[PC48] 「循環型ネットいじめ」に関する研究
中学生・高校生を対象とした調査
Keywords:ネットいじめ, 中学生, 高校生
目 的
被害者と加害者とが入れ替わりながら継続する「いじめ」を「循環型いじめ」とする。小学生や高校生を対象とした調査から,児童・生徒の個人特性の一つと考えられる拒絶感受性が「循環型いじめ」に関連することが示唆された(三島,2015)。具体的には,拒絶感受性を構成する3因子のうち「対人関係の不安定感」「拒絶に対する不安・過敏」因子が,「いじめ」被害に正の影響を与え,「いじめ」被害は,拒絶感受性の「拒絶に対する怒り・反撃」因子に正の影響を与え,「拒絶に対する怒り・反撃」因子が,「いじめ」加害に正の影響を与えることを示唆する結果が得られた。
「いじめ」と拒絶感受性との間にみられたこうした関係と同様の関係が,「ネットいじめ」に関しても存在する可能性がある(三島・吉田,2016)。そこで,本研究では,対面における「いじめ」被害・加害を対象にして行ったのと同様のモデル(Figure 1参照)が,「ネットいじめ」被害・加害に関しても当てはまるのかどうかを中学生・高校生から収集したデータをもとにして検証する。
方 法
■調査時期・方法・対象
A県B市にある高校・中学校それぞれ1校ずつで2016年10月に調査を行った。調査はホームルーム担当教員がホームルームの時間等に学級単位で実施した。調査対象者数は,高校1・2年552人(1年267人・2年285人),中学1~3年生396人(1年126人・2年141人・3年129人)であるが,今回はスマートフォン(携帯電話)を所持している生徒で,回答に欠損がない生徒808人のみを分析の対象とした(高校生540人:男子314人・女子226人.中学生:268人:男子129人・女子139人)。
■分析に用いた質問
ネットいじめ被害(2項目:「うざい」など攻撃的なメッセージが届いた。SNSやメールで,仲間からの返信が意図的に遅かったり,無視されたりした)。ネットいじめ加害(2項目:「うざい」など攻撃的なメッセージを,知人や友人に送った。SNSやメールで相手を無視したり,返信を意図的に遅らせたりした)。そのほか,拒絶感受性に関する9項目の質問に5件法で回答を求めた。
結果と考察
■拒絶感受性(9項目)の因子分析
拒絶感受性に関する9項目の回答を因子分析した(最尤法・プロマックス回転・3因子解)。「仲間はずれにされそうな雰囲気を感じると,不安な気持ちが強くなる」など4項目が大きな負荷量を示した第1因子を「拒絶に対する不安・過敏」因子とした。「いちばん仲がよい友人との関係も,実はそれほどしっかりしたものではない」など3項目が大きな負荷量を示した第2因子を「対人関係の不安定感」因子とした。「仲間はずれにされそうな雰囲気を感じると攻撃的になる」など2項目が大きな負荷量を示した第3因子を「拒絶に対する怒り・反撃」因子とした。
■「循環型ネットいじめ」モデルの検証
共分散構造分析を行った結果,データに対するモデルのあてはまりは許容できるものであった(GFI=.95,AGFI=.93,CFI=.92,RMSEA=.062)。
拒絶感受性の「拒絶に対する不安・過敏」と「対人関係の不安定感」のふたつの因子は,「ネットいじめ」被害に影響を与えることが示唆された。さらに,「ネットいじめ」被害は,「ネットいじめ」加害と拒絶感受性の「拒絶に対する怒り・反撃」因子に影響を与え,この因子が「ネットいじめ」加害に影響を与えることも示唆された。
以上の結果から,対面の「いじめ」と同様に,「ネットいじめ」に関しても,拒絶感受性が被害・加害の双方に関係する可能性があり,ネット上においても,被害者と加害者とが入れ替わる「循環型いじめ」が起きる可能性があると考えられる。
被害者と加害者とが入れ替わりながら継続する「いじめ」を「循環型いじめ」とする。小学生や高校生を対象とした調査から,児童・生徒の個人特性の一つと考えられる拒絶感受性が「循環型いじめ」に関連することが示唆された(三島,2015)。具体的には,拒絶感受性を構成する3因子のうち「対人関係の不安定感」「拒絶に対する不安・過敏」因子が,「いじめ」被害に正の影響を与え,「いじめ」被害は,拒絶感受性の「拒絶に対する怒り・反撃」因子に正の影響を与え,「拒絶に対する怒り・反撃」因子が,「いじめ」加害に正の影響を与えることを示唆する結果が得られた。
「いじめ」と拒絶感受性との間にみられたこうした関係と同様の関係が,「ネットいじめ」に関しても存在する可能性がある(三島・吉田,2016)。そこで,本研究では,対面における「いじめ」被害・加害を対象にして行ったのと同様のモデル(Figure 1参照)が,「ネットいじめ」被害・加害に関しても当てはまるのかどうかを中学生・高校生から収集したデータをもとにして検証する。
方 法
■調査時期・方法・対象
A県B市にある高校・中学校それぞれ1校ずつで2016年10月に調査を行った。調査はホームルーム担当教員がホームルームの時間等に学級単位で実施した。調査対象者数は,高校1・2年552人(1年267人・2年285人),中学1~3年生396人(1年126人・2年141人・3年129人)であるが,今回はスマートフォン(携帯電話)を所持している生徒で,回答に欠損がない生徒808人のみを分析の対象とした(高校生540人:男子314人・女子226人.中学生:268人:男子129人・女子139人)。
■分析に用いた質問
ネットいじめ被害(2項目:「うざい」など攻撃的なメッセージが届いた。SNSやメールで,仲間からの返信が意図的に遅かったり,無視されたりした)。ネットいじめ加害(2項目:「うざい」など攻撃的なメッセージを,知人や友人に送った。SNSやメールで相手を無視したり,返信を意図的に遅らせたりした)。そのほか,拒絶感受性に関する9項目の質問に5件法で回答を求めた。
結果と考察
■拒絶感受性(9項目)の因子分析
拒絶感受性に関する9項目の回答を因子分析した(最尤法・プロマックス回転・3因子解)。「仲間はずれにされそうな雰囲気を感じると,不安な気持ちが強くなる」など4項目が大きな負荷量を示した第1因子を「拒絶に対する不安・過敏」因子とした。「いちばん仲がよい友人との関係も,実はそれほどしっかりしたものではない」など3項目が大きな負荷量を示した第2因子を「対人関係の不安定感」因子とした。「仲間はずれにされそうな雰囲気を感じると攻撃的になる」など2項目が大きな負荷量を示した第3因子を「拒絶に対する怒り・反撃」因子とした。
■「循環型ネットいじめ」モデルの検証
共分散構造分析を行った結果,データに対するモデルのあてはまりは許容できるものであった(GFI=.95,AGFI=.93,CFI=.92,RMSEA=.062)。
拒絶感受性の「拒絶に対する不安・過敏」と「対人関係の不安定感」のふたつの因子は,「ネットいじめ」被害に影響を与えることが示唆された。さらに,「ネットいじめ」被害は,「ネットいじめ」加害と拒絶感受性の「拒絶に対する怒り・反撃」因子に影響を与え,この因子が「ネットいじめ」加害に影響を与えることも示唆された。
以上の結果から,対面の「いじめ」と同様に,「ネットいじめ」に関しても,拒絶感受性が被害・加害の双方に関係する可能性があり,ネット上においても,被害者と加害者とが入れ替わる「循環型いじめ」が起きる可能性があると考えられる。