[PC07] 幼児期のレジリエンスを育む保育者の援助方略に関する研究(1)
役割の違いによる認識の差異について
キーワード:幼児期, レジリエンス, 保育者
問 題
レジリエンスを発揮する子どもの特徴は,子ども自身が発揮する個人内要因と,周囲から提供される環境要因の2つに共通性があることが指摘されている。小花和(2004)は,小学校低学年までの子どもについては環境要因としての周囲の大人からの見守りと援助が重要であると述べている。近年,保育所や幼稚園において複数で保育を担当し,特別なニーズに柔軟に対応する園がみられるようになっている。保育者が個々の発達をふまえたかかわり方をしている中で,それぞれがどのような援助方略を用いているのであろうか。また,異なる役割をもつ者が,4月段階でどのようなとらえ方をしているだろうか。
本研究では,幼児期のレジリエンスについて,年長児のレジリエンスを測定し,それぞれの幼児に対して,保育者が役割の違いでどのようなとらえ方をしているかを明らかにすることを目的とする。
方 法
参加者 幼稚園年長児担当6名(担任ならびに支援員 各1名,計3クラス)。3クラス中1クラス2名は持ち上がりであった。なお,全クラスとも週1回2時間程度の情報共有をしていた。
調査時期 2016年4月下旬
質問紙 ①幼児用レジリエンス尺度(長尾・芝崎・山崎,2008):気質(7項目)・傷つきにくさ(5項目)・自己調整(5項目)の3因子17項目から構成されている。「全くそう思わない」から「全くそう思う」を5段階で評定した。
②関わり・援助に関する自由記述
フェイスシートには,年齢,性別,勤務年数,園における役割の記入を求め,現職前の職業経験等については,追加で本人から情報を入手した。
手続き:幼稚園年長児担当者に,無記名方式の質問紙①と②がセットになったものを配布した。なお,幼児が同定できるよう,回答用紙には幼児のID番号が付されていた。各クラスの担任ならびに支援員は,それぞれ個別に回答し,全ての幼児の回答が終了したら返送用の袋に入れ,郵送してもらった。
結果ならびに考察
本研究は,幼児期のレジリエンスについて,4月段階で担任と支援員の評価ならびに認識がどのように異なるかを検討した。幼児用レジリエンス尺度における各水準のα係数は,気質(α=.83),傷つきにくさ(α=.63),自己調整(α=.77)であり,一貫性が確かめられた。
次に,幼児のレジリエンスの評価が,クラスと役割によって異なるかを検討するために,レジリエンス×クラス×役割の被験者内・被験者間・被験者間の3要因の分散分析を行った。その結果,二次の交互作用が有意であったため(F (4, 280)=3.27,p<.05),下位検定を行った。単純交互作用,単純・単純主効果の検定,および多重比較の結果から,Aクラスでは気質と自己調整において,Cクラスでは自己調整において担任が支援員よりも高く評価していた。またAクラスの担任は,傷つきにくさよりも気質を高く評価し,Cクラスの担任は傷つきにくさよりも自己調整を高く評価し,Cクラスの支援員は,傷つきにくさ,自己調整よりも気質を高く評価していた。Bクラスでは担任と支援員の評価間,およびレジリエンスの水準間に差は見られなかった。
また役割の違いでレジリエンスの水準間の認識が異なるかを検討するために相関分析を行った。その結果,1名のみ3水準間のいずれにも有意な相関関係が見られなかった。他の5名においては,気質と傷つきにくさに有意な中程度以上の正の相関がみられた(rs>.48)。支援員3名中2名は気質と自己調整に正の相関関係(r=.35,.41)があり,Bクラスの担任,支援員には傷つきにくさと自己調整に正の相関(r=.68,.65)がみられた。
以上のことから,幼児のレジリエンスの評価について,担任と支援員という役割で違いはあるが,必ずしもクラス間で同じとは言えないことが明らかになった。クラス間の結果の違いについては,複数担当の4月段階での結果であり,毎週行われる幼児に関する情報共有の時間が,見方やとらえ方にどのように影響するかは現時点で不明である。また相関分析の結果から,レジリエンスのとらえ方について,担任と支援員がそれぞれの水準を関係あるものとして考えていることが示された(表1)。
