[PC82] センター試験による私立大学出願の現況と年次推移
大学進学意思決定に係わる社会的要因の影響
Keywords:大学入試センター試験, 進学意思決定, 出願行動
問題と目的
高校生の大学進学に関わる意思決定は,どのようになされているのだろうか。大学入試が選抜的意味を持つ状況では,志願者数と入学定員の間で合否ラインが定まる。現在,少子化で高卒者数は減少している。すると,学力要因以外の人口動態によっても,出願動向が左右される(内田他,2014)。
またセンター試験では,私大の参加が増加している。一回のセ試受験で多数の大学に出願できるようになり,事実上,受験機会が拡大している。
このような社会状況や入試制度の変化は高校生の進路選択に,どんな影響を与えているだろうか。本報告では,セ試による私大への出願動向の年次推移の分析を通じて,社会的要因による進学意思決定への影響について検討する。
方 法
平成19年から平成27年までのセンター試験を分析対象とした。ここでは特に私立大学への出願行動に焦点を絞って分析した。一人の受験者が,セ試の成績で,いくつの私大(募集単位別)に出願したかという「私大出願件数」をもとめて,その分布を検討した。なお,国公立大学や短期大学の出願はここでは除外して検討した。
結果と考察
出願件数の平均,上側0.01%点(99.99パーセンタイル),最大数をTable 1に示す。平均では,未出願者を含む全受験者のものも,少なくとも1件以上の私大出願を行った受験者のものも,いずれも平成19年から平成27年にかけて漸増しており,一人当りの私大出願数が増えていることがわかる。
しかし,上側0.01%点は平成23年まで30件台だったものが,平成24年には,いっきに50件と急激に上昇した。最大の出願件数も,平成24年と平成25年が142件,150件と突出していた。
そこで,50件以上の多数出願を行った受験者に限った場合について,その分布をFig. 1に示す。すると,平成24年以降,上側0.01%点や最大件数のみならず,全体的に50件以上の出願する人数が増加していることがわかる。
鈴木(2016)は,セ試による私大出願は,首都圏4都県の出身者が突出して多く,ついで京阪神圏が次点として多いと述べている。これは私大の定員キャパシティの大きさがその誘因だと考えられる。
橋本(2015)は,超多数出願者について,従来は特に地域的な集中傾向は見られなかったが,平成24年以降,宮城,福島,茨城に多数出願者の集中が見られることを示した。これは東日本大震災の被災者に対する受験料免除などの,制度上の臨時措置が影響を与えているものとみられる。
進学意思決定に関わるキャリア研究では,私大定員などの制約,大規模災害による影響なども,十分に考慮に入れて検討していく必要がある。
引用文献
橋本貴充(2015).センター試験を利用した私立大学への出願件数の年次推移と構造的変化 テスト学会第13回大会 発表論文抄録集,126-129.
鈴木規夫(2016).センター試験利用入試の利用状況(2) -出身高校県からみた利用者の特徴-「人口減少期の大学入試センター試験と大学出願状況に関する研究―受験目的の多様化と私大出願の実相―」研究報告書 大学入試センター(編),第2部第3章,63-72.
内田照久・橋本貴充・鈴木規夫(2014).18歳人口減少期のセンター試験の出願状況の年次推移と地域特性 日本テスト学会誌,10(1), 47-68.
高校生の大学進学に関わる意思決定は,どのようになされているのだろうか。大学入試が選抜的意味を持つ状況では,志願者数と入学定員の間で合否ラインが定まる。現在,少子化で高卒者数は減少している。すると,学力要因以外の人口動態によっても,出願動向が左右される(内田他,2014)。
またセンター試験では,私大の参加が増加している。一回のセ試受験で多数の大学に出願できるようになり,事実上,受験機会が拡大している。
このような社会状況や入試制度の変化は高校生の進路選択に,どんな影響を与えているだろうか。本報告では,セ試による私大への出願動向の年次推移の分析を通じて,社会的要因による進学意思決定への影響について検討する。
方 法
平成19年から平成27年までのセンター試験を分析対象とした。ここでは特に私立大学への出願行動に焦点を絞って分析した。一人の受験者が,セ試の成績で,いくつの私大(募集単位別)に出願したかという「私大出願件数」をもとめて,その分布を検討した。なお,国公立大学や短期大学の出願はここでは除外して検討した。
結果と考察
出願件数の平均,上側0.01%点(99.99パーセンタイル),最大数をTable 1に示す。平均では,未出願者を含む全受験者のものも,少なくとも1件以上の私大出願を行った受験者のものも,いずれも平成19年から平成27年にかけて漸増しており,一人当りの私大出願数が増えていることがわかる。
しかし,上側0.01%点は平成23年まで30件台だったものが,平成24年には,いっきに50件と急激に上昇した。最大の出願件数も,平成24年と平成25年が142件,150件と突出していた。
そこで,50件以上の多数出願を行った受験者に限った場合について,その分布をFig. 1に示す。すると,平成24年以降,上側0.01%点や最大件数のみならず,全体的に50件以上の出願する人数が増加していることがわかる。
鈴木(2016)は,セ試による私大出願は,首都圏4都県の出身者が突出して多く,ついで京阪神圏が次点として多いと述べている。これは私大の定員キャパシティの大きさがその誘因だと考えられる。
橋本(2015)は,超多数出願者について,従来は特に地域的な集中傾向は見られなかったが,平成24年以降,宮城,福島,茨城に多数出願者の集中が見られることを示した。これは東日本大震災の被災者に対する受験料免除などの,制度上の臨時措置が影響を与えているものとみられる。
進学意思決定に関わるキャリア研究では,私大定員などの制約,大規模災害による影響なども,十分に考慮に入れて検討していく必要がある。
引用文献
橋本貴充(2015).センター試験を利用した私立大学への出願件数の年次推移と構造的変化 テスト学会第13回大会 発表論文抄録集,126-129.
鈴木規夫(2016).センター試験利用入試の利用状況(2) -出身高校県からみた利用者の特徴-「人口減少期の大学入試センター試験と大学出願状況に関する研究―受験目的の多様化と私大出願の実相―」研究報告書 大学入試センター(編),第2部第3章,63-72.
内田照久・橋本貴充・鈴木規夫(2014).18歳人口減少期のセンター試験の出願状況の年次推移と地域特性 日本テスト学会誌,10(1), 47-68.