The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PC(01-64)

ポスター発表 PC(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 3:30 PM - 5:30 PM 展示場 (1階展示場)

[PC55] 人格特性的自己効力感を高める体験とは

教育実習で育まれる共同体感覚に注目して

青木多寿子1, 高山瑞己#2 (1.岡山大学, 2.福山市立水呑小学校)

Keywords:人格特性的自己効力感, 共同体感覚, 貢献感

 人格特性的自己効力感(以下,SGSE)とは具体的な個々の課題や状況に依存せず,日常場面でより長期に,より一般化した行動に関わる自己効力感である(成田ほか,1995)。本稿では複数の他者と協力して1つのことを成し遂げるような体験が,この自己効力感を育むと考えた。なぜなら,このような場面には他者や集団が関わってくる。つまり,この「人」の存在は,具体的な個々の課題や状況を超えており,加えて他の人と作り上げる体験では,共同体感覚が生起しやすいからである。
 共同体感覚とは「自分のことだけではなく,常に他人のことも考えられる。他者は私を支え,私も他者とのつながりの中で他者に貢献できていると感じられること,私と他者とは相互協力関係にあるということ(岸見,2010)」である。高坂(2011)は,この共同体感覚には,所属感・信頼感,自己受容,貢献感の3因子があることを示している。本稿はSGSEには「貢献感」が重要だと考えた。
 また,他者を協力して一つのことを成し遂げる体験場面として,教員養成学部の小学校コースでの5週間の教育実習(必修)を取り上げた。この実習では,1学級に6人程度の小グループを形成し,実習期間の前から教材研究や指導案づくりを行う。実習期間中も,授業の準備,反省会等,仲間で力を合わせてゆく。まさに,他者と力を合わせる場面と言える。さらにその際,積極性やグループ内の役割の有無もSGSEに関わっている可能性を考えて,併せて検討した。
方   法
参加者 H大学教育学部生の3回生全138名(男性54名,女性84名)。実習終了後の2014年10月中旬に質問紙調査を実施した。分析の対象となったのは126(男性49名,女性77名)名である。
質問紙 SGSEは三好(2003)の人格特性的自己効力感尺度,共同体感覚尺度は高坂(2011)を用いた。加えて実習中の役割の有無と実習に対する積極性を尋ねた。
結   果
 先行研究に従い,SGSEは1因子,共同体感覚は3因子に固定して因子分析を行った。その結果,共同体感覚は高坂(2011)と同じ3因子が得られた。
1)共同体感覚とSGSEの関係
 SGSEの得点を従属変数,共同体感覚の下位因子得点を独立変数として重回帰分析を行った。その結果,自己受容から SGSEへの強いパスが有意であった。このことから,SGSEには「自己受容」だけが関係していることが示された。
2)役割の有無について
 役割の有無について群分けを行ったところ,役割ありは45名,無しが81名であった。次ぎにこの群別に上記の重回帰分析を行った。その結果,両群とも,自己受容からSGSEに強いパスが見られた。つまり,この分析でも「自己受容」だけが関係していることがうかがえた。
3)積極性について
 積極性の高低について,積極性の得点をベースに,高群(46名),中群(41名),低群(39名)に分けた。その後,群別に上記の重回帰分析を行った。その結果,自己受容がSGSEに関係していることが示された。しかし,βに注目すると,高群が特に高いことがわかった。高群では所属感・信頼感も関わっていた。
考   察
 個々の課題や状況を超えた長期的な自己効力感には,他者と協力し合い,貢献するような体験,つまり共同体感覚の「貢献感」が関わっていると考えた。しかし関わっていたのは「自己受容」であった。このことは,他者に貢献する体験というよりも,共同体の仲間と力を合わせる中で,自分をありのままに見つめ,受け容れてもらい,等身大の自分を好きになる,このことが人格特性的自己効力感を育むことに繋がることを示唆している。