)」から「全くそう思わない(1点)」の5段階評定することを求めた。
デートDV加害頻度質問紙の実施
 松野・新井(2015)で用いたデートDV加害頻度質問紙を実施した。この質問紙は,身体的暴力(3項目),精神的暴力(12項目),性的暴力(3項目),経済的暴力(3項目)の21行為から構成され,選定した21行為に対して5段階評定を求めた。
パートナーコントロール質問紙の実施
 松野・新井(2015)において作成したパートナーコントロール質問紙を実施した。この質問紙は,パートナーを自分の意のままに操作しようとする行為や傾向を測定するものであり,最終的に6項目を採用した。6項目のクロンバックのα係数は.885であり信頼性が確認された。6項目に対して5段階評定を求めた。
結果と考察
デートDV加害信念の歪み尺度の因子構造の検討
 男女共通の信念として選定した69項目の評定値に対して因子分析(主因子法,プロマックス回転)を実施した。特定の因子への負荷量が低い項目(0.4以下)及び複数の因子への負荷量が高い項目(0.4以上)を削除しながら項目を選択し,繰り返し同様の因子分析を実施した。残った項目から加害行為と関連が強い項目を抽出し,再度,同じ条件で繰り返し因子分析を実施したところ,38項目5因子を抽出した。
 第1因子は,自分は絶対的で特別な存在であり,自分に優先権や主導権があることを示していると考え「自己の絶対視」(17項目)と命名した。第2因子は,パートナーに対して過剰な受け入れを期待していると考え「過剰な受容へのとらわれ」(11項目)と命名した。第3因子は,自分の都合に合わせ不条理にパートナーへの攻撃を許容することを示していると考え「偏った攻撃観」(4項目)と命名した。第4因子は,女性主体のジェンダー観と考え「女性本位のジェンダー観」(3項目)と命名した。また,第5因子は,男性主体のジェンダー観と考え「男性本位のジェンダー観」(3項目)と命名した。
信頼性及び妥当性の検討
 5下位尺度の信頼性を検討したところ,クロンバックのα係数は「自己の絶対視」では.934,「過剰な受容へのとらわれ」では.916,「偏った攻撃観」では.796,「女性本位のジェンダー観」では.785,「男性本位のジェンダー観」では.823であり,高い内的一貫性が確認された。
 デートDV加害信念の歪み尺度の妥当性を検討するため,デートDV加害頻度質問紙及びパートナーコントロール質問紙を用いた。5下位尺度の評定値と上記2つの質問紙の評定値には正の関連があることが予測された。各5下位尺度総得点と加害頻度総得点及びパートナーコントロール総得点とは,いずれも1%水準において有意な正の相関が認められ,加害頻度得点及びパートナーコントロール得点との関係において予測は支持された。