[PC62] 通常学級に在籍する児童の実態把握に関する現状と課題
支援につながる個別の指導計画の作成に向けて
キーワード:通常学級, 実態把握, 課題
目 的
個別の指導計画は,特別なニーズのある児童生徒の指導目標や指導内容,方法が記載されたもの(文部科学省, 2004)である。個別の指導計画の作成は小学校では83.7%であり(文部科学省, 2016),通常学級担任も個別の指導計画作成にかかわっている。個別の指導計画の作成に関する具体的な方法は学校が児童生徒の指導効果があがるように考えるべきもの(文部科学省, 2008)とされており,明示されていない。また,特別支援教育コーディネーターの調査から,担任教師は個別の指導計画作成に対して,不安感,抵抗感,授業への活用や引き継ぎにつながらないと考えていることが示されており(池田ら, 2012),担任教師による個別の指導計画の作成は行われているが,児童生徒の支援につながる内容となっているのかは十分検討されていない。そこで,本研究では,小学校通常学級の担任教師が児童の実態把握について個別の指導計画にどのようなことを記述しているのか,心理の専門家を交えた児童の実態把握検討会を行うことにより,実態把握が変化するのかについて検討し,支援につながる児童の実態把握の在り方を考察する。
方 法
1.対象者と実施時期:対象者;首都圏のA公立小学校の担任教師8名である。2016年5月に行った。
2.検討内容:各担任教師の対象児童に関する個別の指導計画の実態・課題(学習面)の記述と心理の専門家を交えた検討会における担任教師の発言を分析した。
3.分析方法:個別の指導計画に記述された内容について,国語と算数に分け,国語の内容は「文の読み」「文の読み取り」「筆圧・字の形」「ひらがなカタカナ書字」「漢字書字」「文視写」「作文」「指示理解」「会話」に分けた。算数の内容は「数唱・数概念」「足し算引き算」「かけ算割り算」「計算問題」「計算スピード」「算数文章題」「用語理解」に分けた。また,その他として「学習定着」「学習意欲」に分けた。1回でも記述や発言が見られた場合は有りとし,個別の指導計画の記述と検討会での発言の出現内容を比較した。
結 果
1.個別の指導計画の記述内容:全担任教師の個別の指導計画に国語もしくは算数に関する記述がなされていた。国語に関しては,2つから4つの内容を記述しており,「文の読み取り」が4名,「作文」の困難さの記述が3名であった。算数に関しては,2つから3つの内容を記述しており,「計算問題」が4名,「文章題」の困難さの記述が3名であった。
2.検討会の発言内容:全担任教師が,個別の指導計画で記載されていない内容について発言していた。特徴的な変化として,国語では,「文の読み取り」が困難である場合,低学年であると「文を読む」こと自体の困難さが発言された。「作文」が困難である場合は,「漢字書字」自体の困難さが発言される場合があった。3名の教師に関しては,個別の指導計画に書字の困難さを記載していなかったが,検討会では書字の困難についても発言された。算数では,「計算問題」の困難さを記述している場合は,検討会によりどの四則計算の困難さがあるのか,もしくは計算スピードの問題であるのかが発言された。
考 察
個別の指導計画の記述よりも検討会での発言の項目が増加した。このことは,個別の指導計画の実態把握の記載が十分ではないと言える。また,記載された内容は「計算ができない」のように具体的に何の学習課題に躓いているのかを明示していないことが明らかになった。一方で,検討会では,担任教師による児童の具体的な学習課題の発言がなされていることから,心理の専門家や特別支援教育コーディネーター等と実態把握検討を行う中で,担任教師が具体的な課題に目を向けることが可能であると言える。個別の指導計画が実際の支援につながらない,引き継ぎに活用できていない(池田ら, 2012)という課題を解決するためにも担任教師に実態把握の観点を明示し,専門家を活用した実態把握の検討会が有効であることが示唆された。
(KOSHIKAWA Kazue, HAGA Akiko)
個別の指導計画は,特別なニーズのある児童生徒の指導目標や指導内容,方法が記載されたもの(文部科学省, 2004)である。個別の指導計画の作成は小学校では83.7%であり(文部科学省, 2016),通常学級担任も個別の指導計画作成にかかわっている。個別の指導計画の作成に関する具体的な方法は学校が児童生徒の指導効果があがるように考えるべきもの(文部科学省, 2008)とされており,明示されていない。また,特別支援教育コーディネーターの調査から,担任教師は個別の指導計画作成に対して,不安感,抵抗感,授業への活用や引き継ぎにつながらないと考えていることが示されており(池田ら, 2012),担任教師による個別の指導計画の作成は行われているが,児童生徒の支援につながる内容となっているのかは十分検討されていない。そこで,本研究では,小学校通常学級の担任教師が児童の実態把握について個別の指導計画にどのようなことを記述しているのか,心理の専門家を交えた児童の実態把握検討会を行うことにより,実態把握が変化するのかについて検討し,支援につながる児童の実態把握の在り方を考察する。
方 法
1.対象者と実施時期:対象者;首都圏のA公立小学校の担任教師8名である。2016年5月に行った。
2.検討内容:各担任教師の対象児童に関する個別の指導計画の実態・課題(学習面)の記述と心理の専門家を交えた検討会における担任教師の発言を分析した。
3.分析方法:個別の指導計画に記述された内容について,国語と算数に分け,国語の内容は「文の読み」「文の読み取り」「筆圧・字の形」「ひらがなカタカナ書字」「漢字書字」「文視写」「作文」「指示理解」「会話」に分けた。算数の内容は「数唱・数概念」「足し算引き算」「かけ算割り算」「計算問題」「計算スピード」「算数文章題」「用語理解」に分けた。また,その他として「学習定着」「学習意欲」に分けた。1回でも記述や発言が見られた場合は有りとし,個別の指導計画の記述と検討会での発言の出現内容を比較した。
結 果
1.個別の指導計画の記述内容:全担任教師の個別の指導計画に国語もしくは算数に関する記述がなされていた。国語に関しては,2つから4つの内容を記述しており,「文の読み取り」が4名,「作文」の困難さの記述が3名であった。算数に関しては,2つから3つの内容を記述しており,「計算問題」が4名,「文章題」の困難さの記述が3名であった。
2.検討会の発言内容:全担任教師が,個別の指導計画で記載されていない内容について発言していた。特徴的な変化として,国語では,「文の読み取り」が困難である場合,低学年であると「文を読む」こと自体の困難さが発言された。「作文」が困難である場合は,「漢字書字」自体の困難さが発言される場合があった。3名の教師に関しては,個別の指導計画に書字の困難さを記載していなかったが,検討会では書字の困難についても発言された。算数では,「計算問題」の困難さを記述している場合は,検討会によりどの四則計算の困難さがあるのか,もしくは計算スピードの問題であるのかが発言された。
考 察
個別の指導計画の記述よりも検討会での発言の項目が増加した。このことは,個別の指導計画の実態把握の記載が十分ではないと言える。また,記載された内容は「計算ができない」のように具体的に何の学習課題に躓いているのかを明示していないことが明らかになった。一方で,検討会では,担任教師による児童の具体的な学習課題の発言がなされていることから,心理の専門家や特別支援教育コーディネーター等と実態把握検討を行う中で,担任教師が具体的な課題に目を向けることが可能であると言える。個別の指導計画が実際の支援につながらない,引き継ぎに活用できていない(池田ら, 2012)という課題を解決するためにも担任教師に実態把握の観点を明示し,専門家を活用した実態把握の検討会が有効であることが示唆された。
(KOSHIKAWA Kazue, HAGA Akiko)