日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PC(01-64)

ポスター発表 PC(01-64)

2016年10月8日(土) 15:30 〜 17:30 展示場 (1階展示場)

[PC04] 行為者が幼児の場合の性格特性推論

行為者との関係性が成人と幼児の判断に及ぼす影響

長田瑞恵 (十文字学園女子大学)

キーワード:性格特性推論, 行為者との関係性, 原因の所在

はじめに
 日常生活における推論では,ある結果の原因として,内的・外的要因を含めた複数の要因が候補として同時に存在することが多い。ここで,行為者が子どもであった場合には,行為者が大人の場合とは,原因の帰属先や行為者の属性について,観察者の推論や判断は異なるだろうか。また,大人が観察者の場合,行為者が「一般的な子ども」の場合と「自分の子ども」の場合とで,原因帰属や特性推論に違いが生じるかについては明らかではない。さらに,子どもが観察者の場合,行為者が「他者」と「自分自身」の場合とで判断が異なるのであろうか。
 本研究では,ある結果の原因の候補として内的(行為者の意図)・外的要因(物理的要因)の2つを提示し,行為者との関係性(他者vs. 自分の子ども又は自分自身)を操作することで,観察者が行う原因帰属推論と行為者の性格特性推論を比較検討する。
方   法
方法 *被験者:保育園年中クラス児15名,年長クラス13名,成人517名 *実験計画 年齢(3)×主人公の内的要因(ポジティブ:P・ネガティブ:N)×結果(P・N)×提示順序(内的要因先・外的要因先)×主人公との関係(関係性低群(他者)・高群(自分の子又は自分自身))の5要因配置であった。内的要因,結果は被験者内要因,年齢と提示順序,主人公との関係は被験者間要因であった。なお,提示順序の要因については,幼児は人数が少ないために検討要因から除いた。 *手続き:内的要因(P・N)×結果(P・N)×提示順序(内的要因先・外的要因先)の3条件を操作したストーリーを作成し,被験者に対し主人公の内的要因と結果の組み合わせ(PP,PN,NP,NN)を操作した8つのストーリーを静止画と共に提示した(資料は当日配布)。その際,関係性高群では,成人に対しては「自分のお子さんだと思って判断してください」,幼児に対しては「主人公が〇〇ちゃん・君(被験者自身)だと思って聞いてね」と教示した。そして,「結果」の原因,主人公は良い子か悪い子か,その判断理由を質問した。
結   果
①成人の結果 以下の2点が明らかになった。
(1)事象の原因帰属先と特性判断について,関係性低群では内的要因と外的要因の提示順序の効果が明らかになったほか,内的要因と結果がともにネガティブな条件では,内的要因が先に提示されると関係性高群の場合に「悪い子」判断が多かった。(2)特性推論の根拠について,主人公との関係性の程度によって,各要因の主効果や交互作用の有無や方向性が異なった。以上の結果から,成人が原因帰属推論をする場合には,主人公の内的要因や結果だけでなく,行為者との関係性が判断に影響することが示された。
②幼児の結果 以下の3点が明らかとなった。
(1)行為者が自分自身の場合には事象の原因を外的要因に帰属し,行為者が他者の場合には原因を内的要因に帰属することが示された。(2)行為者の性格特性推論についていずれの主効果・交互作用も有意ではなかった。(3)性格特性の判断理由について4歳児の方が,外的要因よりも内的要因である行為者の意図に理由づけすることが示された。
考   察
 以上の結果から,成人も幼児も,ある結果の原因の候補として内的要因と外的要因が存在する場合,観察者である自分と行為者との関係性の違いによって,原因帰属先が影響を受けることが示された。また,特に成人の場合,行為者との関係性によって,行為者の特性推論が影響を受けることが示された。今後の課題として,成人で内的要因・外的要因の提示順序の影響が示されたことから,幼児についても提示順序の影響を検討する必要があると考える。
※本研究は2012~2014年度科学研究費(若手研究(B) 課題番号24730513 課題名「幼児における心の理解と自我発達:性格特性理論との関連」の助成を受けて行われた。