The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

Presentation information

ポスター発表 PA(65-84)

ポスター発表 PA(65-84)

Sat. Oct 8, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PA82] 離散変数に基づく尺度信頼性係数の信頼区間

被覆確率を中心として

服部環 (法政大学)

Keywords:尺度信頼性係数, 信頼区間, 被覆確率

 標本で求めたCronbach(1951)のα係数は点推定値に過ぎないので,信頼区間を報告するのが望ましい(高本・服部,2015)。α係数の信頼区間はvan Zyl et al.(2000)の方法,Feldt(1965)の方法,Fisherのz変換を利用する方法などがあり,その被覆確率の正確性が検討されている(Romano et al., 2011; Cui & Li, 2012)。
 一方,α係数に代わり,確認的もしくは探索的因子分析に基づく尺度信頼性係数(Raykov, 1997)やω(ωh)係数(McDonald, 1999)が推奨されているものの(岡田,2011),信頼区間の被覆確率の正確性は報告されていないように思われる。そこで,本稿では,離散変数を用いたシミュレーション実験により,被覆確率の正確性を検討する。
方   法
・項目数 5項目と10項目とした。
・回答者数 100,200,400,800,1600,3200とした。
・データ生成モデルと項目間母相関 (1)同族測定モデル 因子負荷量を.4,.5,.6,.7,.8(10項目条件では各2項目)とした(平均相関係数=.355)。(2)平行測定モデル すべての項目間相関係数を.355とした。項目母分散は等値とした。
・データ生成 任意の値(r)を母相関係数として多変量正規乱数を発生させて離散変数へ変換した場合,標本相関係数に負のバイアスが生じるので,Bradley & Fleisher(1994)に倣い,離散変数の母相関係数をrと等しくした上で,離散変数(2段階,5段階,10段階)を生成した。
・母集団の尺度信頼性係数とα係数 (1)同族測定モデル 同族測定モデルを仮定した尺度信頼性係数は.744,タウ等価測定モデルは.750,平行測定モデルとα係数は.733である。(2)平行測定モデル 尺度信頼性係数とα係数は.733である。
・推定モデル 同族測定モデル,タウ等価測定モデル,平行測定モデルを仮定した。
・因子負荷量と誤差分散の推定および信頼区間の算出 lavaanパッケージ(Rosseel, 2015)を利用して尺度信頼性係数を算出し,信頼度95%と99%の信頼区間を求めた。また,α係数の信頼区間をvan Zyl et al.(2000)の標準誤差を用いる方法,Feldt(1965)の方法,Fisherのz変換を利用する方法で求めた。
・シミュレーション回数 データ生成条件を組み合わせた各条件について,10000回とした。
結果と考察
 ここでは,5段階5項目条件の結果を報告する。
・バイアス 尺度信頼性係数の平均推定値-真値をバイアスとし,同族測定モデルのバイアスをTable 1に示す。平行測定モデルを含めて-.005から.000であるから,推定値のバイアスは小さい。
・被覆確率 信頼度95%の被覆確率をTable 2とTable 3に示す。連続変数の場合(服部, 2016)と同様,理論値にほぼ近い被覆確率となっている。段階値が左右対称に分布する場合,適切な信頼区間を得られると判断できよう。なお,Fisherのz変換を用いたα係数の信頼区間の被覆確率は,理論値よりも一貫してやや大きい。
文   献
服部 環(2016).日本応用心理学会第83回大会発表論文集(予定)
高本真寛・服部 環(2015).心理学評論,58,220-235.