The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB(65-87)

ポスター発表 PB(65-87)

Sat. Oct 8, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PB67] 漢字に親しむアプリ「かんじダス」の開発(4)

漢字テストの成績によるアプリ使用感の違い

関口洋美1, 阿子島茂美2 (1.大分県立芸術文化短期大学, 2.十文字学園女子大学)

Keywords:かんじダス, 漢字学習, 発達性読み書き障がい

目   的
 「漢字に親しむアプリ『かんじダス』(3)」では,追加した「漢字パズル」について,小学校2年生を対象に調査し,その使用感を検討した結果を報告した。本報告では,「漢字テスト」の成績別にアプリ使用感の違いがあるかに着目し,分析した結果を報告する。
方   法
 「漢字パズル」の体験者・調査者・調査実施日・手続き・質問紙は,「漢字に親しむアプリ『かんじダス』(3)」と同じであった。「漢字テスト」は2年生で学習する160字の書き取りテストであった。
結果と考察
 漢字テストの正答数が157文字以上を成績上位群(9人),100文字前後からそれ以下を成績下位群(7人),その中間グループを成績中位群(15人)とした。この3群に対して,アプリ全体の感想を尋ねた4項目のそれぞれに1要因分散分析を行った。その結果は表1のとおりである。有意差が認められた“ゲームに出てきた漢字は難しかったですか?”に多重比較(Bonferroni)を行った結果,下位群と中位群の間に有意な差が(p < .05),下位群と上位群の間に有意な傾向(p < .10)が認められ,いずれも下位群のほうが平均値が高く,難しかったと評定した。
 次に,漢字テストの成績別に,アプリ操作中の特記事項やメモ欄などに記録された記述から,操作時の行動の特徴をみた。操作前半において,下位群の児童に,「(ゲームの)説明時,そわそわしていた」「話が終わる前に動かしていた」「(漢字が)バラバラになる前に動かしていた」など,指示や説明を聞かずに操作を始める児童が2人(28.6%)みられた。このような記述は,中位群にも2人(13.3%)見受けられた。上位群では皆無であった。
 また,下位群においては操作前半から「他の班をチラ見」「他を気にしていた」など他者を気にする記述があった。こうした記述は,中・上位群では,8試行目以降から現れた。中・上位群では中盤以降飽きた児童がいた可能性が考えられる。実際の「漢字パズル」では,4文字分を1試行にしているので,飽きは生じにくいと考えられる。
 ゲームを楽しんでいる様子については,上位群において9人中4人(44.4%)に,「笑顔」「やったー!」「おもしろそうに」といった楽しみながら操作している記述がみられた。中位群では2人(13.3%),下位群では2人(22.2%)に楽しんでいるような記述があった。観察者の主観も関係しているが,記述上では上位群のほうがゲームを楽しんでいたと思われる。
 次に,“どうしたらもっとやりたくなりますか?”の質問に対し,下位群では,「難しくしてほしい」が2人,「漢字を増やしてほしい」が2人,聞き方を工夫してほしい」が1人と,ゲームをもっと高度にしてほしいという内容が多かった。一方上位群では,「音を出してほしい」が2人,「漢字の分かれるところをもっとみつけてほしい」が1人,「間違いの部分も入れてほしい」が1人,「かけ算とかの算数(もゲームにしてほしい)」が1人であった。下位群の児童たちの多くがゲームの高度化を望んだのは,本パズルによって普段の漢字学習よりも達成感が得られたことで,より難しいものにチャレンジしたいという意欲に繋がった結果ではないかと考えられる。
 「かんじダス」は,発達性読み書き障害の子どもたちの漢字学習を支援する目的から出発したアプリである。本調査で成績下位群の子どもたちから漢字学習への意欲を引き出せたことは,発達性読み書き障害の子どもたちの学習支援につながる可能性を示唆するものと考えられる。
 『漢字に親しむアプリ「かんじダス」の開発(3)(4)』は,学術助成基金基盤研究(25381321),十文字学園女子大学プロジェクト研究費の助成を受けたものである。