[PA66] 茨城県K市における発達障害理解活動と課題
キーワード:発達障害, 障害理解
はじめに
発達障害傾向のある子どもは幼稚園・保育所,放課後学童クラブ,学校,地域の社会資源(図書館,児童館,書店,商店,公園,医療機関,学習塾,スイミングスクールなど)で地域の大人と接する機会が多い。「子どもを地域で育てる」ことの重要性がこれまでに様々なところで言われてきているが,接することにコツのいる発達障害傾向のある子どもについては「変わった子ども」「困った子ども」として扱われることが多い。
私たちは,茨城県K市(人口約10万人の工業地域を有する市。農業や漁業も盛ん)において,保育者,教員,保護者,一般市民に向けた発達障害理解活動を1年間実施した。本稿では,その活動の概略とその結果として顕在化した課題について報告する。
活動内容
(1)研修会
以下の6回の専門的な研修会(90分)を実施した。研修担当者は大学教員3名(臨床心理士2名,看護師1名),研究所専任相談員1名であった。
・具体的な対応がわかる気になる子の保育
・心の強い子どもを育てる子育ての秘訣
一般市民対象。発達障害傾向のある子どもの二次障害を防ぐ内容を含めた。
・気になる子どもの偏食への対応
・絵カードの具体的な活用方法
・発達障害傾向のある人への対応
・気になる子どもの保護者を支援する方法
(2)個別相談会
6回の研修会のあと,参加者からの個別相談に応じた。保育者・教員・指導員からは,子どもの問題行動(特に衝動的行動,多動)に対する具体的な対応方法,保護者の気づきのための具体的な方法,絵カードの作成と活用法,偏食の原因の見分け方,園内行事への参加のさせ方などであった。保護者からは,医療機関へのかかり方,将来(就学先,職業)のこと,家庭内での問題行動への対応方法であった。一般市民からは,来店(来院)時の配慮の方法が相談内容の中心であった。
(3)巡回相談
保育所16か所,幼稚園7か所,放課後児童クラブ3か所を巡回し,発達障害傾向のある子どもの保育・指導に関するアドバイスを行った。
保育所,幼稚園とも,保育者の知識と技術に大きな差があった。絵カードなどの視覚支援を積極的に行っている園がある一方で,園内の構造化が全くなされておらず,子どもが常にとまどっている園があった。徳田・水野(2016)は発達障害傾向のある子どもが伸びていくのは「運次第である」と述べたが,まさにどの園に入園したかによって子どもの伸びが左右される現実があった。
放課後児童クラブでは自由な活動を広い部屋で行っているので,ADHD傾向のある子どもは常に興奮状態であり,他児とのトラブルや小さなケガが絶えずあった。また,指導者の知識と技術が不十分であるために,叱り続けるなどの不適切な対応が目立った。
(4)ワークショップ
保育者7名,放課後児童クラブ指導員2名,K市職員5名,大学教員3名,研究所相談員1名が参加し,K市の課題について議論した。
課 題
①発達障害傾向のある幼児が在籍している保育所,幼稚園,放課後児童クラブにおける巡回指導,巡回相談の強化
②発達障害傾向のある幼児の保護者,担当している保育者・教員・指導員に対する具体的なテーマに基づいた研修会の継続的実施と即時的相談応需体制の確立
③発達障害傾向のある人が地域社会で「困らないで」生活していくための地域住民の障害理解の促進を目指した継続的活動
発達障害傾向のある子どもは幼稚園・保育所,放課後学童クラブ,学校,地域の社会資源(図書館,児童館,書店,商店,公園,医療機関,学習塾,スイミングスクールなど)で地域の大人と接する機会が多い。「子どもを地域で育てる」ことの重要性がこれまでに様々なところで言われてきているが,接することにコツのいる発達障害傾向のある子どもについては「変わった子ども」「困った子ども」として扱われることが多い。
私たちは,茨城県K市(人口約10万人の工業地域を有する市。農業や漁業も盛ん)において,保育者,教員,保護者,一般市民に向けた発達障害理解活動を1年間実施した。本稿では,その活動の概略とその結果として顕在化した課題について報告する。
活動内容
(1)研修会
以下の6回の専門的な研修会(90分)を実施した。研修担当者は大学教員3名(臨床心理士2名,看護師1名),研究所専任相談員1名であった。
・具体的な対応がわかる気になる子の保育
・心の強い子どもを育てる子育ての秘訣
一般市民対象。発達障害傾向のある子どもの二次障害を防ぐ内容を含めた。
・気になる子どもの偏食への対応
・絵カードの具体的な活用方法
・発達障害傾向のある人への対応
・気になる子どもの保護者を支援する方法
(2)個別相談会
6回の研修会のあと,参加者からの個別相談に応じた。保育者・教員・指導員からは,子どもの問題行動(特に衝動的行動,多動)に対する具体的な対応方法,保護者の気づきのための具体的な方法,絵カードの作成と活用法,偏食の原因の見分け方,園内行事への参加のさせ方などであった。保護者からは,医療機関へのかかり方,将来(就学先,職業)のこと,家庭内での問題行動への対応方法であった。一般市民からは,来店(来院)時の配慮の方法が相談内容の中心であった。
(3)巡回相談
保育所16か所,幼稚園7か所,放課後児童クラブ3か所を巡回し,発達障害傾向のある子どもの保育・指導に関するアドバイスを行った。
保育所,幼稚園とも,保育者の知識と技術に大きな差があった。絵カードなどの視覚支援を積極的に行っている園がある一方で,園内の構造化が全くなされておらず,子どもが常にとまどっている園があった。徳田・水野(2016)は発達障害傾向のある子どもが伸びていくのは「運次第である」と述べたが,まさにどの園に入園したかによって子どもの伸びが左右される現実があった。
放課後児童クラブでは自由な活動を広い部屋で行っているので,ADHD傾向のある子どもは常に興奮状態であり,他児とのトラブルや小さなケガが絶えずあった。また,指導者の知識と技術が不十分であるために,叱り続けるなどの不適切な対応が目立った。
(4)ワークショップ
保育者7名,放課後児童クラブ指導員2名,K市職員5名,大学教員3名,研究所相談員1名が参加し,K市の課題について議論した。
課 題
①発達障害傾向のある幼児が在籍している保育所,幼稚園,放課後児童クラブにおける巡回指導,巡回相談の強化
②発達障害傾向のある幼児の保護者,担当している保育者・教員・指導員に対する具体的なテーマに基づいた研修会の継続的実施と即時的相談応需体制の確立
③発達障害傾向のある人が地域社会で「困らないで」生活していくための地域住民の障害理解の促進を目指した継続的活動