[PC80] 2つの教職大学院生の学級経営観
学部新卒学生への担任教育について
キーワード:学級経営, 学部新卒学生, 担任教育
問題と目的
学級は児童生徒の学校生活の基盤である。教科内外指導と学級経営のすべてを担う小学校教師にとって,教員養成段階の学級経営の講義は重要な役割を果たすと考える。学級経営の代表的な研究としては河村(2010)などがあるが,藤森(2014)は学級経営そのものに対して研究の蓄積が少ないと述べている。そのような中,文部科学省(2006)は,教職大学院において共通的に開設すべき講義科目領域の一つとして,『学級経営,学校経営に関する領域』をあげ,学級経営領域を教職大学院の必修科目としている。そして教職大学院は,平成28年度には全国で45校設置されて,学級経営を担う担任教師の養成機関として期待されている。
方 法
本研究は,2つの教職大学院学部新卒学生の学級経営観を検討することで,教員養成段階における学級経営領域の指導方法の確立を目指すものである。
研究方法:質的研究方法であるKJ法(川喜多,1967)を用いた。KJ法を用いた理由は,調査対象の全体を明らかに出来るとされている(塩満,2013)ためである。「教職大学院生が,どのような学級経営観を持っているか」というリサーチ・クェッションのもと,A校B校2つの教職大学院の学部新卒学生に質問紙等で実施した。実施日は,A校は2014年6月,B校2016年5月である。いずれも,学級経営の講義および教職専門実習前である。
研究協力者:学部新卒学生1年生A校9名(男4名,女5名),B校13名(男7名,女6名)である。なお,A校の学部新卒学生の学級経営観は,石川(2015)が明らかにしている。
結果と考察
図1にA校,図2にB校の学部新卒学生の学級経営観を示し,分析資料から大カテゴリーを≪≫,中カテゴリーを【】,小グループを<>で表した。
(1) 学級経営における担任教師の役割の自覚
AB両校の学部新卒生が重視していたのは次の2点;学級経営における≪担任の姿勢≫と≪担任の責任≫であり,また,≪学級経営の基礎≫も重視されていた。具体的には,A校では【担任の教育理念】として【児童のための学級】の重要性をあげる一方,B校では【信頼関係とルールの確立・学級開き】等,実践的な手立てをあげていた。
A校では,教育学部出身以外の学部新卒学生も多く,学級経営を理念的に捉えている傾向が看取される。一方,B校においては,全員が教育学部出身の学部新卒学生のため,具体的な手立てとして,学級経営を捉えていることが考えられる。
(2) 学部新卒学生の不安やとまどい
A校の学部新卒学生は,≪課題における担任の対応力と限界≫をあげ,さらに9名中6名が<学級崩壊>をあげた。一方,B校の学部新卒学生は,≪よくわからないため学んでいきたい≫と【受けたことがない】または【イメージとして】学級経営を捉えていた。
曽山(2014)は,新任小学校教師が担任クラスでの困難が大きく,かつ周囲のサポートが得られにくいときには,担任としての責任の範囲に深く悩むことを示唆している。学部新卒学生においても何らかの不安やとまどいを抱えており,教員養成段階において学生の実態に合った,きめ細やかな学級経営の指導が必要であろう。
学級は児童生徒の学校生活の基盤である。教科内外指導と学級経営のすべてを担う小学校教師にとって,教員養成段階の学級経営の講義は重要な役割を果たすと考える。学級経営の代表的な研究としては河村(2010)などがあるが,藤森(2014)は学級経営そのものに対して研究の蓄積が少ないと述べている。そのような中,文部科学省(2006)は,教職大学院において共通的に開設すべき講義科目領域の一つとして,『学級経営,学校経営に関する領域』をあげ,学級経営領域を教職大学院の必修科目としている。そして教職大学院は,平成28年度には全国で45校設置されて,学級経営を担う担任教師の養成機関として期待されている。
方 法
本研究は,2つの教職大学院学部新卒学生の学級経営観を検討することで,教員養成段階における学級経営領域の指導方法の確立を目指すものである。
研究方法:質的研究方法であるKJ法(川喜多,1967)を用いた。KJ法を用いた理由は,調査対象の全体を明らかに出来るとされている(塩満,2013)ためである。「教職大学院生が,どのような学級経営観を持っているか」というリサーチ・クェッションのもと,A校B校2つの教職大学院の学部新卒学生に質問紙等で実施した。実施日は,A校は2014年6月,B校2016年5月である。いずれも,学級経営の講義および教職専門実習前である。
研究協力者:学部新卒学生1年生A校9名(男4名,女5名),B校13名(男7名,女6名)である。なお,A校の学部新卒学生の学級経営観は,石川(2015)が明らかにしている。
結果と考察
図1にA校,図2にB校の学部新卒学生の学級経営観を示し,分析資料から大カテゴリーを≪≫,中カテゴリーを【】,小グループを<>で表した。
(1) 学級経営における担任教師の役割の自覚
AB両校の学部新卒生が重視していたのは次の2点;学級経営における≪担任の姿勢≫と≪担任の責任≫であり,また,≪学級経営の基礎≫も重視されていた。具体的には,A校では【担任の教育理念】として【児童のための学級】の重要性をあげる一方,B校では【信頼関係とルールの確立・学級開き】等,実践的な手立てをあげていた。
A校では,教育学部出身以外の学部新卒学生も多く,学級経営を理念的に捉えている傾向が看取される。一方,B校においては,全員が教育学部出身の学部新卒学生のため,具体的な手立てとして,学級経営を捉えていることが考えられる。
(2) 学部新卒学生の不安やとまどい
A校の学部新卒学生は,≪課題における担任の対応力と限界≫をあげ,さらに9名中6名が<学級崩壊>をあげた。一方,B校の学部新卒学生は,≪よくわからないため学んでいきたい≫と【受けたことがない】または【イメージとして】学級経営を捉えていた。
曽山(2014)は,新任小学校教師が担任クラスでの困難が大きく,かつ周囲のサポートが得られにくいときには,担任としての責任の範囲に深く悩むことを示唆している。学部新卒学生においても何らかの不安やとまどいを抱えており,教員養成段階において学生の実態に合った,きめ細やかな学級経営の指導が必要であろう。