レジリエンスを発揮する子どもの特徴は,子ども自身が発揮する個人内要因と,周囲から提供される環境要因の2つに共通性があることが指摘されている。小花和(2004)は,小学校低学年までの子どもについては環境要因としての周囲の大人からの見守りと援助が重要であると述べている。近年,保育所や幼稚園において複数で保育を担当し,特別なニーズに柔軟に対応する園がみられるようになっている。保育者が個々の発達をふまえたかかわり方をしている中で,それぞれがどのような援助方略を用いているのであろうか。また,異なる役割をもつ者が,4月段階でどのようなとらえ方をしているだろうか。
本研究では,幼児期のレジリエンスについて,年長児のレジリエンスを測定し,それぞれの幼児に対して,保育者が役割の違いでどのようなとらえ方をしているかを明らかにすることを目的とする。
方 法
参加者 幼稚園年長児担当6名(担任ならびに支援員 各1名,計3クラス)。3クラス中1クラス2名は持ち上がりであった。なお,全クラスとも週1回2時間程度の情報共有をしていた。
調査時期 2016年4月下旬
質問紙 ①幼児用レジリエンス尺度(長尾・芝崎・山崎,2008):気質(7項目)・傷つきにくさ(5項目)・自己調整(5項目)の3因子17項目から構成されている。「全くそう思わない」から「全くそう思う」を5段階で評定した。
②関わり・援助に関する自由記述
フェイスシートには,年齢,性別,勤務年数,園における役割の記入を求め,現職前の職業経験等については,追加で本人から情報を入手した。
手続き:幼稚園年長児担当者に,無記名方式の質問紙①と②がセットになったものを配布した。なお,幼児が同定できるよう,回答用紙には幼児のID番号が付されていた。各クラスの担任ならびに支援員は,それぞれ個別に回答し,全ての幼児の回答が終了したら返送用の袋に入れ,郵送してもらった。
結果ならびに考察
本研究は,幼児期のレジリエンスについて,4月段階で担任と支援員の評価ならびに認識がどのように異なるかを検討した。幼児用レジリエンス尺度における各水準のα係数は,気質(α=.83),傷つきにくさ(α=.63),自己調整(α=.77)であり,一貫性が確かめられた。
次に,幼児のレジリエンスの評価が,クラスと役割によって異なるかを検討するために,レジリエンス×クラス×役割の被験者内・被験者間・被験者間の3要因の分散分析を行った。その結果,二次の交互作用が有意であったため(F (4, 280)=3.27,p<.05),下位検定を行った。単純交互作用,単純・単純主効果の検定,および多重比較の結果から,Aクラスでは気質と自己調整において,Cクラスでは自己調整において担任が支援員よりも高く評価していた。またAクラスの担任は,傷つきにくさよりも気質を高く評価し,Cクラスの担任は傷つきにくさよりも自己調整を高く評価し,Cクラスの支援員は,傷つきにくさ,自己調整よりも気質を高く評価していた。Bクラスでは担任と支援員の評価間,およびレジリエンスの水準間に差は見られなかった。
また役割の違いでレジリエンスの水準間の認識が異なるかを検討するために相関分析を行った。その結果,1名のみ3水準間のいずれにも有意な相関関係が見られなかった。他の5名においては,気質と傷つきにくさに有意な中程度以上の正の相関がみられた(rs>.48)。支援員3名中2名は気質と自己調整に正の相関関係(r=.35,.41)があり,Bクラスの担任,支援員には傷つきにくさと自己調整に正の相関(r=.68,.65)がみられた。
以上のことから,幼児のレジリエンスの評価について,担任と支援員という役割で違いはあるが,必ずしもクラス間で同じとは言えないことが明らかになった。クラス間の結果の違いについては,複数担当の4月段階での結果であり,毎週行われる幼児に関する情報共有の時間が,見方やとらえ方にどのように影響するかは現時点で不明である。また相関分析の結果から,レジリエンスのとらえ方について,担任と支援員がそれぞれの水準を関係あるものとして考えていることが示された(表1)。