[PC75] 非専門家(大学生)による学校支援ボランティアに関する研究(9)
2年間の活動を通しての学生の意識・態度の変容及び気がかりな子どもへの係わり方の学び
Keywords:学校支援ボランティア, 非専門家(大学生), 活動を通しての発達
問題と目的
近年,学校現場では,特別な支援を要する子どもへの支援の1つとして,大学生などの非専門家による学校支援ボランティア活動が広がりを見せている(文部科学省,2007)。著者らの所属する福井大学においても,教職志望の大学生が支援を行う『ライフパートナー(以下LP)事業』を展開している。これまで,LP活動の対象となる児童生徒の特徴や活動場所ごとの活動内容(大西ら,2013,2015),LP活動が効果的に展開した事例の特徴(廣澤ら,2012,2013,2015;笹原ら,2012,2013,2015)及び活動を通しての学生の学び(大西,2015)について報告されている。本研究では,非専門家(大学生)による学校支援ボランティア(ライフパートナー)の活動を通しての,学生の意識・態度の変容及び気がかりな子どもへの係わり方の学びについて,2年間の活動を行った学生を対象にした調査に基づき実証的に明らかする。
方 法
1.調査対象者
H25年度学部教職必修科目「学校教育相談研究」の前期・後期受講学生合計151名の内,LPとして活動した122名。なお,分析ごとにデータ数は異なる。
2.調査内容
(1) LP活動における効力感:教師効力感(Ashton, 1985)や保育者効力感(三木・桜井,1998)等の研究を参考にしながら,授業を担当する4人の研究者で話し合い,LP学生自身が自信を持ってLP活動を遂行できるかどうかの確信や信念を測定する22項目を作成した。「とてもよく当てはまる」から「全く当てはまらない」までの5段階で評定を求めた。
(2) LP活動におけるスキル:LP活動において求められるであろう様々な行動について,授業を担当する4人の研究者で話し合い,48項目を作成した。現在の状態について,「とてもよく当てはまる」から「全く当てはまらない」までの5段階で評定を求めた。また,活動後に,「今回のLP活動を通して自分に足りないと思い,今後磨きたいと思うスキル」にチェックをつけるように求めた。
(3) 活動して学んだことや課題:自由記述で回答を求めた。
(4) 2年目の学生のみを対象とした項目:1年目と2年目の活動で,子どもに対する捉え方が変わった点,1年目と2年目の活動で,自分自身や自分の活動に対するとらえ方が変わった点,2年間続けることで新たに気づいたこと,学んだことについて自由記述で回答を求めた。
3.手続き
授業時間に質問紙調査を実施した。上記内容(1)(2)については,LP活動前後で実施し,(3)(4)については活動後にのみ実施した。
結果と考察
(1) スキルの差異
1年目の学生(N= 74)と2年目の学生(N=9)のスキルの差異を検討したところ,13項目において,2年目の学生の方が統計的に有意に高得点であった。
(2) 活動2年目の学生に対する自身の活動に対する質問への自由記述回答の分析
① 1年目と2年目の活動で,子どもに対する捉え方が変わった点
2年目になって,子どもの行動の背景をより考えられるようになったこと,自身の支援者としての立ち位置についてより明確になったという回答が見られた。
② 自分自身や自分の活動に対するとらえ方が変わった点
2年目になって,活動の目的についてより考えるようになったこと,自身の係わり方についてより自覚的になったという記述がみられた。
③ 2年間続けることで新たに気づいたこと,学んだこと
2年目になって,係わる中で,子どもに対してや自身の活動に対する目標がどんどん変わっていくこと,それに合わせて自身の係わり方も変えていったこと,そのような調整ができるようになったことで活動に対する充実感がより高まったことなどの記述が見られた。
以上から,2年間の活動を経ることで子どもに対するスキルの向上が見られるとともに,子どもの行動の背景をより深く読み取れるようになり,子どもの特徴を考慮して活動を組み立てることができるようになることが示唆された。また,係わりが深まるなかで,子どもに提供すべき支援の内容が変化していくことを実感できていた点も特徴的であった。
