The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA(65-84)

ポスター発表 PA(65-84)

Sat. Oct 8, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PA84] 若者のストレッサー感知と生体内対処反応

精神的健康に向けて

岡林春雄 (山梨大学大学院)

Keywords:生体信号・指尖脈波, ストレッサー感知, 生体内対処(応力)

 現代社会はストレス社会だと言われて久しい。そして,日常生活の中でストレスをできるだけ取り除こうという考え方が一般的になっている。ここで,原点に立ち返ってみたい。人は,自分が精神的に健康に生きていくために周囲の刺激(ストレッサー)を感知する力をもっている。そのストレッサーという外力によって歪み(strain)が生じるのに対して,平衡を維持するように生体内からはたらく応力がストレス(Illingworth, 2009)反応である。そのもとに戻す力に注目したのがCannon(1929)であり,そのメカニズムをホメオスタシスと呼んだ。つまり,人は生きていくためにはストレッサーを感知する必要があり,それに対処する生体内応力・ストレス反応が十分に作用するのかが,その人の精神的な健康には重要になってくる。
 本稿では,生体信号・指尖脈波から若者がどのような場面で多くのストレッサーを感知し,それに対して生体内でどのように対処しているのか,さらには,その一連の反応特徴がどのように精神的健康状態に結びついているのかを検討したい。
方   法
参加者:大学や大学院で生活している若者42人(女性32人,男性10人)。なお,参加者には実験の趣旨を説明し,山梨大学大学院総合研究部研究倫理規定に基づき実施した。
手続き:精神的健康状態を測定する心理検査POMSを個別に実施した後,若者の日頃の生活での典型的な次の各場面において3分間,生体信号・指尖脈波を測定する。
 1.安静場面―コントロール場面として
 2.繰り返し作業場面―加算作業を行う
 3.問題を解く場面―難解な数学の問題を解く
 4.会話場面―友だちと「楽しかったこと」や「悔しかったこと」を話す。
生体信号・指尖脈波測定機器:Lyspect 3.5(カオテック)200Hz
精神的健康状態測定:POMS(Profile of Mood States: McNair, Lorr, & Droppleman, 1992; 横山,2005)
結果と考察
 各場面における若者のストレッサー感知指標(LF/HFパワー比)の平均(標準偏差)ならびに,ストレッサーを感知して生体内での対処の指標となる最大リアプノフ指数(LLE:力学系において軌道が離れていく度合い)の平均(標準偏差)をTable 1に示す。若者は飽きてくるような単純繰り返し作業や難解な問題を解くよりも他者との会話でストレッサーを感知している。そして,会話場面で最も活発に生体内対処がなされている。
 精神的健康状態を測定したPOMS3段階と会話場面でのストレッサー感知ならびに生体内対処(応力)の関係(Pearson r)は,健康群(N=7)でr=-.718,境界群(N=25)でr=-.042,不健康群(N=10)でr=.031であった。健康群のLF/HFは高い値に集中しており,しっかり感知できているのに対して,他の群はストレッサー感知ができていない。LF/HFとLLEの交差相関はどの群も低く(健康.12,境界.14,不健康.14),生体内応力が十分ではない。