The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PC(65-84)

ポスター発表 PC(65-84)

Sat. Oct 8, 2016 3:30 PM - 5:30 PM 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PC70] 中学生の学校適応と認知力・安心感の関係

Q-Uの得点をもとに

寺井朋子 (武庫川女子大学)

Keywords:学校適応, Q-U, 対人信頼感

問題と目的
 一日の大半を学校で過ごす子どもにとって,居心地の良い学校生活は大切なことである。これは,いじめや不登校などの問題とも関連しているが,1人1人の生徒には個性があり,単純なマニュアルでは対応できないことは当然である。
 ここでは,Q-U(楽しい学校生活を送るためのアンケート:河村茂雄著 図書文化)を用いて,承認・被侵害得点とその他の得点の関連を検討し,特に不満足群の生徒の特徴を明らかとすることを目的としている。
方   法
手続き:201X年,中国地方の公立中学校にて,担任の都合の良い時間に実施する留め置き調査であった。
調査対象者:公立中学校1~3年のうち,不備があった8名を除いた384名(1年男子85名・女子58名,2年男子63名・女子61名,3年男子57名・女子60名)。
調査項目:今回,オリジナルで作成した認知力21項目(プランニング能力,社会的視点などから作成),安心感28項目(「他人は自分をだましたりしないと感じることができている」などの対人信頼感,所属感,学校生活満足度などから作成)を質問紙調査で実施した。Q-Uの結果については,中学校が実施した際の結果が筆者へ郵送され,学年とクラスと出席番号をもとに,質問紙調査の結果とデータを接続させた。
倫理的配慮:事前に学校長の許可を得て,調査に関して学校長から担任やPTAへの説明がなされた。さらに,実施時には,クラスごとに束にした質問紙の上に担任への依頼文をつけ,「調査への参加は自由であるため,答えたくない場合は白紙のまま提出してよいこと」を中学生へ伝えるように記載していた。また,Q-Uデータとの接続や,他のアンケートとの接続のために,学年・クラス・出席番号を記載する欄があったが,個人を特定するためのものではないことも担任から説明するように依頼した。これらの一連の手続きについては,武庫川女子大学教育研究所(実施時の所属先)の倫理審査で許可を得ている。
結   果
 Q-Uの承認得点の平均は,1年男子34.0点,女子36.3点、2年男子35.0点,女子36.4点,3年男子34.2点,女子34.8点,被侵害得点の平均は1年男子20.1点,女子18.9点,2年男子21.0点,女子18.5点,3年男子19.5点,女子20.0点であった。また,Q-Uの承認得点と非侵害得点の基準点である33.5点と21.5点を区切りとして,4群に分類した(例えば,承認得点が高く,非侵害得点が低い場合は学級生活満足群とされる)。その結果,3学年全体では学級生活満足群が186名,非承認群が52名,侵害行為認知群が51名,学級生活不満足群が95名となった。
 次に,認知力と安心感のそれぞれについて因子分析を行ったところ,認知力では4因子,安心感では5因子が得られた。ここで,Q-Uの4群それぞれにおける各因子の平均得点を算出した(Table1)。これらについて,Q-Uの4群を独立変数とする1要因の分散分析を行い,有意であったものに対して多重比較を行った。その結果,認知力の因子では差はみられなかったが,安心感の因子において不満足群の得点は満足群や侵害行為認知群よりも低かった。
考   察
 不満足群の認知力においては他の群と得点の差はなく,社会的解読は満足群とほぼ同じ値であった。このことから,不満足群の生徒が認知的に誤った情報の獲得や,不適切な表出をしているとは考えづらい。
 一方,安心感では,対人信頼感と家庭安定感で不満足群の得点が低かった。不満足群の生徒は他者への不信感を持っている様子がうかがわれた。