The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PB01] 児童期後期における養育態度と親子間葛藤(1)

性差の視点から

平石賢二1, 渡邉賢二2 (1.名古屋大学, 2.皇学館大学)

Keywords:親子間葛藤, 養育態度, 児童期後期

目   的
 児童期後期から青年期前期にかけては,子どもの心身の発達に伴い,親子の権威関係に変化が生じ,親子間葛藤が増大することが指摘されてきた。この親子間葛藤が生じる背景には親の養育態度や子どもの自律性の発達に伴って生じる決定権や裁量権に関する親子間の認知的不一致など,様々な要因が検討されてきた(Smetana, 2011)。
 わが国においては,青年期前期における親子間葛藤は第2反抗期の問題としてよく知られてきた現象ではあるが,親子間葛藤の背景要因とその影響に関する実証的研究は未だ十分に行われていない。そこで本研究においては,親子間葛藤の高まりが始まる児童期後期の子どもとその母親を対象にし,親子間葛藤とその規定要因としての養育態度,親子間葛藤が影響を及ぼす結果としてのストレス反応について調査を行うことにした。本発表は縦断調査の初年度のデータを分析し,性差の有無について検討することを目的とする。
方   法
調査対象者 三重県内の公立小学校14校の小学6年生(男357人,女379人,不明2人)とその母親738組を対象とした。
調査時期 2014年12月
調査手続き 担任教諭から調査用紙を児童に配布し,調査趣旨に同意した子どもと母親が自宅で実施して,終了後担任教諭に提出した。
調査内容 子どもと母親:①養育スキル尺度(渡邉・平石,2014);理解尊重スキル10項目,道徳性スキル6項目(6件法,1~6点),②青年期養育尺度の心理的統制下位尺度(内海,2013);6項目(7件法,1~7点),③親子間葛藤尺度(CBQ parallel version)(Sturge-Apple et al., 2003);22項目(4件法,1~4点)。開発者の許可を得て日本語翻訳版を作成し実施した。この尺度は親用と子ども用に分かれているが同一概念を測定する平行尺度である。④心理的ストレス反応尺度(鈴木ら,1997);抑うつ・不安6項目,不機嫌・怒り6項目,無気力6項目(4件法,0~3点)
結果と考察
各尺度の信頼性係数
 各尺度の信頼性(内的整合性)を検討するためにクロンバックのα係数を算出した(Table 1)。その結果,いずれの尺度においても先行研究と同程度の十分な内的整合性の高さが認められた。
各尺度得点の記述統計量
 続いて,母子それぞれの回答に対する各尺度得点の平均値,標準偏差,レンジを算出した(Table 1)。尺度得点は各項目の評定値の合計得点を項目数で除した項目平均値である。平均値±1SDの指標により天井効果と床効果の有無を検討したところ,母子共に心理的ストレス反応尺度の得点には床効果が認められた。また,親子間葛藤尺度の得点も平均値は低く,逆に養育スキル尺度得点の平均値は高い特徴があり,分布の偏りが認められた。
各尺度得点の性差
 変数間の関連を検討する予備的な段階として,性の要因の影響について検討するために子どもの性別による母子の尺度得点平均値の差に関する検定を行った。ここでは各尺度得点の分布の偏りを考慮し,t検定と共にマンホイットニーのU検定を行った(Table 1)。
 その結果,母親の得点に関しては,養育スキル尺度の2つの下位尺度においてのみ女子の母親の得点が男子の得点よりも高いという有意差または有意傾向の差が認められた。他方で,子どもの尺度得点においては,養育スキル尺度得点に関しては母親と同様の結果が認められたが,それに加えて,心理的統制と親子間葛藤の尺度得点は男子が女子よりも高く,抑うつ・不安の尺度得点は逆に女子の方が男子よりも高いという有意差または有意傾向の差が認められた。

本研究は平成25~27年度日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究C:研究代表者 渡邉賢二,研究課題番号25380899)の助成を受けて行われた。