The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA(65-84)

ポスター発表 PA(65-84)

Sat. Oct 8, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PA65] 衝動性の強い幼児の命を守る子ども用ハーネス

心理的抵抗感と社会的啓発の必要性

水野智美1, 西館有沙2, 西村実穂3, 徳田克己4 (1.筑波大学, 2.富山大学, 3.東京未来大学, 4.筑波大学)

Keywords:子ども用ハーネス, ADHD, 衝動性

はじめに
 衝動性の強い子どもの中には,目の前に自分の興味のある事柄があったり,ふと頭に何かが思い浮かぶと,周囲を見渡すことなく,突然,行動を起こしてしまうことがある。そのため,交通事故や転落事故に遭うことが多い。衝動性の強い子どもを担当する保育者の多くは,子どもを散歩させる際に車との接触にヒヤリとした経験がある(水野ら,2016)。また,保育者が子どもの事故防止に最も効果があると考えていたのは子ども用ハーネス(以下,ハーネス)であった。しかし,世間にはハーネスを使用することへの批判的な意見が強くある。そこで,衝動性の強い子どもの保護者や担当保育者はハーネスをどの程度使用しているのか,また使用することをどう感じているのかについて明らかにしたい。
方   法
1.調査対象者
 衝動性の強い子どもを担当する保育者65名,そのような特性のある幼児を持つ保護者50名
2.調査手続き
 それぞれの調査対象者に対して,個別の半構造化面接を行った。ヒアリング調査は一人につき40分~1時間程度であった。調査時期は,2015年7月~12月であった。
結   果
 ハーネスを使用していた保育者は3%(5名),保護者は24%(12名)であった。使用していた人に,ハーネスを使用する理由を尋ね,主な回答を表1に示した。使用している全員に共通していることは,「事故に遭わないように対応していても,子どもは走り出してしまう」こと,「ハーネスを用いなければ子どもの命を守れない」ことであった。
 しかし,ハーネスを使用することについて,保育者の95%(62名),保護者の86%(43名)が「抵抗がある」と答えた。使用者の中には,子どもにハーネスを使用していた際に,周囲から「子どもをしっかりと見ていない」「子どもをペット扱いしている」などと批判されたり,冷たい視線を向けられたりして,罪悪感を持った者もいた。保育者の中には,「ハーネスに頼ることは,保育者としての技術が未熟であると周囲に思われてしまうのではないか」と感じて,使用することを躊躇している者がいた。
考   察
 衝動性の強い子どもの中には,保育者や保護者がいかに配慮していても,事故を防ぐことが難しいケースがあり,その意味ではハーネスは子どもの命を守るための必要不可欠な道具である。しかし,ハーネスに対する世間の批判的な意見があるために,使用をためらう保育者や保護者がいる。今後,ハーネスがなければ事故の危険がある子どもがいることを広く社会に啓発していく必要がある。