[PB26] 保育系大学生の読書の傾向について
「絵本関与」の観点を加えて
キーワード:保育者養成, 読書, 絵本の読み聞かせ
目 的
平山(2008)は大学生の4つの読書動機(娯楽休養,錬磨形成,言語技能,影響触発)と2つの読書時間帯(ゆとり時間,すき間時間)を見出し,平山(2015a)はそれを確認した。また,平山(2015b)は保育系学生(女子),非保育系学生(女子),非保育系学生(男子)の比較を行い,保育系学生(女子)の影響触発読書動機が高いことを示した。
本研究では,上記の読書動機と読書時間帯の知見を活用し,さらに絵本関与の観点を加えることによって,保育系大学生の読書の傾向を把握する。
方 法
[調査時期]2015年6~7月[調査対象]保育系大学生433名※全て女性[質問紙]回答者が数値を書き込む「数値記入項目」(9項目),数値を6段階評定する「数値評定項目」(52項目)。[調査手続]「このアンケートは『読書』に関するものです。教育や研究にとって非常に重要な調査です。回答結果は全て数値化され,統計的処理をしますので,回答者が特定されることはありません。また,この結果は学会発表や報告書,あるいは論文にて公表し,教育や研究に役立てる予定です。強制的な調査ではありません。ぜひ回答をしていただき,ご提出いただければ幸いです。」と教示した。
結 果
[分析対象]回収された質問紙のうち,欠損値を含むもの,回答指示にそっていないものを除くと409名であった。[因子分析]絵本関与を問う16項目を対象に因子分析を行った。因子抽出法は重み付けのない最小2乗法,回転法はプロマックス回転を用いた。固有値や項目の意味内容を踏まえ,3因子が抽出された。<第1因子(絵本志向)〉C03:私は絵本をもっと読みたい。C04:私は絵本についてもっと勉強がしたい。C02:私は絵本が大好きである。C08:私は絵本の読み聞かせについてもっと勉強がしたい。<第2因子(絵本経験)〉C10:私は子どものころ,よく絵本を読んでいた。C11:私が子どものころ,よく絵本の読み聞かせをしてもらった。C12:私には何回もくりかえし読んでいるお気に入りの絵本がある。C13:私はたくさんの絵本を持っている。<第3因子(読み聞かせ志向)〉C09:私は絵本の読み聞かせを子どもたちにするのが上手である。C06:私は絵本の読み聞かせが大好きである。C05:私は絵本の読み聞かせについてくわしい。C07:私は絵本の読み聞かせを子どもたちにたくさんしたい。[質問項目への評定値の合算(合計得点化)]絵本関与の3因子,読書動機の4因子,読書時間帯の2因子の各因子に含まれる質問項目の評定値を足し上げた。※読書動機と読書時間帯の各因子に含まれる質問項目は平山(2015a)に表示されている。[t検定の実施]<学年差>各合計得点を大学2年生(200名)と4年生(209名)で比較した。その結果,絵本志向得点,読み聞かせ志向得点,錬磨形成読書動機得点において差が見られた。<読書の有無の差>各合計得点を,月間読書冊数が0冊の読書「無し」群(186名)と1冊以上の読書「有り」群(223名)で比較した。その結果,読み聞かせ志向得点を除いて,有意な差が見られた。表1に主な結果を抜粋して表示した。
考 察
2年生と4年生の間で,読み聞かせ志向得点がやや大きく伸びた。保育者になるための実習体験やそれに伴う学習が影響しているのであろう。
読書の有無において,読み聞かせ志向得点に差が出なかったことは,日常的に「本を読む」ことと,「絵本の読み聞かせ」をしようとすることの間に,強いつながりがないことを示している。また,絵本経験得点において,小さいながら差が出ていることから,やはり,読書をしている学生は,読書をしていない学生よりも,絵本に関する経験を多くしているようである。子ども時代の絵本接触の意味がここに示唆されているようである。
文 献
平山祐一郎 (2008). 大学生の読書状況に関する教育心理学的考察 野間教育研究所
平山祐一郎 (2015a). 大学生の読書の変化 ―2006年調査と2012年調査の比較より― 読書科学,56(2),55‐64.
平山祐一郎 (2015b). 保育系大学生の読書に関する分析 ―2012年大学生読書調査結果から見出される読書の傾向について― 日本心理学会第79回大会発表論文集,1112.
