[PB51] 他者志向的達成動機と互恵意識,共感的感情の関係と構造
Keywords:他者志向的動機, 互恵性, 共感性
目 的
他者志向的達成動機は,他者の期待に応えようとして,あるいは応援やサポートに対する恩返しとして,課題達成に努力する動機づけである。他者志向的に動機づけられている者は,達成に対する自己志向的な動機と他者志向的な動機を対立させず統合して捉える傾向がある。本研究では自己志向性と他者志向性の統合に関連すると考えられる互恵的な対人意識および共感的感情と,他者志向的達成動機づけの関連を探索的に検討する。
方 法
研究参加者 二度の調査に回答した大学生93名(男性66名;女性27名)
質問紙 (1)自己・他者志向的達成動機への態度尺度(伊藤,2012)25項目4件法;自己志向的動機の重視,他者志向的動機の重視,他者志向的動機への負担感,他者志向的動機の利己性の認知,自己・他者志向的動機の統合の5つの下位尺度からなる。
(2)互恵的対人意識尺度(田中・高木,2011)30項目7件法;互恵意識,損得意識,返礼意識の3つの下位尺度からなる。
(3)共感的感情反応尺度(櫻井ら,2011)5件法;ポジティブ感情への好感,ネガティブな感情の共有,ネガティブな感情への同情の3つの下位尺度からなる。
手続き (1)を2015年11月,(2)と(3)を2016年1月に授業時間の一部を用いて集団状況で実施した。
結果と考察
各尺度の下位尺度ごとに得点を算出した。達成動機態度尺度の他者重視(.62),および負担感(.53)以外のα係数は.70を超えていた。また動機づけ尺度の利己性認知(t=-2.61,p<.05;男性2.7女性3.1),対人意識尺度の損得意識(t=2.01,p<.05;男性3.7女性3.2),共感尺度のネガティブな感情の共有(t=-2.49,p<.05;男性3.0女性3.4)において性差が認められた。
達成動機態度尺度と対人意識尺度・共感尺度との相関(Table 1)では,自己・他者志向的動機の統合が互恵意識,ポジティブな感情への好感・共有と高い正の相関が認められ,ネガティブな感情への同情とも正の相関が認められた。他者重視もネガティブな感情への同情と正の相関が認められたが,ポジティブな感情への好感・共有との相関は小さかった。この他に自己重視が互恵意識と正の相関,損得意識と負の相関が認められ,共感の各下位尺度とは負の弱い相関が認められた。また対人意識尺度と共感尺度の相関では,互恵意識とポジティブな感情への好感・共有の間に高い正の相関(.74)が認められたほか,互恵意識・返礼意識と共感の3つの下位尺度間に.39~.43の正の相関が認められた。
11の下位尺度の間の関係を検討するための,これらの下位尺度得点について最尤法プロマックス回転による探索的因子分析を行った。固有値の減衰状況に基づいて3因子解を採用した(Table 2)。
第1因子は損得意識を除く対人意識尺度,共感尺度の下位尺度に負荷量が高く,他者や関係性への関心と解釈できる。第2因子は達成動機への態度の下位尺度に負荷量が高く,他者志向的達成動機と解釈できる。第3因子はポジティブ感情への好感・共有,互恵意識,自己・他者志向的動機の統合に正の高い負荷量をもっていた。この因子は損得意識やネガティブ感情の共有や同情に負の負荷量をもつことから,自己と他者の融合した関係性やあるいは対人関係からポジティブな機能を引き出す能力を反映していると考えることができるかもしれない。
他者志向的達成動機は,他者の期待に応えようとして,あるいは応援やサポートに対する恩返しとして,課題達成に努力する動機づけである。他者志向的に動機づけられている者は,達成に対する自己志向的な動機と他者志向的な動機を対立させず統合して捉える傾向がある。本研究では自己志向性と他者志向性の統合に関連すると考えられる互恵的な対人意識および共感的感情と,他者志向的達成動機づけの関連を探索的に検討する。
方 法
研究参加者 二度の調査に回答した大学生93名(男性66名;女性27名)
質問紙 (1)自己・他者志向的達成動機への態度尺度(伊藤,2012)25項目4件法;自己志向的動機の重視,他者志向的動機の重視,他者志向的動機への負担感,他者志向的動機の利己性の認知,自己・他者志向的動機の統合の5つの下位尺度からなる。
(2)互恵的対人意識尺度(田中・高木,2011)30項目7件法;互恵意識,損得意識,返礼意識の3つの下位尺度からなる。
(3)共感的感情反応尺度(櫻井ら,2011)5件法;ポジティブ感情への好感,ネガティブな感情の共有,ネガティブな感情への同情の3つの下位尺度からなる。
手続き (1)を2015年11月,(2)と(3)を2016年1月に授業時間の一部を用いて集団状況で実施した。
結果と考察
各尺度の下位尺度ごとに得点を算出した。達成動機態度尺度の他者重視(.62),および負担感(.53)以外のα係数は.70を超えていた。また動機づけ尺度の利己性認知(t=-2.61,p<.05;男性2.7女性3.1),対人意識尺度の損得意識(t=2.01,p<.05;男性3.7女性3.2),共感尺度のネガティブな感情の共有(t=-2.49,p<.05;男性3.0女性3.4)において性差が認められた。
達成動機態度尺度と対人意識尺度・共感尺度との相関(Table 1)では,自己・他者志向的動機の統合が互恵意識,ポジティブな感情への好感・共有と高い正の相関が認められ,ネガティブな感情への同情とも正の相関が認められた。他者重視もネガティブな感情への同情と正の相関が認められたが,ポジティブな感情への好感・共有との相関は小さかった。この他に自己重視が互恵意識と正の相関,損得意識と負の相関が認められ,共感の各下位尺度とは負の弱い相関が認められた。また対人意識尺度と共感尺度の相関では,互恵意識とポジティブな感情への好感・共有の間に高い正の相関(.74)が認められたほか,互恵意識・返礼意識と共感の3つの下位尺度間に.39~.43の正の相関が認められた。
11の下位尺度の間の関係を検討するための,これらの下位尺度得点について最尤法プロマックス回転による探索的因子分析を行った。固有値の減衰状況に基づいて3因子解を採用した(Table 2)。
第1因子は損得意識を除く対人意識尺度,共感尺度の下位尺度に負荷量が高く,他者や関係性への関心と解釈できる。第2因子は達成動機への態度の下位尺度に負荷量が高く,他者志向的達成動機と解釈できる。第3因子はポジティブ感情への好感・共有,互恵意識,自己・他者志向的動機の統合に正の高い負荷量をもっていた。この因子は損得意識やネガティブ感情の共有や同情に負の負荷量をもつことから,自己と他者の融合した関係性やあるいは対人関係からポジティブな機能を引き出す能力を反映していると考えることができるかもしれない。