[PC66] 不登校経験者のその後の適応,不登校経験への評価
進路希望の達成状況との関連
Keywords:不登校経験者, 進路状況, 通信制高校
問題・目的
小中学校における不登校児童生徒のその後の進路の1つに通信制高校がある。本研究では,小中学校で不登校を経験し,通信制高校に進学・卒業したものを対象に質問紙調査を行い,不登校経験者のその後(中学卒業後,高校卒業後,現在)の進路が希望通りに進んだのか,また進路への不登校経験の影響をどのように感じているのかについてまず検討を行った。その上で,その後の進路が希望通りに進んだのかが不登校経験者の現在の生活適応感や不登校経験への評価にどのように関連しているのかについて検討を行うこととする。
方 法
(1) 調査方法 郵送による質問紙調査,(2) 調査時期 平成26年7月,(3) 調査対象・分析対象 A通信制高等学校の平成19~24年度卒業生2,020名に発送し314名から回答を得た(回収率15.5%)。そのうち,小中学校での不登校経験者236名(75.6%)の回答を分析した。(4) 調査内容 ①進路希望達成状況(中学卒業後,高校卒業後,現在の進路が希望通りかを4段階評定),②不登校の影響(進路に不登校が影響しているかを4段階評定),③現在の生活適応感(安達(1998)を参考に作成した15項目,4件法),④不登校経験への評価(伊藤ら(2013)の11項目,4件法)
結果・考察
因子分析(最尤法・プロマックス回転)の結果,現在の生活適応感は「学校・職場での適応」「人間関係の充実」「将来展望」の3因子が,不登校経験への評価は「プラスの経験」「マイナスの経験」「家族への感謝」の3因子が得られた。
(1) 進路希望達成状況と不登校の影響の認知 中学卒業後,高校卒業後,現在の進路それぞれについて,“希望通り”“少し違った”“かなり・まったく違った”に分類したところ,“かなり・まったく違った”と回答した割合は中学卒業後22.2%,高校卒業後17.0%,現在32.9%であり,不登校経験者の約2~3割が希望通りの進路とはかなり違っていると感じている。さらに,“少し違った”“かなり・まったく違った”と回答した人に不登校が影響していると思うかをたずねたところ,いずれの群も中学卒業後の進路に対し約8割が影響ありと回答しているが,“少し違った”群では,不登校の影響を感じている割合を見ると,高校卒業後は約5割,現在は約4割と減少している。“かなり・まったく違った”群では,高校卒業後,現在とも不登校の影響を感じている割合が約6割となり,希望と違った進路に進んでいる人ほど不登校の影響を感じているものと考えられる。
(2) 中学卒業後,現在の進路希望達成状況と現在の生活適応感,不登校経験への評価との関連 現在の生活適応感3因子,不登校経験への評価3因子について,中学卒業後と現在の進路希望達成状況3群による1要因分散分析を行ったところ,中学卒業後の進路希望達成状況による差が見られたのは不登校経験への評価「マイナスの経験」「家族への感謝」のみで,現在の進路希望達成状況による差が見られたのは現在の生活適応感「学校・職場の適応」「人間関係の充実」「将来展望」,不登校経験への評価「プラスの経験」「マイナスの経験」であった。中学卒業後の進路ではなく,現在の進路が希望通りであるかが現在の生活適応感と関連し,また不登校経験をどのように捉えるかにも関連していること,“希望通り”の進路に進めた群は“かなり・まったく違う”群に比べ,不登校経験にプラスの意味を見出していることが示唆された。
小中学校における不登校児童生徒のその後の進路の1つに通信制高校がある。本研究では,小中学校で不登校を経験し,通信制高校に進学・卒業したものを対象に質問紙調査を行い,不登校経験者のその後(中学卒業後,高校卒業後,現在)の進路が希望通りに進んだのか,また進路への不登校経験の影響をどのように感じているのかについてまず検討を行った。その上で,その後の進路が希望通りに進んだのかが不登校経験者の現在の生活適応感や不登校経験への評価にどのように関連しているのかについて検討を行うこととする。
方 法
(1) 調査方法 郵送による質問紙調査,(2) 調査時期 平成26年7月,(3) 調査対象・分析対象 A通信制高等学校の平成19~24年度卒業生2,020名に発送し314名から回答を得た(回収率15.5%)。そのうち,小中学校での不登校経験者236名(75.6%)の回答を分析した。(4) 調査内容 ①進路希望達成状況(中学卒業後,高校卒業後,現在の進路が希望通りかを4段階評定),②不登校の影響(進路に不登校が影響しているかを4段階評定),③現在の生活適応感(安達(1998)を参考に作成した15項目,4件法),④不登校経験への評価(伊藤ら(2013)の11項目,4件法)
結果・考察
因子分析(最尤法・プロマックス回転)の結果,現在の生活適応感は「学校・職場での適応」「人間関係の充実」「将来展望」の3因子が,不登校経験への評価は「プラスの経験」「マイナスの経験」「家族への感謝」の3因子が得られた。
(1) 進路希望達成状況と不登校の影響の認知 中学卒業後,高校卒業後,現在の進路それぞれについて,“希望通り”“少し違った”“かなり・まったく違った”に分類したところ,“かなり・まったく違った”と回答した割合は中学卒業後22.2%,高校卒業後17.0%,現在32.9%であり,不登校経験者の約2~3割が希望通りの進路とはかなり違っていると感じている。さらに,“少し違った”“かなり・まったく違った”と回答した人に不登校が影響していると思うかをたずねたところ,いずれの群も中学卒業後の進路に対し約8割が影響ありと回答しているが,“少し違った”群では,不登校の影響を感じている割合を見ると,高校卒業後は約5割,現在は約4割と減少している。“かなり・まったく違った”群では,高校卒業後,現在とも不登校の影響を感じている割合が約6割となり,希望と違った進路に進んでいる人ほど不登校の影響を感じているものと考えられる。
(2) 中学卒業後,現在の進路希望達成状況と現在の生活適応感,不登校経験への評価との関連 現在の生活適応感3因子,不登校経験への評価3因子について,中学卒業後と現在の進路希望達成状況3群による1要因分散分析を行ったところ,中学卒業後の進路希望達成状況による差が見られたのは不登校経験への評価「マイナスの経験」「家族への感謝」のみで,現在の進路希望達成状況による差が見られたのは現在の生活適応感「学校・職場の適応」「人間関係の充実」「将来展望」,不登校経験への評価「プラスの経験」「マイナスの経験」であった。中学卒業後の進路ではなく,現在の進路が希望通りであるかが現在の生活適応感と関連し,また不登校経験をどのように捉えるかにも関連していること,“希望通り”の進路に進めた群は“かなり・まったく違う”群に比べ,不登校経験にプラスの意味を見出していることが示唆された。