日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PC(01-64)

ポスター発表 PC(01-64)

2016年10月8日(土) 15:30 〜 17:30 展示場 (1階展示場)

[PC47] 社会的スキルトレーニングの成果を高める要因の検討(3)

トレーニング回数と評価に着目して

小川一美1, 太幡直也2, 松本明日香3 (1.愛知淑徳大学, 2.愛知学院大学, 3.愛知淑徳大学大学院)

キーワード:社会的スキル, トレーニングの成果, トレーニング回数

問   題
 社会的スキルトレーニングは,対人関係能力やコミュニケーションスキルの向上を目的に幅広い対象者に実施されている。しかし,トレーニングの成果を左右する具体的な要因についての検討が十分に行われているわけではない。本研究ではトレーニング回数により参加者のトレーニングに対する評価が異なるのか,また,評価と何がトレーニング成果を高める要因だと思うかとの関連が回数により異なるか否かを検討する。
方   法
 調査対象者 トレーニングを1回受けた者は大学生18名(男性3名,女性15名),8回受けた者は13名(男性12名,女性1名),15回受けた者は18名(男性15名,女性3名)であった。いずれも太幡(2016)のトレーニングの一部あるいはすべてを実施し,個別に面接調査を行った。
 質問項目 面接調査では,トレーニング実施者,参加者,内容,環境ごとに,“スキルトレーニングをもっとやりやすくするには,どのようにしたらよいと思うか”について自由に回答させた。さらに,“トレーニングは楽しかった(楽しかった)”,“トレーニングは自分に必要だと思った(必要)”,について,視覚的評価法(VAS)により評定させた。
 発言の分析方法 太幡・小川・松本(2016)と同様であった(Table 1の分類参照)。
結果と考察
 楽しかった,必要については,VASのマーク点に基づき得点化した(0~100)。トレーニングに対する評価をトレーニング回数により比較したところ,“楽しかった”は回数による有意差は見られなかった(F(2, 46)=0.56,ns,η_p^2=.02。1回 M=69.0,SD=18.0;8回 M=74.4,SD=16.7;15回 M=74.7,SD=18.3)。“必要”は,1回よりも15回の方が有意に得点が高かった(F(2, 46)=4.55,p=.016,η_p^2=.17。1回 M=77.6,SD=16.0;8回 M=84.0,SD=7.2;15回 M=90.0,SD=10.9)。つまり,感情的な側面ではトレーニング回数による違いは見られないものの,回数が多くなると必要だと思うという認知的評価は高まることが示された。
 次に,各得点の高さと各発言の有無(0=発言無し,1=発言有り)の関連を検討するため,トレーニング回数ごとに点双列相関係数を算出した(Table 1)。8回,15回になると“楽しかった”と各発言の間に有意な関連はなくなった。一方,“必要”では15回になると有意傾向であるが複数の発言と関連が示され,トレーニング実施者や内容,人間関係という要因が認知的評価に影響を及ぼす可能性が示唆された。

注:本研究はJSPS科研費24730522の助成を受けた。