The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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Cancelled

ポスター発表 PA(65-84)

ポスター発表 PA(65-84)

Sat. Oct 8, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PA68] 中学生における社会的絆とレジリエンスとの関連

庄司一子1, 王厳崧2, 中井大介3, 新井雅4, 江角周子5 (1.筑波大学, 2.筑波大学大学院, 3.愛知教育大学, 4.健康科学大学, 5.筑波大学大学院)

Keywords:社会的絆, レジリエンス, 中学生

問   題
 現代社会の家族関係,人と人とのつながりの多様化はますます進んでいる(門脇,1997; 土井,2008)。学校教育においても生徒の最も大きな悩みの一つは対人関係であり(庄司,2011),学校ストレス研究でも友達関係のストレスが様ざまなストレス症状と関連していることが指摘されてきた(岡安ほか,2006)。
 Hirschi(1969, 2002)が提唱した社会的絆の概念は非行の内的抑止因としてとらえられ検討されてきた。一方,Shoji et al.(2010,2012)はグループ体験を通して,グループ参加者の安心・安全が保証され,自己を語る体験が参加者の変容につながることを示した。こうした変容は体験を通して形成される安心できる関係,メンバー相互の結びつきから生じると考えられる。
 そこでShoji et al.(2015,2016)はこうしたメンバー相互の結びつきを,Bowlby(1969)のアタッチメントと対比させ,「社会的絆」ととらえてこれを検討してきた。さらに学校教育において人とうまく関われない生徒,関わりを避ける生徒,様ざまな傷つき体験を持つ生徒,対人トラブルが絶えない生徒などへの支援を通し,人とのつながりが実感でき,他者を信頼し安心できる関係づくり,その効果を検討してきた(庄司ほか, 2015, 2016)。
 本報告では,Hirshi(1969, 2002)に倣って作成した中学生用社会的絆尺度(Shoji, et al., 2016)を用いて再検査を行い,その信頼性を確認すること,さらにレジエンスとどのような関連があるかを検討することを目的とする。
方   法
調査対象者・調査時期
 1回目の調査 関東近郊に住む公立中学校の中学生1年生~3年生873名。2015年11月~12月
 2回目の調査 1回目の調査に協力してくれた中学生の中の中学2年生109名。うち有効回答数88(80.7%)。2回目の調査対象者には社会的絆尺度とレジリエンス尺度も実施した。2016年3月。
調査方法 
 学級担任の指示の下,クラスで一斉に行われた。
調査内容 ①社会的絆尺度 Shoji et al.(2015)の社会的絆尺度30項目で,「まったくあてはまらない」~「とてもよくあてはまる」の5件法。尺度は「教師への愛着」「友人への愛着」「家族への愛着」「巻き込み」「規範観念」の5因子から成る。
 ②レジリエンス尺度 石毛・無藤(2005)が作成した中学生用レジリエンス尺度21項目で,「まったくあてはまらない」~「とてもよくあてはまる」の5件法。尺度は「自己志向性」「関係志向性」「楽観性」の3因子から成る。
 この二つの尺度を用い1回目の調査と2回目の相関,社会的絆とレジリエンスの関連を検討した。
結果と考察
社会的絆の再テスト信頼性
 下位尺度毎に相関を求め再テスト信頼性を算出した。その結果,①教師への愛着r=.63, p<.01, ②友人への愛着r=.66, p<.01, ③家族への愛着r=.87, p<.01, ④巻き込みr=.74, p<.01, ⑤規範観念r=.54, p<.01, であった。
レジリエンス尺度の検討
 レジリエンス尺度を再分析した結果,3因子が抽出された。「困ったことが起きても良い方向にもっていく」などの楽観性と「失敗してもあきらめずにもう一度挑戦する」「決めたら必ず実行する」などの「自己志向性」が一つになり困難にあっても楽観的に考え実行する因子が抽出され「楽観・実行」(7項目)と考えられた(α=.80)。さらに「関係志向性」(5項目,α=.76)の因子,「・・解決するため色々な方法を考える」等「対処の工夫」に関する因子が抽出された(2項目,α=.65)。
社会的絆とレジリエンスとの関連
 社会的絆とレジリエンスとの関連をTable 1に示した。友人への愛着と関係志向性,規範観念と対処の工夫に中程度の正の相関,巻き込み,規範観念と対処・工夫も弱い相関が示された。
 以上の結果から,社会的絆とレジリエンスの関係について,一定の結果が示されたが,さらに対象者を増やしレジリエンスを再度検討すること,縦断的研究により両者の関連をさらに検討することが必要である。

*本研究はJSPS科研費25285182の助成を受けたものです。