[PC17] 児童の協調性と親の子育てスタイルとの関係
親評定尺度を用いた検討
Keywords:協調性, 子育てスタイル, 児童
問題と目的
親の養育スタイルについては,これまでさまざまな次元が提唱されているが,特によく用いられるのが,Baumrind(1971)が提唱したAuthoritative(権威ある),Authoritarian(権威主義的),Permissive(許容的)の3パターンである。Maccoby & Martin(1983)は,これに無関心を加えた4パターンを応答性(受容)と要求性(統制)の2要因で表す分類システムを示した。この分類を用いた研究では,権威ある子育てパターンは,幼稚園児のコンピテンスと社会的責任,青年のコンピテンスと向社会性(Baumrind, 1971, 1991),小学生の規則・ルールへの適応(姜・酒井,2006)と関連していた等の報告がある。
登張他(2015,2016)は,小学生の親を対象とする調査結果をもとに,親が評定する児童の多面的協調性尺度と子育てスタイル尺度を作成した。子育てスタイル尺度は,中道・中澤(2003)の養育態度尺度等をもとに作成され,上記の2要因に対応すると考えられる応答・共有尺度と統制・要求尺度からなる。本研究では,子育てスタイル下位尺度の高低から4パターンを分類し,親の子育てスタイルと児童の協調性との関係を検討する。
方 法
参加者:小学1-6年生の親1986名(男性169,女性1817名)。平均年齢39.92歳。
測定尺度:親評定・児童用多面的協調性尺度:[協力志向(5項目),協調的問題解決(6項目),調和・同調(4項目)の3下位尺度からなる]
子育てスタイル尺度:[応答・共有(5項目),統制・要求(4項目)の2下位尺度からなる]
結果と考察
応答・共有尺度の平均値(SD)は18.43(2.84)であった。[平均値-1SD](16)以下を低群(245名),[平均値+1SD](21)以上を高群(222名)とした。統制・要求尺度の平均値(SD)は15.92(2.19)であった。[平均値-1SD](14)以下を低群(216名),[平均値+1SD](18)以上を高群(251名)とした。応答・共有高,統制・要求高を「権威ある」群(148名),応答・共有高,統制・要求低を「許容的」群(74名),応答・共有低,統制・要求高を「権威主義」群(103名),応答・共有低,統制・要求低を「関心低」群(142名)とした。子育てパターン4群の親評定による児童の協力志向と協調的問題解決,調和・同調尺度の平均値と一元配置分散分析の結果をTable 1に示した。
協力志向は群別効果が有意で,「権威ある」が「許容的」より高いが,多重比較を行うと,その間に有意差はみられなかった。「許容的」は「権威主義」より高く,「権威主義」は「関心低」より高かった(ps<.01)。協調的問題解決も群別効果が有意で,多重比較を行うと,「権威ある」が最も高いが「許容的」との間に有意差はみられず,「権威主義」はそれより低いが(p<.001),「関心低」との間に有意差はみられなかった。調和・同調の群別効果は有意でなく,どの群も類似した得点であった。
子どもが他者と力を合わせたり共に喜んだりする協力志向と相手の考えを聞いたり共に納得できるような解決案を考えたりする協調的問題解決傾向は,親が子どもの話を聞き,活動を共にすることを表す応答・共有が高い「権威ある」,または「許容的」な子育てスタイルを行う場合に高く,そうした傾向が高くない「権威主義」や「関心低」の子育てスタイルを行う場合に相対的に低いことが明らかとなった。親の応答・共有的態度は子どもの協力志向や協調的問題解決傾向を高めうることが示唆された。なお,応答・共有も統制・要求も低い親の「関心低」は,子どもの協力志向の低さと関連していた。
一方,親の子育てスタイルは子どもの調和・同調の得点に効果を示さなかった。この傾向には文化等の影響の方が大きいのかもしれない。
引用文献
Baumrind(1971).Developmental Psychology Monograph, 4, 1-103.
姜・酒井(2006).富山大学人間発達科学部紀要,1,111-119.
中道・中澤(2003).千葉大学教育学部紀要,51,173-179.
登張他(2015).日心79回大会論文集,991.
