[PA58] 高校生のDark Triad(2)
高校生のDTと援助要請との関連
Keywords:高校生, Dark Traiad, 関係志向的援助要請
援助要請行動は,DePaulo(1983)によれば,「個人が問題の解決の必要性があり,もし他者が時間・労力・ある種の資源を費やしてくれるのなら,問題が軽減・解決するようなもので,その必要がある個人が他者に対して直接的に援助を要請する行動」と定義される。また,援助要請は,自律的援助要請と依存的援助要請の所在が指摘されている(Nelson-Le Galletal, 1983; Nadler, 1998)。しかし,日常の相互作用における援助要請行動は必ずしも定義に適っていない意図が含まれる場合がある。太田・阿部(2012)は,個人の援助要請態度には,問題解決以外に他者を操作する意図の関係志向的援助要請が所在することを指摘している。
報告(1)で3因子構造が確認されたDark Triad(以降,DT)の高さは,自己中心的な目的で他者を操作することを予測することから本報告では,援助要請とDTとの関連性を検討する。
方 法
調査方法および調査対象者 報告(1)と同様
質問項目 DT:報告(1)で得られた日本語版Dark Triad Dirty Dozen(DTDD-J;増井他,2015)の因子分析結果により得られた「マキャベリアニズム」,「サイコパシー傾向」,「自己愛傾向」の各因子を下位尺度として用いた。援助要請態度の測定については,「自律的援助要請態度」「関係志向的援助要請態度」「依存的援助要請態度」「援助要請忌避態度」の4因子22項目)から成る太田・阿部(2014)の援助要請態度尺度から各因子における因子負荷量の高い項目13項目を抜粋し用いた。
結果と考察
太田・阿部(2014)援助要請態度尺度より抜粋した13項目の因子分析の結果,因子負荷量,及び解釈可能性から3因子が妥当であると判断し,下位尺度として以下の分析に用いた。
Table 1にDT各因子と援助要請態度各因子との相関を示す。
他者操作的で搾取的な特性(Christie & Geis, 1970)とされるマキャベリアニズムは,他者に援助を求めることに対する忌避的な構えである援助要請忌避態度と他者との心理的距離を忖度しつつ関係性を構築するための援助要請である関係志向的援助要請態度と有意な正の相関と,可能な限り個人で解決を試みた末に援助を求め,今後の問題の予防や解決に役立てようとする自律的援助要請態度と負の有意な相関が認められた。利己性や希薄な感情を代表とする対人的・感情的側面と衝動性のような行動的側面を持つ特性とされる(Hare, 2003)サイコパシー傾向は,自律的援助要請態度とは負の相関を,援助要請忌避態度とは正の相関が認められた。賞賛や注目,地位や名声を求め,他者に対して競争的で攻撃的な特性とされる(Raskin & Hall, 1979)ナルシシズム傾向(=自己愛傾向)は,援助要請忌避態度・関係志向的援助要請態度と各々正の相関が認められた。
DTの各因子基本的性格が援助要請態度の各因子に及ぼす影響を特定するために,DTを独立変数,援助要請を従属変数として,性別,学年,進路希望を統制変数とした重回帰分析を行った結果をFig 1に示す(有意なパスのみを表示)。
マキャベリアニズムは援助要請忌避態度と関係志向性の双方に有意な正の影響を示していることから,援助要請を自己の目的達成の手段として用いていることが示唆されているといえよう。サイコパシーは援助要請忌避に正の影響,自律的援助要請態度に負の影響を示していることから,互恵的な対人関係を築き難いことが示唆されているといえよう。自己愛傾向は,自律的援助要請態度と関係志向的援助要請態度に対して正の影響を示したことから他のDTの特性とは異なり,社会的評価を得られる対人行動を指向していることが示唆されているといえよう。
報告(1)で3因子構造が確認されたDark Triad(以降,DT)の高さは,自己中心的な目的で他者を操作することを予測することから本報告では,援助要請とDTとの関連性を検討する。
方 法
調査方法および調査対象者 報告(1)と同様
質問項目 DT:報告(1)で得られた日本語版Dark Triad Dirty Dozen(DTDD-J;増井他,2015)の因子分析結果により得られた「マキャベリアニズム」,「サイコパシー傾向」,「自己愛傾向」の各因子を下位尺度として用いた。援助要請態度の測定については,「自律的援助要請態度」「関係志向的援助要請態度」「依存的援助要請態度」「援助要請忌避態度」の4因子22項目)から成る太田・阿部(2014)の援助要請態度尺度から各因子における因子負荷量の高い項目13項目を抜粋し用いた。
結果と考察
太田・阿部(2014)援助要請態度尺度より抜粋した13項目の因子分析の結果,因子負荷量,及び解釈可能性から3因子が妥当であると判断し,下位尺度として以下の分析に用いた。
Table 1にDT各因子と援助要請態度各因子との相関を示す。
他者操作的で搾取的な特性(Christie & Geis, 1970)とされるマキャベリアニズムは,他者に援助を求めることに対する忌避的な構えである援助要請忌避態度と他者との心理的距離を忖度しつつ関係性を構築するための援助要請である関係志向的援助要請態度と有意な正の相関と,可能な限り個人で解決を試みた末に援助を求め,今後の問題の予防や解決に役立てようとする自律的援助要請態度と負の有意な相関が認められた。利己性や希薄な感情を代表とする対人的・感情的側面と衝動性のような行動的側面を持つ特性とされる(Hare, 2003)サイコパシー傾向は,自律的援助要請態度とは負の相関を,援助要請忌避態度とは正の相関が認められた。賞賛や注目,地位や名声を求め,他者に対して競争的で攻撃的な特性とされる(Raskin & Hall, 1979)ナルシシズム傾向(=自己愛傾向)は,援助要請忌避態度・関係志向的援助要請態度と各々正の相関が認められた。
DTの各因子基本的性格が援助要請態度の各因子に及ぼす影響を特定するために,DTを独立変数,援助要請を従属変数として,性別,学年,進路希望を統制変数とした重回帰分析を行った結果をFig 1に示す(有意なパスのみを表示)。
マキャベリアニズムは援助要請忌避態度と関係志向性の双方に有意な正の影響を示していることから,援助要請を自己の目的達成の手段として用いていることが示唆されているといえよう。サイコパシーは援助要請忌避に正の影響,自律的援助要請態度に負の影響を示していることから,互恵的な対人関係を築き難いことが示唆されているといえよう。自己愛傾向は,自律的援助要請態度と関係志向的援助要請態度に対して正の影響を示したことから他のDTの特性とは異なり,社会的評価を得られる対人行動を指向していることが示唆されているといえよう。