[PB30] 乳幼児期からの生涯発達過程認知について
幼児教育・保育と各年齢群における発達過程の認知
Keywords:生涯発達, 多軸同心円スケール, 認知
はじめに
奥田(2015)は,多軸同心円スケールを用いて,青年群,高齢者群などの年齢の異なる群における生涯発達過程に関する認知の差異などについて検討した。しかし,多軸同心円スケールを用いた研究は限られており,不明な点も多く残されていた。
このため,本研究では,青年群,40代群,50代群,高齢者群において,多軸同心円スケールを用いて,6つの発達関連項目の認知に関する評定を求め,これらの4群の結果を比較することとした。なお,本研究では,これらの結果のうち幸福評定に関する結果を中心に示すこととし,他の結果については,別に報告することとする。
方 法
研究参加者:研究参加者は,合計200人であった。このうち50人は,青年群(幼児教育・保育を学ぶ学生を含む大学生,18歳~22歳)で,50人は40代群(40~49歳),50人は50代群(50~59歳),50人は高齢者群(65歳~79歳)であった。全ての研究参加者に対し,本研究の目的,倫理的配慮,プライバシーの保護方針などについて説明し,参加の同意を得た。
多軸同心円スケール:本研究で用いた多軸同心円スケールは,6つの同心円が描かれ,各同心円に内側から1,0.8,0.6,0.4,0.2,0と表示されたものであった。同心円スケール上には,0度の位置から12の軸が均等に配置されており,各軸の外側には,0度の軸から0歳,5歳,10歳,20歳,30歳,40歳,50歳,60歳,70歳,80歳,90歳,100歳の年齢が,右回りに表示されていた。
評定項目:多軸同心円スケールを用いて各評定対象年齢の自分が,“現在の自分に近い自分”“生活に満足している自分”,“幸福な自分”,“健康に自信を持っている自分”,“希望をもっている自分”,“意欲的な自分”に,あてはまる・近いと思う程度について評定を求めた。以下,各評定項目に関する評定を,現在近さ評定,満足評定,幸福評定,健康評定,希望評定,意欲評定とする。
結果および考察
図1に,各群の各評定対象年齢における幸福評定の評定平均値を示した。年齢群×評定項目×年齢の3元配置分散分析を行った。その結果,評定項目,年齢の主効果,年齢群×評定項目,年齢群×年齢,評定項目×年齢,年齢群×評定項目×年齢の交互作用は,有意であった(p<0.01)。また,幸福評定における年齢群×年齢の単純交互作用も有意であり,評定対象年齢による評定平均値の変化のパターンが,年齢群間で有意に異なることが示された(p<0.01)。
幸福評定の評定平均値の最高値は,青年群では0歳で示された。40代群,50代群では20歳,0歳で評定平均値が高くなった。高齢者群では,幸福評定の評定平均の最高値は70歳で示され,40歳~90歳の評定平均値は,4群の中で高齢者群が最も高かった。発達の初期(0~10歳)においては,高齢者群の幸福評定の評定平均値は,青年群,40代群,50代群より有意に低かった(p<0.05)。
本研究の結果,幼児教育・保育を学ぶ学生を含む青年群では,発達の最初期における幸福度が,最も高く,年齢が高くなると低下すると認知している人が多いことが示唆された。一方,高齢者群では,自分自身の年齢に近い年齢の幸福評定の評定平均値が高かった。このような各群間の発達過程認知の差異は,各群における乳幼児に関する認知,多様な子どもの特性の理解や,必ずしも幸福な状態にあるとは限らない子どもの状況の理解などにも,影響を与える可能性が考えられよう。
奥田(2015)は,多軸同心円スケールを用いて,青年群,高齢者群などの年齢の異なる群における生涯発達過程に関する認知の差異などについて検討した。しかし,多軸同心円スケールを用いた研究は限られており,不明な点も多く残されていた。
このため,本研究では,青年群,40代群,50代群,高齢者群において,多軸同心円スケールを用いて,6つの発達関連項目の認知に関する評定を求め,これらの4群の結果を比較することとした。なお,本研究では,これらの結果のうち幸福評定に関する結果を中心に示すこととし,他の結果については,別に報告することとする。
方 法
研究参加者:研究参加者は,合計200人であった。このうち50人は,青年群(幼児教育・保育を学ぶ学生を含む大学生,18歳~22歳)で,50人は40代群(40~49歳),50人は50代群(50~59歳),50人は高齢者群(65歳~79歳)であった。全ての研究参加者に対し,本研究の目的,倫理的配慮,プライバシーの保護方針などについて説明し,参加の同意を得た。
多軸同心円スケール:本研究で用いた多軸同心円スケールは,6つの同心円が描かれ,各同心円に内側から1,0.8,0.6,0.4,0.2,0と表示されたものであった。同心円スケール上には,0度の位置から12の軸が均等に配置されており,各軸の外側には,0度の軸から0歳,5歳,10歳,20歳,30歳,40歳,50歳,60歳,70歳,80歳,90歳,100歳の年齢が,右回りに表示されていた。
評定項目:多軸同心円スケールを用いて各評定対象年齢の自分が,“現在の自分に近い自分”“生活に満足している自分”,“幸福な自分”,“健康に自信を持っている自分”,“希望をもっている自分”,“意欲的な自分”に,あてはまる・近いと思う程度について評定を求めた。以下,各評定項目に関する評定を,現在近さ評定,満足評定,幸福評定,健康評定,希望評定,意欲評定とする。
結果および考察
図1に,各群の各評定対象年齢における幸福評定の評定平均値を示した。年齢群×評定項目×年齢の3元配置分散分析を行った。その結果,評定項目,年齢の主効果,年齢群×評定項目,年齢群×年齢,評定項目×年齢,年齢群×評定項目×年齢の交互作用は,有意であった(p<0.01)。また,幸福評定における年齢群×年齢の単純交互作用も有意であり,評定対象年齢による評定平均値の変化のパターンが,年齢群間で有意に異なることが示された(p<0.01)。
幸福評定の評定平均値の最高値は,青年群では0歳で示された。40代群,50代群では20歳,0歳で評定平均値が高くなった。高齢者群では,幸福評定の評定平均の最高値は70歳で示され,40歳~90歳の評定平均値は,4群の中で高齢者群が最も高かった。発達の初期(0~10歳)においては,高齢者群の幸福評定の評定平均値は,青年群,40代群,50代群より有意に低かった(p<0.05)。
本研究の結果,幼児教育・保育を学ぶ学生を含む青年群では,発達の最初期における幸福度が,最も高く,年齢が高くなると低下すると認知している人が多いことが示唆された。一方,高齢者群では,自分自身の年齢に近い年齢の幸福評定の評定平均値が高かった。このような各群間の発達過程認知の差異は,各群における乳幼児に関する認知,多様な子どもの特性の理解や,必ずしも幸福な状態にあるとは限らない子どもの状況の理解などにも,影響を与える可能性が考えられよう。