登張他(2016).発達心第27回大会発表論文集(その他省略)
◇本研究は科研費補助金(基盤研究C25380888)の補助を受けた。
親の養育スタイルについては,これまでさまざまな次元が提唱されているが,特によく用いられるのが,Baumrind(1971)が提唱したAuthoritative(権威ある),Authoritarian(権威主義的),Permissive(許容的)の3パターンである。Maccoby & Martin(1983)は,これに無関心を加えた4パターンを応答性(受容)と要求性(統制)の2要因で表す分類システムを示した。この分類を用いた研究では,権威ある子育てパターンは,幼稚園児のコンピテンスと社会的責任,青年のコンピテンスと向社会性(Baumrind, 1971, 1991),小学生の規則・ルールへの適応(姜・酒井,2006)と関連していた等の報告がある。
登張他(2015,2016)は,小学生の親を対象とする調査結果をもとに,親が評定する児童の多面的協調性尺度と子育てスタイル尺度を作成した。子育てスタイル尺度は,中道・中澤(2003)の養育態度尺度等をもとに作成され,上記の2要因に対応すると考えられる応答・共有尺度と統制・要求尺度からなる。本研究では,子育てスタイル下位尺度の高低から4パターンを分類し,親の子育てスタイルと児童の協調性との関係を検討する。
方 法
参加者:小学1-6年生の親1986名(男性169,女性1817名)。平均年齢39.92歳。
測定尺度:親評定・児童用多面的協調性尺度:[協力志向(5項目),協調的問題解決(6項目),調和・同調(4項目)の3下位尺度からなる]
子育てスタイル尺度:[応答・共有(5項目),統制・要求(4項目)の2下位尺度からなる]
結果と考察
応答・共有尺度の平均値(SD)は18.43(2.84)であった。[平均値-1SD](16)以下を低群(245名),[平均値+1SD](21)以上を高群(222名)とした。統制・要求尺度の平均値(SD)は15.92(2.19)であった。[平均値-1SD](14)以下を低群(216名),[平均値+1SD](18)以上を高群(251名)とした。応答・共有高,統制・要求高を「権威ある」群(148名),応答・共有高,統制・要求低を「許容的」群(74名),応答・共有低,統制・要求高を「権威主義」群(103名),応答・共有低,統制・要求低を「関心低」群(142名)とした。子育てパターン4群の親評定による児童の協力志向と協調的問題解決,調和・同調尺度の平均値と一元配置分散分析の結果をTable 1に示した。
協力志向は群別効果が有意で,「権威ある」が「許容的」より高いが,多重比較を行うと,その間に有意差はみられなかった。「許容的」は「権威主義」より高く,「権威主義」は「関心低」より高かった(ps<.01)。協調的問題解決も群別効果が有意で,多重比較を行うと,「権威ある」が最も高いが「許容的」との間に有意差はみられず,「権威主義」はそれより低いが(p<.001),「関心低」との間に有意差はみられなかった。調和・同調の群別効果は有意でなく,どの群も類似した得点であった。
子どもが他者と力を合わせたり共に喜んだりする協力志向と相手の考えを聞いたり共に納得できるような解決案を考えたりする協調的問題解決傾向は,親が子どもの話を聞き,活動を共にすることを表す応答・共有が高い「権威ある」,または「許容的」な子育てスタイルを行う場合に高く,そうした傾向が高くない「権威主義」や「関心低」の子育てスタイルを行う場合に相対的に低いことが明らかとなった。親の応答・共有的態度は子どもの協力志向や協調的問題解決傾向を高めうることが示唆された。なお,応答・共有も統制・要求も低い親の「関心低」は,子どもの協力志向の低さと関連していた。
一方,親の子育てスタイルは子どもの調和・同調の得点に効果を示さなかった。この傾向には文化等の影響の方が大きいのかもしれない。
引用文献
Baumrind(1971).Developmental Psychology Monograph, 4, 1-103.
姜・酒井(2006).富山大学人間発達科学部紀要,1,111-119.
中道・中澤(2003).千葉大学教育学部紀要,51,173-179.
登張他(2015).日心79回大会論文集,991.
登張他(2016).発達心第27回大会発表論文集(その他省略)
◇本研究は科研費補助金(基盤研究C25380888)の補助を受けた。