The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PC(01-64)

ポスター発表 PC(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 3:30 PM - 5:30 PM 展示場 (1階展示場)

[PC41] 初年度大学生の学習全体の満足度の影響

学習スタイルによってクラスタリングされた対象者の差異

鈴木賢男 (文教大学)

Keywords:授業満足度, 学習スタイル, 大学生

目   的
 鈴木(教心発表2015)では,満足できた授業数を受講した授業数で除算した満足授業率と,授業全般を振り返って満足したかを尋ねた授業満足率の2つの指標のいずれかを媒介項として,授業を通して得られた実感(効力感など)が授業満足度に影響を及ぼし,主としてこの満足度が,その後の学業生活への親和性を高めるのではないかと仮定した多重指標モデルを作成した。その結果,2つの指標による授業満足度は,いずれも学校への親和性を高めることには寄与するものの,学習への親和性に対しては,直接的な寄与を,認められなかった。これに関しては,対象者である学習者の学習動機や学習観などの違いによって,寄与する変数が異なる可能性があることを想像するにとどまった。
 そこで,本研究は,同様に初学年時における半期終了後の授業満足度が授業中に得られた学習実感とどう関連し,学業生活への期待にどう影響をもたらしているのかについて,全体で得られた非逐次モデルによるパス解析を,異なる学習スタイルをもつ学習者間で比較し,有意なパスの違いやその係数を検討することを目的とした。
方   法
 前半調査(2015年4月):学習動機と学習方略に関しては,市川(2001)による尺度を用い,他に,学習観について「学ぶことによって,人はより良く成長できる」などの20項目に対して5件法(賛成-反対)で回答を得た。後半調査(同年7月末):受講した科目数と,その中で満足できた科目数を回答してもらい,また,別途「大学での全般的な授業満足度は主観的に何%ですか」という教示で主観的な満足率の回答を得た。それに加えて,「出来てうれしいことがあった」などの30項目で半期における授業実感についての回答を,「もっとたくさん勉強したい」などの10項目で,今後の学業生活における期待についての回答を,7件法(全くそう思う-全くそうは思わない)で得た。調査対象者:人文社会・教育系2学部の129名(男性44名,女性85名)の大学1年生。平均年令は18.5才(SD=0.71)。
結   果
 学習動機(下位6尺度),学習方略(下位4尺度),学習観(主体性,自律性,継続性)の尺度得点を変数として投入して,Ward法による階層的クラスタ分析を行った結果,デンドログラムの枝の長さから,4つに分類することが妥当であると判断した。各尺度得点の比較から,主として,内容分離動機が一様に高い①情緒型学習者,学習方略が一様に高い②思考型学習者,学習観が一様に低い③受身型学習者,学習観が一様に高い④意志型学習者との特徴を見出すことができた。
 授業実感に関する因子分析では,鈴木(教心発表2015)とほぼ同一の結果が得られ「学習増進感」では,「効力感」「達成感」,「学習抑制感」では「疲弊感(負担感+重圧感)」「抵抗感(虚無感より改名)」と命名しうる因子を得た(累積寄与率42.8%,47.8%)。その後,因子を構成する項目を合成し,尺度得点を得た(5尺度のα係数は.62~.88)。学業生活への親和性に関する因子分析も同様に,学校を好きになる等の「学校親和」,学力を伸ばしたい等の「学習親和」,学習すること自体が楽しい等の「見聞親和」と意味づけられる因子を得て(累積寄与率58.7%),同様に尺度得点を算出した(3尺度のα係数は.78~.90)。
 授業実感,授業満足度,学業生活への親和性の各尺度を観測変数とするパス解析をAmosによって行った。その結果,対象者全体ではFig 1に示す逐次モデルの適合度指標は,満足授業率を投入したモデルではGFI=.98,AGFI=.91,CFI=.99,RMSEA=.04,授業満足率を投入したモデルではGFI=.99,AGFI=.94,CFI=1.00,RMSEA=.00となり,どちらも十分な適合を示した。学習スタイル別では,授業満足度から出るパスでは,満足授業率の時の学習親和へのパス(標準化係数.52)と,授業満足率の時の学校親和(同.70)へのパスが有意(p<.05)であるのみで,それを示したのは,「意志型学習者」であることがわかった。学習への意識の高い対象者だからこそ,授業の満足度が学業生活に影響を与えることになるのかもしれない。