[PC78] ストレスコーピング学習の実践と効果の検討
中学2年生を対象とした調査より
Keywords:ストレスマネジメント, ストレスコーピング, 中学生
問題と目的
中学生の時期は,様々な心身の発達上の変容と,それに伴う発達課題の混乱が顕著になる時期である。三浦・岡安(2011)は,これまでの学校現場におけるストレスマネジメント教育を概観し,認知的評価や様々なコーピングに関する包括的なストレスマネジメント教育を行うことの必要性に言及している。しかし,授業実施者が専門家である場合と学級担任や養護教諭等である場合の違いによる定着化や学習内容の継続という面での問題(三浦・岡安,2011)や学校現場におけるストレスマネジメント教育の時間の確保等(宮城・石垣・江藤・高倉・和氣・小林・笹澤,2012)の問題が指摘されている。
そこで,授業実施者である学級担任にできるだけ教材研究等の負担をかけないことや授業実施者の専門性の有無,限られた時間内での実施という点に配慮し,小泉・山田(2011)の「社会性と情動の学習(SEL-8S)」の学習単元である「ストレスマネジメント」,「問題防止」より3時間分のユニットを選択してその一部を改変し,ストレスコーピング学習として総合的な学習の時間に実施した。各授業のテーマは,①「ストレス」と「悲観的な考え方」を知ろう,②「ストレス」への対処法を学ぼう,③「悲観的な考え方」をポジティブな考え方に変えよう,の3点であった。本研究では,ストレスコーピング学習実施前と実施後のストレス反応得点とストレスコーピング得点の関係に注目し,その効果を検討した。
方 法
研究参加者 A県B市の公立中学校2年生147名(男子73名,女子74名)
質問紙 ストレスコーピング尺度(三浦・坂野・上里,1997),中学生用ストレス反応尺度(三浦・坂野・上里,1998)
実施時期 2015年11月~12月(週1回のプログラムを3週間にわたって実施し,その最初と最後に質問紙調査を実施した。)
結果および考察
ストレスコーピング学習実施前と実施後のストレスコーピング得点の比較 ストレスコーピング得点(前後)を従属変数,時期と性を独立変数とする2要因分散分析を行ったところ,「積極的対処」(F(1,145)=9.07,p= .00,ηp2= .06,95%CI [0.54,2.59])と「サポート希求」(F(1,145)= 18.22,p=.00,ηp2= .11,95%CI [1.05,2.85])において時期の主効果がみられ,いずれも実施後の得点が高かった。実施前と比べてストレスに対する積極的な働きかけと他者からサポートを求めようとする意識が高くなったことから,「ストレス」への対処法を学ぶという点については効果が認められたと思われる。
ストレスコーピング学習実施前と実施後のストレス反応得点の比較 ストレス反応得点(前後)を従属変数,時期と性を独立変数とする2要因分散分析を行ったところ,「抑うつ・不安」に時期と性の交互作用がみられ(F(1,145)= 10.81,p= .00,ηp2=.07,95%CI [0.08,1.33]),女子群において実施後の得点が実施前の得点より低かった。また「不機嫌・怒り」(F(1,145)= 4.94,p=.03,ηp2= .03,95%CI [0.05,1.14])と「無気力」(F(1,145)=4.57,p=.03,ηp2=.03,95%CI [0.57,2.05])において時期の主効果がみられ,いずれも実施後の得点が低かった。ストレス反応の「身体的反応」を除く「不機嫌・怒り」,「無気力」,「抑うつ・不安」について実施後の得点が低くなっていたことから,「悲観的な考え方」をポジティブな考え方に変えることによって,身体的反応には効果が認められなかったが,その他の領域については効果が認められたと思われる。
中学生の時期は,様々な心身の発達上の変容と,それに伴う発達課題の混乱が顕著になる時期である。三浦・岡安(2011)は,これまでの学校現場におけるストレスマネジメント教育を概観し,認知的評価や様々なコーピングに関する包括的なストレスマネジメント教育を行うことの必要性に言及している。しかし,授業実施者が専門家である場合と学級担任や養護教諭等である場合の違いによる定着化や学習内容の継続という面での問題(三浦・岡安,2011)や学校現場におけるストレスマネジメント教育の時間の確保等(宮城・石垣・江藤・高倉・和氣・小林・笹澤,2012)の問題が指摘されている。
そこで,授業実施者である学級担任にできるだけ教材研究等の負担をかけないことや授業実施者の専門性の有無,限られた時間内での実施という点に配慮し,小泉・山田(2011)の「社会性と情動の学習(SEL-8S)」の学習単元である「ストレスマネジメント」,「問題防止」より3時間分のユニットを選択してその一部を改変し,ストレスコーピング学習として総合的な学習の時間に実施した。各授業のテーマは,①「ストレス」と「悲観的な考え方」を知ろう,②「ストレス」への対処法を学ぼう,③「悲観的な考え方」をポジティブな考え方に変えよう,の3点であった。本研究では,ストレスコーピング学習実施前と実施後のストレス反応得点とストレスコーピング得点の関係に注目し,その効果を検討した。
方 法
研究参加者 A県B市の公立中学校2年生147名(男子73名,女子74名)
質問紙 ストレスコーピング尺度(三浦・坂野・上里,1997),中学生用ストレス反応尺度(三浦・坂野・上里,1998)
実施時期 2015年11月~12月(週1回のプログラムを3週間にわたって実施し,その最初と最後に質問紙調査を実施した。)
結果および考察
ストレスコーピング学習実施前と実施後のストレスコーピング得点の比較 ストレスコーピング得点(前後)を従属変数,時期と性を独立変数とする2要因分散分析を行ったところ,「積極的対処」(F(1,145)=9.07,p= .00,ηp2= .06,95%CI [0.54,2.59])と「サポート希求」(F(1,145)= 18.22,p=.00,ηp2= .11,95%CI [1.05,2.85])において時期の主効果がみられ,いずれも実施後の得点が高かった。実施前と比べてストレスに対する積極的な働きかけと他者からサポートを求めようとする意識が高くなったことから,「ストレス」への対処法を学ぶという点については効果が認められたと思われる。
ストレスコーピング学習実施前と実施後のストレス反応得点の比較 ストレス反応得点(前後)を従属変数,時期と性を独立変数とする2要因分散分析を行ったところ,「抑うつ・不安」に時期と性の交互作用がみられ(F(1,145)= 10.81,p= .00,ηp2=.07,95%CI [0.08,1.33]),女子群において実施後の得点が実施前の得点より低かった。また「不機嫌・怒り」(F(1,145)= 4.94,p=.03,ηp2= .03,95%CI [0.05,1.14])と「無気力」(F(1,145)=4.57,p=.03,ηp2=.03,95%CI [0.57,2.05])において時期の主効果がみられ,いずれも実施後の得点が低かった。ストレス反応の「身体的反応」を除く「不機嫌・怒り」,「無気力」,「抑うつ・不安」について実施後の得点が低くなっていたことから,「悲観的な考え方」をポジティブな考え方に変えることによって,身体的反応には効果が認められなかったが,その他の領域については効果が認められたと思われる。