日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PC(01-64)

ポスター発表 PC(01-64)

2016年10月8日(土) 15:30 〜 17:30 展示場 (1階展示場)

[PC06] 簡易版児童用アタッチメント尺度(ECR-RC9)の作成(2)

収束的および弁別的妥当性の確認

村上達也1, 中尾達馬2, 数井みゆき3 (1.高知工科大学, 2.琉球大学, 3.茨城大学)

キーワード:アタッチメント, 児童, 尺度作成

問題と目的
 スウェーデンでは,「簡易版児童用アタッチメント尺度」(適用年齢10-17歳)としてECR-RC9(9項目)が注目を集めている(Alfredsson et al., 2013; Grip et al., 2013)。そこで中尾・村上・数井(2016)はECR-RC9の日本語版を作成し,ECR-RC9が2因子構造(回避,不安)を有していること,十分な内的整合性を備えていることを示した。
 本発表の目的は,ECR-RC9の収束的および弁別的妥当性を確認することであった。妥当性については,先行研究(中尾・村上,2016)を参考に,ECR-RC9と以下の3種類の尺度との関連性を検討することを通して確認した。
(a) 既存の児童用アタッチメント尺度:KSS(Kerns Security Scale, 中尾・村上,2016)
(b) 理論的な関連性が予想される尺度:情動知能,共感性,全般的自己価値
(c) 理論的な関連性が予想されない尺度:運動能力評価
方   法
 分析対象 公立小学校6校に所属する小学生4~6年生618名のうち,主要な養育者が母親と回答した542名を分析対象とした。
 調査質問紙 学年,年齢,性別を尋ねた後,以下の尺度に回答を求めた。①ECR-RC9(中尾・数井・村上,2016):アタッチメント・スタイルの回避と不安の2側面を測定する尺度。②KSS(中尾・村上,2016):アタッチメントの安定性を測定する尺度。③情動知能(豊田・吉田,2012):自分や他者の感情を理解したり,コントロールする力を測定したりする尺度。④共感的関心(長谷川他[2009]の児童用IRIの下位尺度):他者の感情を自分のものとして感じ取る共感性の感情的側面を測定する尺度。⑤全般的自己価値,運動能力評価(眞榮城他[2007]の改訂・自己知覚尺度児童版の下位尺度):自己に対する全般的な肯定的評価を測定する全体的自己価値尺度と運動能力に対する自己評価を測定する運動能力評価尺度を使用した。
 調査時期 2015年6月~11月であった。
結果と考察
 確認的因子分析 ECR-RC9に対して,中尾・数井・村上(2016)と同様のモデルを用いて,確認的因子分析を行った。その結果,適合度指標としてχ2 (26) = 271.513 (p <.001), GFI = .901, AGFI = .828, CFI = .841, RMSEA = .132.の値を得た。これらの結果は,中尾・数井・村上(2016)とほぼ同じであった。
 妥当性の検討 ECR-RC9と妥当性変数との相関をTable 1に示した。概ね、予測通りの結果が得られ,ECR-RC9の妥当性の一部が確認された。
 本一連発表(中尾ほか,2016;村上ほか,2016)を通して,ECR-RC9はよい心理的属性を備えた簡易版児童用アタッチメント尺度であることが示唆された。今後は,再検査信頼性や予測的妥当性の確認をし,さらに,KSSにはないECR-RC9の特徴である「不安」を設定することの妥当性についてさらなる証左を積み重ねる必要性があろう。