日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

2016年10月8日(土) 13:00 〜 15:00 展示場 (1階展示場)

[PB19] 児童の積極的授業参加に関する研究(27)

家族との関係性の影響

安藤史高1, 布施光代2, 小平英志3 (1.岐阜聖徳学園大学, 2.明星大学, 3.日本福祉大学)

キーワード:積極的授業参加行動, 家族関係, 児童

問題・目的
 児童の積極的授業参加行動を検討してきたこれまでの研究から,積極的授業参加行動とは「注視・傾聴」,「挙手・発言」,「準備・宿題」の3つにまとめられ,児童の動機づけやパーソナリティ,教師の指導スタイルや学級の雰囲気など,さまざまな要因からの影響が明らかとなっている。
 これらに加え,布施ら(2015)では教師に対するインタビューを分析し,積極的授業参加行動の規定因として,家庭の影響についても言及している。しかし,積極的授業参加行動に対する家庭の影響については,検証されていない。そこで本研究では,児童と家族との関係性や家庭での過ごし方が積極的授業参加行動に及ぼす影響について検討を行う。
方   法
調査対象者:東海地方の公立小学校3校の3年生~6年生997名(3年生:男児99名,女児114名,4年生:男児117名,女児136名,5年生:男児136名,女児137名,6年生:男児132名,女児125名,不明1名)を対象に調査を実施した。
調査内容:(1) 積極的授業参加行動(23項目,4件法)安藤ら(2009)の授業に対する積極的授業参加行動を尋ねる質問項目から項目を整理し,23項目とした。「注視・傾聴」「挙手・発言」「準備・宿題」の3下位尺度から構成された。
 (2) 家族関係(10項目,4件法) 平田・比嘉(2014)の「小学生版家族満足度尺度」を参考に,家族との関係性や過ごし方に関する項目を作成し,家族と一緒にする活動がどの程度あるかを尋ねた。
 調査では,他に家族構成・性格特性についての質問も実施したが,本研究では分析対象としない。
手続き:クラス毎に担任教師が調査用紙を配布し,一斉に回答を求めた。
調査時期:2016年2月~3月。
結果と考察
尺度構成 積極的授業参加行動尺度は先行研究に従って下位尺度を構成した。α係数は,「注視・傾聴」が .87,「挙手・発言」が .76,「準備・宿題」が .69であった。
家族関係尺度に対しては,「私は家族といっしょに勉強や宿題をすることが」を除いた9項目で因子分析(主因子法,promax回転)を行った。そして,『話をする』『相談する』といった「心理的結びつき」と『出かける』『食事をする』のような「共行動」の2つの因子を抽出し,尺度得点を算出した(各4項目)。α係数は,ともに .70であった。
家族関係の影響の検討 家族との関係性が積極的授業参加行動におよぼす影響を検討するために,「心理的結びつき」「共行動」「一緒に勉強・宿題(1項目)」から3つの積極的授業参加行動へのパスを仮定したモデルによるパス解析を実施した(Fig. 1)。
 その結果,「心理的結びつき」からの正のパスが有意であったが,「共行動」「一緒に勉強・宿題」からのパスは有意とならなかった。児童の積極的授業参加行動への影響という観点からは,単に一緒に活動するというだけでは促進的な効果は見られず,家族との心理的な結びつきを持った関係性が必要であると考えられる。
※本研究はJSPS 科研費【課題番号24530838】の助成を受けた。