The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PB09] 幼児と成人のサビタイジング過程の差異

集中提示と分散提示における視線情報の検討

杉村智子 (帝塚山大学)

Keywords:サビタイジング, 幼児

問題と目的
 サビタイジング(subitizing)とは,小さい個数を把握する際に,1つずつカウンティング(counting)するのではなく,知覚的・瞬間的に個数をとらえる方略で,3-5歳児は,3以下の数であればサビタイジングを行っているとされてきた。しかし,従来の研究では,刺激が中央にまとまって提示され,サビタイジングとカウンティングの識別が困難であったこと,数把握の際の言語化や反応時間の増加をカウンティングの指標としていたため,反応時間の増加や言語化を伴わないカウンティングがサビタイジングとみなされていたという問題があった。そこで本研究では,1から4までの小さい数を2つの提示条件(集中・分散)で把握させる際の視線情報を検討することで,幼児と成人のサビタイジングの過程を再検討することを目的とする。
方   法
 参加者 幼児49名(M=5:4,3:6-6:6),成人75名(M=18:11,18:0-23:8)
 材料 縦750×横1000pixelsの白い背景画面に,約10×20 pixelsの飴画像が1から4個描かれた刺激を8パターン用意した。集中条件で使用する4パターンは,飴画像が中心に集中して描かれており,分散条件の4パターンは中心から離れた位置に描かれていた(図1参照)。
 手続き 視線情報の取得には,眼球運動測定装置(Tobii社Eye Tracker T60)と付属のソフトウエア(Tobii Studio ver.2.3)を用いた。解像度1024×768pixelsの17inch液晶モニタに,上述した8種類の刺激が1刺激ずつ提示され,参加者は画面に提示された飴の個数を言うように教示された。モニタと目との距離は約60㎝であった。反応時間は,実験者が参加者の言語反応と同時に反応ボタンを押すことによって測定した。
結果と考察
 飴画像への注視時間 全体の反応時間のうち,飴画像を注視している時間を算出し,年齢2(幼児・成人)×提示条件2(集中・分散)×画像の個数4(1個・2個・3個・4個)の分散分析を行った。その結果,年齢(F(1,96)=176.41,p<.000),提示条件(F(1,96)=173.72,p<.000),画像の個数(F(3,228)=19.37,p<.000)の主効果が有意であり,年齢と画像の個数の交互作用(F(3,228)=15.28,p<.000)が有意であった。すなわち,幼児は4個条件では注視時間が長くなるが,成人は個数にかかわらず,注視時間は一定であった。
 分散条件での注視パターン 分散条件において,幼児は分散して配置されている個々の飴画像を注視しているのに対して,成人は飴画像を注視していない傾向があった。この点について明らかにするために,刺激の種類ごとに,飴画像への注視時間が0である者の人数が年齢によって異なるかどうかを検討するためにカイ二乗検定を行った(表1)。その結果,すべての刺激において成人の方が注視時間が0である者の割合が多かった(1個刺激から順に,χ2=11.24,32.36,24.79,24.94,df=1,p<.000)。
 以上の結果から,成人は1から4の把握に要する時間に差はなく,分散提示の際には個々の飴画像を注視することなしに,瞬間的に個数を捉えていることが明らかになった。これに対して幼児は,1や2の小さな数に対しても,分散提示の際に飴画像を注視しており,瞬時のカウンティングを行っていることが示唆された。