日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PC(01-64)

ポスター発表 PC(01-64)

2016年10月8日(土) 15:30 〜 17:30 展示場 (1階展示場)

[PC12] 配偶者が第1子妊娠中の既婚男性に対する面接調査

下坂剛 (四国大学)

キーワード:育児関与, 父親, 半構造化面接

問   題
 夫婦関係と子育ての研究では,質問紙による横断的研究(柏木・若松,1994;尾形1995;福丸・無藤・飯長,1999他)や,縦断的な研究(小野寺,2003)などが行われている。父親の育児参加に特化した研究は,森下(2006)が質問紙法で,男性が父親になることでどのような成長を自覚するか報告している。欧米でもDevault et al.(2015)のFathering研究等が注目される。しかし日本では父親の育児関与を扱う研究,特に質的側面に焦点を当てた研究は今なお少ない現状にある。
 本研究では,男性が初めて父親になる際の心理的変化に関する質的側面を明らかにすることを目的とする。具体的には,配偶者の出産を経て,子どもの育児や家事,仕事という家庭生活と社会生活の両立,父親としての自覚の芽生え,夫婦間のコミュニケーションについてインタビューした。
方   法
 本研究では,妻が妊娠中から出産2年後に渡る縦断的調査を計画しており(Figure 1),今回の報告は第1段階の調査結果の報告とする。
1.対象者の募集
 調査対象者の募集は,縁故法および地域の保健センターに協力を得て行った。当初は10名を計画していたが,2016年3月までに条件に合う協力者は7名であったので,対象者募集を終了した。
2.面接時間:60分程度。
3.実施期間:2015年9月~2016年3月。
4.面接内容
 半構造化面接により以下の内容を調査する。
①夫婦の会話。
②父親としての期待と不安。
③仕事と育児参加の両立と見通し。
5.実施詳細
 面接実施者は筆者であり,場所は大学の研究室で実施した。対象者には交通費も含めての謝礼を手渡した。面接時は対象者から許可を得られた場合,ICレコーダーで録音した(1名筆記)。
結   果
 面接結果は全体として,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(木下,2003)によって分析する予定である。この手法は,質的データから理論モデルを構築する手法として近年注目を集めている。ただ今回の結果のみで理論モデルを構築するにはデータが十分でないので,今回は調査対象者の基本属性(Table 1),インタビュー内容の特徴を一部ピックアップするにとどめる。
1.夫婦の会話
 妻の体調の変化にかなりの配慮をしている様子や,新婚時代のライフスタイルの見直しについて悩んでいること,禁煙や趣味にかける時間やお金を見直すなど生活習慣の改善について語られた。
2.父親としての期待と不安
 まずは母子ともに元気で生まれてほしいという希望,子どもと一緒に遊ぶことへの楽しみな気持ち,配偶者が育休中の経済的不安,育休明けの保育所入所ができるかの心配などが語られた。
3.仕事と家事・育児の両立
 育児は基本,妻をサポートする形になるかという予想,仕事で不在のときなどが心配であること,自分と妻が育休復帰後の仕事の折り合いをどう調整するかという悩み,ある程度は双方の実家を頼らざるを得ないという予想などが語られた。
考   察
 配偶者の妊娠期において男性もライフスタイルの見直しなど,質的に重要な側面が多く得られた。今後は配偶者の出産を経た育児経験と意識の変容に焦点を合わせたい。
(本研究は四国大学学術研究助成の補助を受けた)