[PC51] 制御適合はパフォーマンスを高めるのか?Ⅱ
制御適合の種類とパフォーマンスのタイプ別の検討
キーワード:制御適合, 制御焦点, パフォーマンス
Higgins(2000)の制御適合理論によると,自己制御の志向性(制御焦点)を維持するような目標追求の方略を用いる時,人は制御適合(regulatory fit)を経験するという。先行研究(Shah et al., 1998)より,制御適合が生じると高いパフォーマンスにつながることが示されている。本研究では,パフォーマンスのタイプ(速さ,正確さ)を考慮した上で,制御適合の種類別(促進焦点と熱望方略,防止焦点と警戒方略)に,制御適合がパフォーマンスに及ぼす影響について検討することを目的とした。促進焦点(防止焦点)の状況が活性化され,熱望方略(警戒方略)を使用するときに制御適合が生じ,他の組み合わせと比べて速さ(正確さ)のパフォーマンスが最も高くなるという仮説を立てた。
方 法
実験参加者 大学生80名(男子45名,女子35名)。
実験計画 制御焦点(促進,防止)と課題方略(熱望,警戒)の2要因を独立変数とする実験参加者間計画。
制御焦点の操作 促進焦点条件(n=40)では,理想として叶えたいと思っていることを,防止焦点条件(n=40)では,義務として果たすべきだと思っていることを“中学・高校のころ”,“現在”,“大学卒業後”の3つの時期に分けて自由記述させることで,各々促進焦点,防止焦点を活性化させた。回答時間は6分間であった。
実験課題と課題方略の提示 実験課題は点描写課題(お手本通りにドットからドットへ線を引いて,絵を模写してもらう課題)を4題(制限時間は各30秒)用いた。熱望方略条件(n=40)では,“できるだけ速く”,警戒方略条件(n=40)では,“できるだけ正確に”遂行するように教示した。
結 果
制御焦点(促進,防止)と課題方略(熱望,警点,正確さ得点)を従属変数とする2要因分散分析を各々行った。速さ得点は,各課題の得点を足し合わせた得点の平均値を,正確さの指標としてはミスの数を用い,各課題のミスの数を足し合わせた得点の平均値を使用した。
速さ得点では,制御焦点,課題方略の主効果および交互作用いずれも有意とならず,仮説は支持されなかった。
正確さ得点では,課題方略の主効果(F(1, 79)=13.55,p=.00,ηp2=.15)が有意となり,制御焦点の主効果(F(1, 79)=3.31,p=.07,ηp2=.04)が有意傾向であった。課題方略では,熱望方略よりも警戒方略のほうが正確さのパフォーマンスが高く(ミスの数が少なく),制御焦点では,促進焦点よりも防止焦点のほうが正確さのパフォーマンスが高かった(ミスの数が少なかった)。交互作用は有意とならなかった。Figure 1に示されている通り,防止焦点では警戒方略を使用すると制御適合が生じ,他の組み合わせと比べて正確さのパフォーマンスが最も高くなる(ミスが最も少なくなる)ことが示され,仮説が支持された。
考 察
速さにおいては仮説が支持されなかった。本研究ではお手本通りに図形を模写する点描写課題を用いたため,速くやるという方略が用いにくい課題であった。今後は使用する課題とその方略をさらに精査した上で検討することが望まれる。
方 法
実験参加者 大学生80名(男子45名,女子35名)。
実験計画 制御焦点(促進,防止)と課題方略(熱望,警戒)の2要因を独立変数とする実験参加者間計画。
制御焦点の操作 促進焦点条件(n=40)では,理想として叶えたいと思っていることを,防止焦点条件(n=40)では,義務として果たすべきだと思っていることを“中学・高校のころ”,“現在”,“大学卒業後”の3つの時期に分けて自由記述させることで,各々促進焦点,防止焦点を活性化させた。回答時間は6分間であった。
実験課題と課題方略の提示 実験課題は点描写課題(お手本通りにドットからドットへ線を引いて,絵を模写してもらう課題)を4題(制限時間は各30秒)用いた。熱望方略条件(n=40)では,“できるだけ速く”,警戒方略条件(n=40)では,“できるだけ正確に”遂行するように教示した。
結 果
制御焦点(促進,防止)と課題方略(熱望,警点,正確さ得点)を従属変数とする2要因分散分析を各々行った。速さ得点は,各課題の得点を足し合わせた得点の平均値を,正確さの指標としてはミスの数を用い,各課題のミスの数を足し合わせた得点の平均値を使用した。
速さ得点では,制御焦点,課題方略の主効果および交互作用いずれも有意とならず,仮説は支持されなかった。
正確さ得点では,課題方略の主効果(F(1, 79)=13.55,p=.00,ηp2=.15)が有意となり,制御焦点の主効果(F(1, 79)=3.31,p=.07,ηp2=.04)が有意傾向であった。課題方略では,熱望方略よりも警戒方略のほうが正確さのパフォーマンスが高く(ミスの数が少なく),制御焦点では,促進焦点よりも防止焦点のほうが正確さのパフォーマンスが高かった(ミスの数が少なかった)。交互作用は有意とならなかった。Figure 1に示されている通り,防止焦点では警戒方略を使用すると制御適合が生じ,他の組み合わせと比べて正確さのパフォーマンスが最も高くなる(ミスが最も少なくなる)ことが示され,仮説が支持された。
考 察
速さにおいては仮説が支持されなかった。本研究ではお手本通りに図形を模写する点描写課題を用いたため,速くやるという方略が用いにくい課題であった。今後は使用する課題とその方略をさらに精査した上で検討することが望まれる。