[PC35] 英語の授業が嫌いになったメカニズムの検討
理系大学を対象にした質的研究
Keywords:英語教育, 内発的動機づけ
背景と目的
近年の英語教育場面での動機づけ研究は,自己決定理論 (self-determination theory, Deci & Ryan, 1985, 2002)を用いて,動機づけを高める方法の効果検証が積極的に行われている(例えば,Moskovsk, Alrabai, Paolini, and Ratcheva, 2012)。しかし,学習者が英語嫌いになったメカニズムが十分に解明されておらず,英語嫌いの学習者の動機づけを高めるという問題を根本から解決するに至っていない。そこで,本論では学習者が英語の授業が嫌いになったメカニズムを質的研究を通じて検討する。
方 法
【調査協力者】工学系の学部に所属する大学1・2年生62名を対象に,初回の授業時間にて4件法の質問紙調査を行い,英語の好き嫌いを問い(「英語学習が好きだと思う」という質問項目に対して,4件法(1:ちがう,2:ややちがう,3:ややその通り,4:その通り),否定的な回答の調査協力者を対象とした。その結果,否定的な回答(1と2)を選択した調査協力者の内,1を選択した調査協力者は11名で,2は24名であった。研究計画段階では,最も否定的な回答である1を選択した調査協力者のみを分析対象とする予定だったが,2を選択した24名の自由記述項目を参照した所,1を選択した調査協力者と回答の内容に大きな差異はなかった。また初回の授業での質問紙調査だったので,調査協力者がやや好意的に回答を記入した可能性も考慮して,回答の1か2を選択した調査協力者35名(男子34名,女子1名)を最終的な分析対象とした。
【手続きと測定】データ収集は授業時間内を利用して行った。まず動機づけの高さを把握するため,内発的動機づけの測定を行った。測定には田中(2014)の質問項目を用いて,特性レベル(5項目,α= .85)と英語授業レベル(4項目,α= .92)で測定を行った。次に,英語嫌いになったメカニズムを検討するため,質的データは自由記述形式で「英語学習が嫌いな理由」を問うた。得られた質的データはSCQRMを使ったM-GTA(西條,2007,2008))によって分析を行った。
結 果
質的研究に先立ち,7件法の内発的動機づけの項目得点を英語嫌い群とそうではない群(以降,好意群)で比較し,群分けの妥当性を検討した。英語嫌い群の特性レベルの動機づけは中程度よりもやや高めだったが(M = 4.26),好意群はより低い値で (M = 5.01),2群に有意な差があった(Mdiff = 0.76, t(58) = -2.53, p = .01, r = .32)。英語授業レベルの動機づけについては,英語嫌い群で極めて低く(M = 2.74),好意群においても中程度で(M = 3.73),2群に有意な差があった(Mdiff = 0.99, t(58) = -3.04, p = .00, r = .37)。このことから,調査協力者は特性レベルの動機づけがある程度高いことから,英語学習全般に対する価値を十分に内在化させているものの,主な英語学習場面である学校の英語の授業に対しては極めて動機づけが低い学習者と言えよう。
次に質的データをSCQRMを使ったM-GTAによって分析を行った。その結果,英語が嫌いで習熟度の低い学習者の意識の根底には,自分自身の英語力不足の実感があり,それにやる気を削ぐ要因が加わり,嫌気や苦手意識が生まれることが示された(Figure参照)。
近年の英語教育場面での動機づけ研究は,自己決定理論 (self-determination theory, Deci & Ryan, 1985, 2002)を用いて,動機づけを高める方法の効果検証が積極的に行われている(例えば,Moskovsk, Alrabai, Paolini, and Ratcheva, 2012)。しかし,学習者が英語嫌いになったメカニズムが十分に解明されておらず,英語嫌いの学習者の動機づけを高めるという問題を根本から解決するに至っていない。そこで,本論では学習者が英語の授業が嫌いになったメカニズムを質的研究を通じて検討する。
方 法
【調査協力者】工学系の学部に所属する大学1・2年生62名を対象に,初回の授業時間にて4件法の質問紙調査を行い,英語の好き嫌いを問い(「英語学習が好きだと思う」という質問項目に対して,4件法(1:ちがう,2:ややちがう,3:ややその通り,4:その通り),否定的な回答の調査協力者を対象とした。その結果,否定的な回答(1と2)を選択した調査協力者の内,1を選択した調査協力者は11名で,2は24名であった。研究計画段階では,最も否定的な回答である1を選択した調査協力者のみを分析対象とする予定だったが,2を選択した24名の自由記述項目を参照した所,1を選択した調査協力者と回答の内容に大きな差異はなかった。また初回の授業での質問紙調査だったので,調査協力者がやや好意的に回答を記入した可能性も考慮して,回答の1か2を選択した調査協力者35名(男子34名,女子1名)を最終的な分析対象とした。
【手続きと測定】データ収集は授業時間内を利用して行った。まず動機づけの高さを把握するため,内発的動機づけの測定を行った。測定には田中(2014)の質問項目を用いて,特性レベル(5項目,α= .85)と英語授業レベル(4項目,α= .92)で測定を行った。次に,英語嫌いになったメカニズムを検討するため,質的データは自由記述形式で「英語学習が嫌いな理由」を問うた。得られた質的データはSCQRMを使ったM-GTA(西條,2007,2008))によって分析を行った。
結 果
質的研究に先立ち,7件法の内発的動機づけの項目得点を英語嫌い群とそうではない群(以降,好意群)で比較し,群分けの妥当性を検討した。英語嫌い群の特性レベルの動機づけは中程度よりもやや高めだったが(M = 4.26),好意群はより低い値で (M = 5.01),2群に有意な差があった(Mdiff = 0.76, t(58) = -2.53, p = .01, r = .32)。英語授業レベルの動機づけについては,英語嫌い群で極めて低く(M = 2.74),好意群においても中程度で(M = 3.73),2群に有意な差があった(Mdiff = 0.99, t(58) = -3.04, p = .00, r = .37)。このことから,調査協力者は特性レベルの動機づけがある程度高いことから,英語学習全般に対する価値を十分に内在化させているものの,主な英語学習場面である学校の英語の授業に対しては極めて動機づけが低い学習者と言えよう。
次に質的データをSCQRMを使ったM-GTAによって分析を行った。その結果,英語が嫌いで習熟度の低い学習者の意識の根底には,自分自身の英語力不足の実感があり,それにやる気を削ぐ要因が加わり,嫌気や苦手意識が生まれることが示された(Figure参照)。