平山(2008)は大学生の4つの読書動機(娯楽休養,錬磨形成,言語技能,影響触発)と2つの読書時間帯(ゆとり時間,すき間時間)を見出し,平山(2015a)はそれを確認した。また,平山(2015b)は保育系学生(女子),非保育系学生(女子),非保育系学生(男子)の比較を行い,保育系学生(女子)の影響触発読書動機が高いことを示した。
本研究では,上記の読書動機と読書時間帯の知見を活用し,さらに絵本関与の観点を加えることによって,保育系大学生の読書の傾向を把握する。
方 法
[調査時期]2015年6~7月[調査対象]保育系大学生433名※全て女性[質問紙]回答者が数値を書き込む「数値記入項目」(9項目),数値を6段階評定する「数値評定項目」(52項目)。[調査手続]「このアンケートは『読書』に関するものです。教育や研究にとって非常に重要な調査です。回答結果は全て数値化され,統計的処理をしますので,回答者が特定されることはありません。また,この結果は学会発表や報告書,あるいは論文にて公表し,教育や研究に役立てる予定です。強制的な調査ではありません。ぜひ回答をしていただき,ご提出いただければ幸いです。」と教示した。
結 果
[分析対象]回収された質問紙のうち,欠損値を含むもの,回答指示にそっていないものを除くと409名であった。[因子分析]絵本関与を問う16項目を対象に因子分析を行った。因子抽出法は重み付けのない最小2乗法,回転法はプロマックス回転を用いた。固有値や項目の意味内容を踏まえ,3因子が抽出された。<第1因子(絵本志向)〉C03:私は絵本をもっと読みたい。C04:私は絵本についてもっと勉強がしたい。C02:私は絵本が大好きである。C08:私は絵本の読み聞かせについてもっと勉強がしたい。<第2因子(絵本経験)〉C10:私は子どものころ,よく絵本を読んでいた。C11:私が子どものころ,よく絵本の読み聞かせをしてもらった。C12:私には何回もくりかえし読んでいるお気に入りの絵本がある。C13:私はたくさんの絵本を持っている。<第3因子(読み聞かせ志向)〉C09:私は絵本の読み聞かせを子どもたちにするのが上手である。C06:私は絵本の読み聞かせが大好きである。C05:私は絵本の読み聞かせについてくわしい。C07:私は絵本の読み聞かせを子どもたちにたくさんしたい。[質問項目への評定値の合算(合計得点化)]絵本関与の3因子,読書動機の4因子,読書時間帯の2因子の各因子に含まれる質問項目の評定値を足し上げた。※読書動機と読書時間帯の各因子に含まれる質問項目は平山(2015a)に表示されている。[t検定の実施]<学年差>各合計得点を大学2年生(200名)と4年生(209名)で比較した。その結果,絵本志向得点,読み聞かせ志向得点,錬磨形成読書動機得点において差が見られた。<読書の有無の差>各合計得点を,月間読書冊数が0冊の読書「無し」群(186名)と1冊以上の読書「有り」群(223名)で比較した。その結果,読み聞かせ志向得点を除いて,有意な差が見られた。表1に主な結果を抜粋して表示した。
考 察
2年生と4年生の間で,読み聞かせ志向得点がやや大きく伸びた。保育者になるための実習体験やそれに伴う学習が影響しているのであろう。
読書の有無において,読み聞かせ志向得点に差が出なかったことは,日常的に「本を読む」ことと,「絵本の読み聞かせ」をしようとすることの間に,強いつながりがないことを示している。また,絵本経験得点において,小さいながら差が出ていることから,やはり,読書をしている学生は,読書をしていない学生よりも,絵本に関する経験を多くしているようである。子ども時代の絵本接触の意味がここに示唆されているようである。
文 献
平山祐一郎 (2008). 大学生の読書状況に関する教育心理学的考察 野間教育研究所
平山祐一郎 (2015a). 大学生の読書の変化 ―2006年調査と2012年調査の比較より― 読書科学,56(2),55‐64.
平山祐一郎 (2015b). 保育系大学生の読書に関する分析 ―2012年大学生読書調査結果から見出される読書の傾向について― 日本心理学会第79回大会発表論文集,1112.