[PC53] 小学校における教育相談担当者による影響方略が学校組織における教育相談の定着化に及ぼす影響Ⅰ
キーワード:教育相談定着化, 上方向の影響方略, 校長のリーダーシップ
目 的
教育相談は,人的資源への依存傾向にあり,援助サービスが不安定な原因の一端を担っている。学校組織における教育相談の定着は喫緊の課題であることから,本研究では教育相談の定着化に関する事項について,担当者から校長へ向けた影響方略の検討を行った。
方 法
公立小学校(747校)の,校長/教育相談担当者(以下担当者)を対象に,平成27年3~4月に郵送法によるアンケート調査を実施し,298校(回収率40%),587名(回収39%)から協力を得た。アンケートには,回答者の属性に関するフェイス項目(性別・年齢・学校規模等),教育相談の定着度,担当者の役割認識,学校風土,担当者の力量,協働促進に関する校長のリーダーシップ,担当者による影響方略,校長の対応に関する項目が含まれている。影響方略は使用頻度についてリッカート法(5件法)を用い【1:全くない-3:どちらでもない-5:よくある】から回答を求めた。
結 果
影響方略について,因子分析(最尤法 プロマックス回転)を行った。校長/担当者の認知が異なる可能性から,因子構造は個別に検討した。因子数の決定は,固有値,MAP,因子項目の解釈妥当性,最尤法の適合指標に基づき,校長・担当者ともに5因子構造による解釈が妥当であると判断し因子の命名を行った。
担当者による影響方略認知 第一因子は,「気分を害さないよう」等の項目内容から,情緒的方略と命名した。第二因子は,「校長にとっても有益であることを説明」などの項目から,社会的交換と命名した。第三因子は,「論理的に説明」などの項目から,論理的方略と命名した。第四因子は,「断れないような,強いプレッシャーをかけた」など,校長をコントロールしようとする項目から,操作的方略と命名した。第五因子は,「アドバイスを求める」など校長を相談に巻き込む項目から,双方向的方略と命名した。
校長による影響方略認知 担当者による因子構造と共通点が認められたが,対象者側の視点から解釈を試みた。因子に負荷する項目の違い(表1)から,情緒的方略に対応する因子を迎合,社会的交換を社会的交換(交渉),操作的方略を圧力,論理的方略を合理的方略,双方向的方略を相談と命名した。
考 察
担当者側で情緒的方略に負荷する方略の一部が,校長側で他の3因子に負荷していた。気遣い等は迎合,校長の負担感軽減に関する項目は社会的交換(交渉),友好的関係の強調は,圧力に対する負荷量が大きかった。これらの結果は,同一行動に対し,校長/担当者が異なる認識をもつことを示し,行為者による対象者への認知を高めるなど,知見の実践への応用にも配慮を要することが示唆された。
JSPS科研費(課題No.24530827)の助成をうけた
教育相談は,人的資源への依存傾向にあり,援助サービスが不安定な原因の一端を担っている。学校組織における教育相談の定着は喫緊の課題であることから,本研究では教育相談の定着化に関する事項について,担当者から校長へ向けた影響方略の検討を行った。
方 法
公立小学校(747校)の,校長/教育相談担当者(以下担当者)を対象に,平成27年3~4月に郵送法によるアンケート調査を実施し,298校(回収率40%),587名(回収39%)から協力を得た。アンケートには,回答者の属性に関するフェイス項目(性別・年齢・学校規模等),教育相談の定着度,担当者の役割認識,学校風土,担当者の力量,協働促進に関する校長のリーダーシップ,担当者による影響方略,校長の対応に関する項目が含まれている。影響方略は使用頻度についてリッカート法(5件法)を用い【1:全くない-3:どちらでもない-5:よくある】から回答を求めた。
結 果
影響方略について,因子分析(最尤法 プロマックス回転)を行った。校長/担当者の認知が異なる可能性から,因子構造は個別に検討した。因子数の決定は,固有値,MAP,因子項目の解釈妥当性,最尤法の適合指標に基づき,校長・担当者ともに5因子構造による解釈が妥当であると判断し因子の命名を行った。
担当者による影響方略認知 第一因子は,「気分を害さないよう」等の項目内容から,情緒的方略と命名した。第二因子は,「校長にとっても有益であることを説明」などの項目から,社会的交換と命名した。第三因子は,「論理的に説明」などの項目から,論理的方略と命名した。第四因子は,「断れないような,強いプレッシャーをかけた」など,校長をコントロールしようとする項目から,操作的方略と命名した。第五因子は,「アドバイスを求める」など校長を相談に巻き込む項目から,双方向的方略と命名した。
校長による影響方略認知 担当者による因子構造と共通点が認められたが,対象者側の視点から解釈を試みた。因子に負荷する項目の違い(表1)から,情緒的方略に対応する因子を迎合,社会的交換を社会的交換(交渉),操作的方略を圧力,論理的方略を合理的方略,双方向的方略を相談と命名した。
考 察
担当者側で情緒的方略に負荷する方略の一部が,校長側で他の3因子に負荷していた。気遣い等は迎合,校長の負担感軽減に関する項目は社会的交換(交渉),友好的関係の強調は,圧力に対する負荷量が大きかった。これらの結果は,同一行動に対し,校長/担当者が異なる認識をもつことを示し,行為者による対象者への認知を高めるなど,知見の実践への応用にも配慮を要することが示唆された。
JSPS科研費(課題No.24530827)の助成をうけた