近年,学校現場では,特別な支援を要する子どもへの支援の1つとして,大学生などの非専門家による学校支援ボランティア活動が広がりを見せている(文部科学省,2007)。著者らの所属する福井大学においても,教職志望の大学生が支援を行う『ライフパートナー(以下LP)事業』を展開している。これまで,LP活動の対象となる児童生徒の特徴や活動場所ごとの活動内容(大西ら,2013,2015),LP活動が効果的に展開した事例の特徴(廣澤ら,2012,2013,2015;笹原ら,2012,2013,2015)及び活動を通しての学生の学び(大西,2015)について報告されている。本研究では,非専門家(大学生)による学校支援ボランティア(ライフパートナー)の活動を通しての,学生の意識・態度の変容及び気がかりな子どもへの係わり方の学びについて,2年間の活動を行った学生を対象にした調査に基づき実証的に明らかする。
方 法
1.調査対象者
H25年度学部教職必修科目「学校教育相談研究」の前期・後期受講学生合計151名の内,LPとして活動した122名。なお,分析ごとにデータ数は異なる。
2.調査内容
(1) LP活動における効力感:教師効力感(Ashton, 1985)や保育者効力感(三木・桜井,1998)等の研究を参考にしながら,授業を担当する4人の研究者で話し合い,LP学生自身が自信を持ってLP活動を遂行できるかどうかの確信や信念を測定する22項目を作成した。「とてもよく当てはまる」から「全く当てはまらない」までの5段階で評定を求めた。
(2) LP活動におけるスキル:LP活動において求められるであろう様々な行動について,授業を担当する4人の研究者で話し合い,48項目を作成した。現在の状態について,「とてもよく当てはまる」から「全く当てはまらない」までの5段階で評定を求めた。また,活動後に,「今回のLP活動を通して自分に足りないと思い,今後磨きたいと思うスキル」にチェックをつけるように求めた。
(3) 活動して学んだことや課題:自由記述で回答を求めた。
(4) 2年目の学生のみを対象とした項目:1年目と2年目の活動で,子どもに対する捉え方が変わった点,1年目と2年目の活動で,自分自身や自分の活動に対するとらえ方が変わった点,2年間続けることで新たに気づいたこと,学んだことについて自由記述で回答を求めた。
3.手続き
授業時間に質問紙調査を実施した。上記内容(1)(2)については,LP活動前後で実施し,(3)(4)については活動後にのみ実施した。
結果と考察
(1) スキルの差異
1年目の学生(N= 74)と2年目の学生(N=9)のスキルの差異を検討したところ,13項目において,2年目の学生の方が統計的に有意に高得点であった。
(2) 活動2年目の学生に対する自身の活動に対する質問への自由記述回答の分析
① 1年目と2年目の活動で,子どもに対する捉え方が変わった点
2年目になって,子どもの行動の背景をより考えられるようになったこと,自身の支援者としての立ち位置についてより明確になったという回答が見られた。
② 自分自身や自分の活動に対するとらえ方が変わった点
2年目になって,活動の目的についてより考えるようになったこと,自身の係わり方についてより自覚的になったという記述がみられた。
③ 2年間続けることで新たに気づいたこと,学んだこと
2年目になって,係わる中で,子どもに対してや自身の活動に対する目標がどんどん変わっていくこと,それに合わせて自身の係わり方も変えていったこと,そのような調整ができるようになったことで活動に対する充実感がより高まったことなどの記述が見られた。
以上から,2年間の活動を経ることで子どもに対するスキルの向上が見られるとともに,子どもの行動の背景をより深く読み取れるようになり,子どもの特徴を考慮して活動を組み立てることができるようになることが示唆された。また,係わりが深まるなかで,子どもに提供すべき支援の内容が変化していくことを実感できていた点も特徴的であった。