The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB(65-87)

ポスター発表 PB(65-87)

Sat. Oct 8, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PB74] 小規模校における継続的な予防的介入の効果

対人関係ゲームを用いた小規模小中学校における実践

高橋淳一郎 (日本文理大学)

Keywords:予防的介入, 対人関係ゲーム, 小規模小中学校

問題と目的
 少子化が進む中で,地方には多くの小規模校が存在する。これらの学校は地域コミュニティの核として位置づけられていることが多く,その地域の活力の源となっている。一方で,学校の規模が小さいということは子どもたちの集団活動の幅と規模を限定してしまい,子どもたちの社会性が発達する機会を十分に提供できず適応能力も未熟なまま社会へ出ることになるという問題も抱えている。この課題を解決するため,本研究では小規模校において複数学年を同時に運営する予防的な介入プログラムを実施し,その効果について検証することを目的として分析を進める。
方   法
・被験者 大分県B市内の小学校4~6年生の児童61名(男子27名・女子34名)および中学校1~3年生の生徒43名(男子27名・女子16名)。なお,この2校は同一の敷地内にある連携型小中一貫校である。
・介入方法 月に1回程度の頻度で複数学年を同時に運営する(一部プログラムを除く)対人関係ゲームプログラムを実施した。
・効果測定 5月にpre-testを、12月にpost-testを実施し,プログラムの効果について検証をおこなった。使用した質問紙は小学生には「登校回避感情測定尺度(渡辺・小石,2000)」より〈友人関係における孤立感傾向因子(孤立感)〉と〈登校嫌悪感傾向因子(登校嫌悪感)〉に関する質問項目(15項目・5件法)を,中学生には「TK式DEL検査(鈴木・大黒,1982)」より〈学校不適応〉〈対人不適応〉〈自己不適応〉の3因子に関する質問項目(30項目・2件法)であった。これらについてpre-testとpost-testの結果をt検定によって比較検討した。
結果と考察
 小学生における効果測定の結果が以下のFigure 1である。両因子において有意差が認められ,pre-testよりもpost-testでその値が低減していることが明らかになった。
 また,中学生における効果測定の結果が以下のFigure 2である。こちらは3つの因子すべてにおいて有意差が認められず,pre-testとpost-testの値に差がないことが明らかになった。
 以上の結果より,半年ほどの継続的介入によって小学生は効果が高い半面,中学生にはその効果がほぼみられないということが明らかになった。小学生はまだパーソナリティも柔軟かつ未熟であり,半年程度の介入でも十分に変容の余地はあるものの,中学生になると自我同一性の獲得を目指すなかでパーソナリティが小学生よりも成長を見せており,半年ほどの短期的な介入では十分な変容を促すことは難しいのではないだろうか。
 しかし,このような介入を長期的な視野で継続していくことによって,小学生はもちろん中学生にも十分な適応能力の向上を促すことができるのではないだろうか。これからも本研究のような介入を継続し,その効果を検証していきたい。